2023年9月23日 (土)

元春ライブで初めての「セットリスト記念撮影」

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑫【最終話】

20:56
2度のアンコール合わせて4曲を終え、元春とバンドメンバーがステージ前列に並ぶ
時計を見る。21時までもうあと4分しかない。ここで今日はお開きだなと気持ちを切り替える

20:58
メンバーに続いて元春が名残惜しそうに手を振って左袖に消え、しばらくして客電が灯った。二年前の武道館の時のような「規制退場」は既に過去の遺物となっていた。


退出導線の左側にできていた「セットリスト記念撮影」の列に並ぶ。
初めは曖昧だった隊列が、徐々に細くわかりやすくなり安心感が増す。
14分ほど牛歩で進むと、パーテーションで両側が目隠しされた"秘密の場所"にたどり着いた。そこにマグネットで留めた曲目が並ぶホワイトボードが1枚。
「撮影は1枚だけでお願いします」
とスタッフに言われながらも前の人は2枚撮っていたが、僕は手ぶれしないよう気合いを込めて1発で済ませる。
「SNSへの投稿禁止」の紙が三か所に貼ってあり、ものものしい。
「禅ビート(MANIJU)」の行だけが急ごしらえで異彩を放っている。
小ホールで行われたリハーサルで「今日は禅ビートをやろう」と元春が言い出したのかもしれない。
僕の後ろにもまだ行列は長くのろく続いていて、22時の完全退出に向けて、スタッフの皆さんは気が気ではないだろう。


ロビーですれ違う元春仲間たちを見て、客層が若返ったとか、若い人が増えたと言い切れるほどの変化ではないが、以前とは違う空気を感じている。

元春が戻ってきた
僕はそう感じている

さぁ、帰るか・・
時間を確認すると「VISITORS20周年記念G-SHOCK」のベゼルが欠け落ちていた。
2004年に製造されて21年。G-SHOCKとしては長くも短くもない。
(メタル以外の)G-SHOCKは例外なく、遊環、ベゼルが朽ちていく。
これから先、カシオと元春が新たな共作をしてくれる望みは薄い。
歴史の記念として持ち続けることができないのは残念だ。
それでも僕は使い続けるだろう。ベルトがちぎれたら置き時計として。


Welcome to the Heartland tour」以来、これが何度目のツアーだろう。
福岡、名古屋とローカルに住んでいた僕は当時「自分が住んでいる町に元春が来たら全て行く」と決めていた。
東京に移住してからはそれが「全国ツアーはコンプリする(ツアー中に一度は行く)」と、いつしかコレクターらしきこだわりの域に入ってきた。
今回の「今、何処 TOUR 2023」に参加したことで、それが繋がったのかどうなのか、そもそもそんなこだわり必要なのかも曖昧だ。
もう1人の自分が言う
「自分が愉しけりゃ、それでいいんじゃない」


このツアーに際して「ワンフォーザロード」を読み返していて、こんなことを考えた。
もう一度「THE HEARTLAND」のライブに参戦したい。
できれば、東京国際フォーラムホールA、神奈川県民ホール大ホール、名古屋センチュリーホール、福岡サンパレスのような音楽専用ホールをサーキットして。

「ワンフォーザロード」p305には、THE HEARTLANDの解散を告げた私信「ハートランドからの手紙#73」の文面が記載されていて、そこに引用されたザ・バーズの「We'll meet again」の歌詞が紹介されている。

♪僕らは再会できるだろう/ある晴れた日に♪


21:18
横浜は晴れ 気温28度 湿度74% 

神奈川県民ホールからは横浜中華街が近い。
だが、今日の僕には炒飯と餃子で乾杯できる仲間がいない。
サッカー観戦のように始まった時から1人ならば、寂しさは感じないのだが、コロナ禍前はいつもライブと「後オフ」がセットだった時期を知っているだけに、寂しかった。
たった今終わったライブについて何も語らなくていい。
(実際に後オフでは元春の話は誰もしなかった)
そこに、共に元春と出会い、そして聴き続けている仲間がいることが尊い。

1990年代「元春が50になっても60になっても歌い続けてくれれば、僕らはずっと友達でいられる」という価値観を共有した友達が、また「最強の元春」の元に帰ってきて欲しい。

