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2023年12月29日 (金)

「失敗」から立ち上がる日本の宇宙事業 しらべるが選ぶ2023年の5大ニュース【4】

2023年、日本の宇宙事業に「失敗」が続いた。

2023年2月17日
種子島宇宙センターで「H3ロケット試験機1号機」が打ち上げに臨んだが、LE-9エンジン(メインエンジン)が立ち上がったあと、SRB-3(固体ロケットブースター)が点火せず、ロケットは発射台から動かなかった。

H3用の新メインエンジンを手がけた三菱重工の方は、LE-9が点火していたことには一定の安堵をしただろうが、SRB-3を手がけるIHIの方には戦慄が走っただろう。

同日の会見で、岡田H3チームプロジェクトマネージャーが「異常信号が検知されて(ソフトウエア的に)SRB3へ点火信号が行かなかったことを説明した。
「安全に止めた」ことはシステムとして賞賛されることであり、宇宙空間に打ち上げるために搭載されていた先進光学衛星「だいち3号」が失われなかったことはポジティブだった。


同会見ではメディア記者からの質問が話題になった。

【Q】失敗か中止か?
【A】カウントダウンシーケンスで停まったものについては「中止」と定義している
【Q】飛ぶはずのものが飛ばないのは「失敗」ではないのか?
【A】こういうケースを「失敗」と言ったことはない。我々が非常識なのかもしれないが・・
設計のなかで健全に停まっている、想定している中の話しなので「失敗」とは言っていない

この質問をした共同通信の記者は、質問を終わる際「それは一般に失敗と言います、ありがとうございました」と言ってマイクを置き、回答した岡田PMは黙っていた。

H3ロケット発射「中止」して「延期」JAXA岡田PMが見せた真摯な対応


■H3ロケットとは
長年の実績がある「H2A」の後継機として、30年ぶりに新規開発された日本の大型ロケット。
・開発製造:JAXA(宇宙航空研究開発機構) 三菱重工
・用途:衛星の打ち上げ、宇宙への機材搬送
・搬送できる重量:「H2A」のおよそ1.3倍
・自動車などの民生部品を転用しており、打ち上げコストは現行ロケットの半分程度
・アメリカのアルテミス計画でも使用される予定


2023年3月7日
「延期」から1ヶ月後、H3ロケット打上げが再試行された。
今回はロケットは打ち上がったが、第二段エンジンが点火せず指令破壊。「だいち」は失われ、ミッションは達成できなかった

会見においてJAXAは「失敗」という表現をつかった。
ある記者から「(民生部品転用で)コストを下げたことが影響しているのでは?」という質問が出て、JAXA山川理事長は「コストを下げることで耐久性は下がる。両立のために2年間試行錯誤した。重要なのはコストだけでなく信頼性。それをないがしろにしたことは一度もない」と応じていた。

岡田PMは次のように述べた。
「結果として失敗で終わるのはいけない。H3ロケットの開発はつづく。乗り越えて最後は成功して、宇宙の軌道、運用の軌道に乗せるところまでが我々のミッションだと思っている」


2023年4月26日
民間月面探査プログラム「HAKUTO-Rミッション1」のランダー(月着陸船)が月面着陸に臨んだが、着陸まであとわずかのところで自由落下(墜落)して失敗した

この時点では、過去に月面着陸に成功したのは旧ソ連、アメリカ、中国の3カ国。
日本の宇宙ベンチャー企業「ispace」が世界初、民間企業としての月面着陸に臨んでいた。

2023年8月23日にはインド宇宙研究機関(ISRO)の月面探査機「Chandrayaan-3」が4番めの月面着陸成功国となった。


2023年9月7日
三菱重工業は「H2Aロケット」47号機の打ち上げに成功、月探査機「SLIM」を軌道に放出した


■2024年の予定
2024年1月11日
「H2Aロケット」48号機打ち上げ

2024年1月20日
小型月着陸実証機(SLIM)月面着陸予定日

2024年3月まで
「H3ロケット」2号機打ち上げ

2024年冬
ispace「HAKUTO-R」ミッション2 月面着陸、月面探査予定


「失敗は成功の母」とトーマス・エジソンは言っている。
心ある人は、失敗から立ち上がる姿に共感する。
それが同じ国の人ならば、なおさらだ。
2024年は日本の宇宙事業が「成功」ラッシュとなることを祈る。

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