秋野央樹とV・ファーレン長崎 4年半の記憶-中編-
【2020年】
12月6日
【39節】V・ファーレン長崎 1-0 モンテディオ山形
自動昇格圏の2位が微妙になるなか、僕らは勢いを得るために秋野の「移籍後初ゴール」が欲しいと想っていた。誰が決めても1点は1点だが、それがチームメイト、サポーターに与える勇気を鑑みれば、秋野の1点は5点くらいに値する。
12月13日
【40節】東京ヴェルディ 0-2 V・ファーレン長崎
味スタ
秋野を想う時、僕にとっては最も感慨深い試合
26分【V長崎】 毎熊晟矢がエリアに侵入してCK獲得 声を出せない僕らは渾身の「いっれっろっ拍手」秋野が蹴った高い軌道が遠いゴール裏からキレイにみえて、ゴールマウス正面で落ちてきたと思うと誰か(角田)が押し込み長崎先制!
40節を終えて22勝10分8敗 勝ち点76で3位。2位(福岡)との差は「2」
秋野がいた4年半で長崎が最もJ1に近づいた日と言える。
この試合後、手倉森監督、秋野は「1300人のサポーターが心強かった」と口を揃えた。その言葉がゴール裏に集った関東アウェイ組には掛け替えのないものとなった。
応援に往くからにはもちろん結果が欲しい。だが求めているのはそれだけではなく、共に闘った実感なのだ。
負けているからといって腕組みしたり、前半で帰ったりしない。100%を出し切った選手たちを罵倒したりしない。
12月16日
【41節】V・ファーレン長崎 1-1 ヴァンフォーレ甲府
トラスタ
J1復帰の夢を絶った相手は甲府だった。
長い笛と同時にピッチに座り込むV長崎の選手達。でもすぐにスタンドから拍手が沸き起こる。
髙田春奈社長が「優しすぎるサポーターが大好き」と言ったのもこのシーズン
怠慢や凡ミスでない限り、長崎のサポーターは怒らない。
「結果にコミットする」のはどこかのサービス業者だが、僕らは「経過にコミットする」サポーターなのだ。
試合後、秋野は涙で声を詰まらせながらこう話した。
「サポーターの期待に応えられずにほんとに申し訳ない気持ちで一杯です。どうしても来年このチームでJ1で戦いたかった。なんとしてもこのチームを勝たせたいという一心でやってきたが力不足を感じている」
秋野央樹は力不足ではない。秋野にかかる負荷(依存度)が100%いや150%を超えていたのだ。
試合を終えたトラスタに雪が降り始め、サポーターの心に落胆の雪が積もる。だが明日になればまた、このクラブと共に歩んでいく気力が冷たい雪を溶かすだろう。この時はそう考えていた。
このシーズン、戦わない秋野の律儀な姿も記憶に残っている。
かつてお世話になった水戸の秋葉忠宏監督、レノファ山口の霜田正浩監督のところへ試合後、挨拶にいく姿があった。
12月20日
【42節】V・ファーレン長崎 3-1 ツエーゲン金沢
トラスタ
秋野ファンにとって忘れられないシーンが生まれる
94分【V長崎】 1点リード 秋野が左サイドでキープに入るが前が空いたので、ゴールに向かう・・と見せて玉田に左足アウトでパスを出す。それに玉田がスライディング。少し角度が変わり?そのままコロコロとゴール右隅に決まってしまった
場内は玉田のゴールとアナウンス 「なんで、オレ?」と驚く玉田
リプレーで観ると玉田の足に当たったような、当たってないような・・・
試合はそこで終了
シーズンのラストプレーで秋野央樹、移籍後初ゴール
なんと劇的なんだ・・
と思ったが、Jリーグ公式記録は玉田圭司のゴールとなっていた。
結局、秋野が長崎でゴールを記録することはなかった。
シーズン終了セレモニー 秋野の選手代表挨拶
「勝てなくなった時、どのような言葉をかけていいのかわからなかった。姿勢で示すしかないと練習から全力でやった。この悔しさを活かすも殺すも自分次第。悔しさを忘れません。ここで流した涙を無駄にはしません。ここにいるメンバーとサッカーをすることはできませんが、この1年を誇りに思います」
髙田春奈社長挨拶
「長崎のファン・サポーターは最高だなと。最後まで励ましてくれた。長崎のサポーターは優しすぎる。平和より大事なものがあるんじゃないかと言われることもあった。これ以上強いサポーターのいるクラブはないと思う」
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