それから、かつて僕らが20代で元春を見つけて影響を受けたように、今の若い世代に元春を見つけてほしい。そして、若い世代とチケットを争って、ライブに参戦したい。


学生の頃「勉強してからできるだけ早く復習すると脳に定着する」と聴いたことがある(エビングハウスの忘却曲線)
Apple Musicにつくった【今、何処ツアー】プレイリストを聴きながら、この文章を書いてきた。ライブの記憶は減衰していくが、この音楽が好きな気持ちが増幅していくのを感じる。
予習のために作った「佐野元春 今、何処 TOUR 2023」のプレイリストが復習にも役立っている。

人生に復讐は要らないが、幸せな記憶の復習はなかなかいい。

【このお話の目次】Apple Musicでしっかり予習して臨む 佐野元春 今、何処 TOUR 2023
ど素人!佐野元春講座

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2023年9月22日 (金)

タイムリミットを巡る葛藤 元春classicのアンコール

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑪

20:33
【アンコール1】
元春はギターを首に掛けて戻ってきた。今日はずっと笑っている。
デビュー当時から使っている1973年製の赤いストラトキャスター(買い換えていなければ)

「今、何処ツアー2023」のアンコールは、ほぼ固定されてきたが、前の会場(東京国際フォーラム)では初めて「SOME DAY」が織り込まれた。
果たして「デビューの地」横浜で、彼は何をぶちあげて来るだろう?
僕の予想は「悲しきRADIO」(Heartbeat)だが・・・


□彼女はデリケート|NO DAMAGE

会場が大きく弾けた。

拍手>大歓声>弾けて飛び跳ねる
観客の反応は正直で、前奏が始まった時の反応でその曲への共感・支持・感動がわかる。
この曲もその一つだが「元春classic」には得体の知れない力がある。
その力が大きすぎて、2010年代以降、新しい曲が霞みがちだった。
もしかすると、アルバム「今、何処」をあまり聴きこんでいない人の中には、退屈を感じた人がいたのかも知れない。
それでも、新譜をじっくり楽しんだ後で「元春classic」だけのアンコールという「今、何処ツアー」の演目進行は、会場の空気を掴む意味で功を奏していたと想う。


□スウィート16|SWEET16

MANIJUツアー(日本青年館)でこの曲をやった時、双眼鏡で足下をみると元春は遠目からは視認が難しい小刻みで激しいステップを踏んでいた。
履いていたのは"オランダの木靴のように"つま先と踵が丸いソールのロッカーボトムシューズ(コンフォートシューズ)
今日の靴はフラットソール。ステップは控えめにみえた。

「僕、死ぬまで18歳だと思ってますから」
鳥越俊太郎の対談集「僕らの音楽-対談集-1」 エムオンエンターテイメント (2005/8/10)で元春はこう語っている。
「自分の創作を体で表現することで、16歳にもなれるし、68歳にもなれる(中略)だから、年齢というのは自分にとっては正直に言ってあんまり意味のないことですね」

2023年、67歳になった元春は、とてもその年齢に見えない。
2023年が明けた時「紅白歌合戦」について、数人の知人がメールをくれた。

「佐野元春カッコイイですね」
「佐野元春イケメンやねぇ」
「レッツゴーでご飯が三杯いけます」

僕は自分のことのように嬉しかった。こんな風に元春ファンではない誰かが元春について連絡をくれるということは、これまでなかったからだ。

確かに元春はカッコイイ。今日も限られた行動範囲の中で堅実なカッコイイ動きを見せている。
年寄り臭さなんて、これっぽっちもない。
THE COYOTE BAND以降の楽曲中心ということもあり「声が出ていない」問題も感じない。


20:43
1度めのアンコールを終え、メンバー達は左袖に捌ける

20:44
でも、すぐに戻ってくる。会場のタイムリミットまであと16分。

□約束の橋|ナポレオンフィッシュと泳ぐ日

家に居る時を除いて、こんなに静かに身じろぎもせずに聴く「約束の橋」は初めてだ。
この曲は弾けたい。少なくとも僕らはそういう世代だ。
「立見禁止」ではあるが、手を上げるくらいはできる。
それでも僕は、椅子に腰を深く沈めた姿勢を崩せなかった。
恐らく「誰か友達と来た時」との違いだろう。
ネジを一本飛ばすには、少し用心深くなり過ぎていた。

