鼻毛男と図書館の本-後編-
図書館のユーザー・データベースは、返却後、図書情報を削除している。
僕がこの地区の図書館で、どれだけ多くの本を借りても「貸出番付」は作られないし、僕の嗜好・思想・信条がばれることも無い。
だから、次に本を借りたユーザーが「鼻毛がついていた」とクレームを入れても、遡って誰かにたどり着くことはない。
3ページめには鼻毛がなかった。
しかし安堵もつかの間、数ページいくと鼻毛攻撃が再開した。
さすがに、すべての鼻毛を除去するのは断念した。
さらに鼻毛攻撃がつづく
だんだん、僕は「速読」を始める。
いくらなんでも200ページに渡って、鼻毛を抜き続けられる人間はいないだろう。
いたら、いたで「連続して200本鼻毛を抜き続けた人」としてギネスブックに載るかも知れない。
速読してできるだけ、この鼻毛コーナーを早くやりすごそうと想う
そうして10ページほど速読すると、鼻毛が途絶えた
ところが、それと同時に筋が見えなくなった
鼻毛コーナーの間に、1人称で語る主役が2度交替したのだ
この作家の特徴でもある。
筋が見えなくなると共に、読むのを断念しようかと考え始める。
「この小説はおもしろくないんじゃないか」疑惑だ。
もしかすると、鼻毛が途絶えたのは「鼻毛男」が読むのをやめてしまったのではないか。
そんな風に考えると、余計に読みたくなくなる。
いつまた、鼻毛が復活するのか
それも、僕の気を重くさせていた
この次、鼻毛が登場したら、僕は怒りの感情をもって、読み進めるのをやめる決断をしそうだ。
すると、そこにタイトルにもなっている主人公のキャラクターが登場した。
その描写だけで、それが、彼であることがわかる。
気持ちがのってくる。読み進めるのが楽しくなる。
75ページを読み終えたところで、この本を投げ出さず、読み進める決断をした
それと同時に、安心を手に入れようと考えた。
またいつ、どこに鼻毛が出てくるか?
そう想いながら読むと、読書に集中できない。
今のうちに、最後まで鼻毛スキャンをしておこう。
いつもの「速読」よりもさらに速く、ページをパラパラ漫画でめくっていく。
幸い、鼻毛はない
本の中盤に10ページにわたり水濡れがあった。
本を雨に濡らしたりすると、本全体がよれよれになる。
読んでいる時に水でもこぼしたのだろう。10ページほどは紙が撓んでいるが、それより外側には及んでいない。
本は終盤にさしかかる。そうなると今度は「速読」の能力で、筋を読んでしまうことが危惧される。
少し薄目にして焦点をぼかしながら、鼻毛スキャン。
鼻毛は最後まで見つからなかった。
「鼻毛男」は序盤で鼻毛を抜きながら読み、抜くべき鼻毛が絶えて読み進めたのか。それとも、鼻毛を抜くくらい序盤が退屈で、そこで読書をやめてしまったのか。
もちろん、知る術は無い。
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