これが、ライブを終えて正体不明の沈んだ気持ちに襲われた原因だったのだろう。ライブから2週間が経った時、ここだけは後悔の気持ちがあった。


□アンジェリーナ|Back to the street

元春は神奈川県民ホールに言及する。
「(デビューした町の好きなホールなのに)このツアーにスケジュールされていなくて、なぜ入っていないの?と言ったんだ」
「残念ながらホールは(老朽化のため2025年3月末で)休館するらしいけど、が再開したらまたここでみんなと集まりたい」

「横浜のみんなと一緒に歌いたい曲がある。だったらもっと早くやれよって?」
自分で言って自分でつっこむ元春は健在^^)

東京国際フォーラムでこのツアー初めて演奏した「SOME DAY」があるのか?は、ここに居る誰もの関心事。
バスドラム三発のカウントが入るか・・と耳を澄ませた時
始まったのは「赤い靴」があった街でのデビュー曲だった。

1980年のデビュー作「Back to the street」のアルバム・ジャケット
元春ポートレートが撮影されたのが神奈川県民ホールの裏手にあった「赤い靴」前。
「赤い靴」は、1996年2月、区画整理の為に移転。現在は「ヨコハマ猫の美術館」という店名で同市中区山手町にて営業を続けている。
*参考文献「Moto's Web Server」赤い靴

そういえば、この曲の大団円はダディ柴田のホーンセクション。今日は藤田顕が重厚なギターをかき鳴らす。知らない人が聴けばこういう曲だと想うはずだ。
次回【最終話】

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ど素人!佐野元春講座

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2023年9月21日 (木)

移りゆく、佐野元春がずしんと心に響く世代

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑩

□水のように|今、何処

♪いつだって誰もが誰かに胸しめつけられて風に泣く(crying in the wind)♪
この一節は「SOME DAY」に収録されている「麗しのドンナアンナ」からの引用。再会を願い誓うこの詩は、ど素人でもわかりやすい。

主語を小さくして言うと、僕が「今、何処」を聴きこみ、その結果とても愉しくいられる理由は、この"わかりやすさ"かも知れない。
「ことば」「サビ」「メッセージ」のわかりやすさ。

いつの頃からか、僕は予約した元春の新譜が届き何度か聴いても、愉しい気持ちになれなかった。
曲がいいとか悪いとか人はときどき口にするけど、そういうことって確かにあると元春を聴き続けてそう想う。
語彙力を疑われそうだから、曲がいいとか悪いとか言いづらいけれど、今思うのは人が「曲がいい」と感じる時、そこに自分にとってのわかりやすさを感じているのだと想う。

元春が戻ってきた
僕はそう感じている


□大人のくせに|今、何処

♪怪しげな偽名を使ったプロパガンダ♪
「プロパガンダ」は今日2度めの登場。確信犯か無垢かを問わず「時代の悪意」に反抗してきた元春。
今僕らが「プロパガンダ」に込められた意味を想像すると、その候補が多すぎる時代になってしまった。


□明日の誓い|今、何処

この日、アルバム「今、何処」から最後の演奏
♪それはただの理想だと人はいう♪

から続く三段論法の詩が乗ったメロディが好きだ。

「Heartbeat」で元春と出会った頃からしばらく、その曲に励ましを感じ、希望を見いだしていた。元春の曲が「自分の曲」として心に響いたからだ。多感な時代、まだ何も手に入れていない時代に聴いた音楽は特別なものだ。
今この歳になって「明日の誓い」が詠う「明日がなければ意味がない」という詩の意味は、聴きこむにつれて「自分の曲」としてその意味が変化していった。


□優しい闇|BLOOD MOON

♪なんだろう人はあまりに傲慢だ♪
サラリーマン人生を生きてきて、このフレーズはずしんと心に響く。思い浮かぶ顔がたくさんある^^)
今も多くの人がそこで苦しんでいると想う。
悩み苦しんだ時は「音楽の力」を借りてほしい。
音楽に慣れ親しんだ20代を過ぎ、仕事や子育てに忙殺されて音楽を離れる時代がある。そして苦しい時期がやってくる。立ち止まってどうしたらいい?と考える。
かつて、元春がTDKカセットのCMで語った言葉がある。
「音楽は力。君は今、それを手にしている。」
それに「私の音楽はここにある」と応えて欲しい。


他会場で演奏されていた「境界線」(BLOOD MOON)が、この日はリストから外れた。

20:30
本篇19曲の演奏を終え、元春とTHE COYOTE BANDは左袖へ捌けていった

神奈川県民ホールは県立の施設ゆえ、会場の使用時間は条例に定められており厳格。
終演のタイムリミットは恐らく21:00だろう。
(神奈川県立県民ホール条例:開館は22時まで)

ここからは「元春G-SHOCK」で残り時間を睨みながら、残りの曲数を占う時間帯となる。

2004年に製造販売された僕の「VISITORS20周年記念G-SHOCK」は去年 液晶が点灯しなくなった。そこで諦めずに銀座のカシオで修理してもらい復活した。
「G」ボタンを押すと EL(Electroluminescence)が発光するG-SHOCKは、会場が暗転するコンサート会場では必携品。
最近スマホで時刻を確認する人がいるが、あれだと光量があり過ぎて周りがドキッとする。

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2023年9月16日 (土)

「君を守りたい」という普遍的だが抵抗のあるフレーズが突き刺さる

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑨

スローな曲を始める時、いつもならば「今日は言ってくれないのかな」と心待ちにする言葉がある。
「次の曲は座って聴いてください」
この日、元春は一度も言わなかった。
「立ち見禁止」席で座り続けている僕は、そういう気配りさえ忘れていたが、一階席には、そう考えていた人が居たかも知れない


□エデンの海|今、何処

♪閃光(White light)♪
本篇19曲の14曲め。ここから5曲は再び「今、何処」からの演奏に戻る
スタジオ音源ではバンドが叫ぶ「White Light!」のバックコーラス、ライブでは僕らが叫ぶ。
残響音1.6秒のこのホールに、元春の歌声、THE COYOTE BANDの演奏、そこにかすかに僕らの歌声が乗っているのが聞こえている。それに僕は意を強くした。

Mr.childrenの未完ツアー(2015年)で、桜井和寿さんが言っていた。
「歌う時は周りの顔色を見てね。今日は桜井和寿、本物の歌を聴きに来たのに(となりの人の歌に)お前の歌を聴きに来たんじゃないって思われますから」
その言葉を聞いて、ライブで歌うのは憚られるようになった。
その後、長いコロナ禍があって迎えた久しぶりの合唱。マスクもしているし、ちょっと声に出して歌う。

♪エデンの海からゴルゴダの空まで♪
転調したサビがカッコイイ、耳に残るフレーズ
でも「僕の曲」として聴こうにも光景が浮かばない。
ちょっと「Google先生」の力を借りてみよう。
まずは、その的確な回答でめきめきと存在感を増している(Google)Bard。
なんと、歌詞を打ち込んだだけで、その意味を解説してくれた。

(引用ここから)
人間の原罪から始まる罪と罰の歴史を、エデンの園からゴルゴダの丘までという、聖書の物語に絡めて表現したものと考えられます。
(引用ここまで)
この後に「エデン」と「ゴルゴダ」の説明がつづく。
知らなかった。聖書からの引用だったのか。ミッション系の学校に通っていたのに恥ずかしい。
それにしても歌詞の解釈を瞬時に返すことに驚いた。恐るべしBard。


□君の宙|今、何処

オープニング以来、2度目のピアノマン元春
初めて聴いた時、Apple Musicで歌詞を見ていて、この曲が一瞬で好きになった。
まるでカラオケ映像のように、曲の進行に合わせて歌詞が流れるApple Musicは「詩人佐野元春」にとっては、とても強力な武器と言えるだろう。
世の中に、何かを歌っているようで、中身がうすっぺらい曲が多いなかで、彼の渾身のリリックがその「初対面」において、僕らの心に突き刺さってくる。なんという強烈な舞台装置だろうか。
まだ、もうちょっと聴いていたい時に終わる「3分12秒」という短さもいいと想う。
1曲の長さを4分程度に納めるのは、元春が「THE COYOTE BAND時代」を迎えて以降の取組の一つだ。

♪それでも君を守りたい♪
恋した人、愛する人に「君を守りたい」と言ったことがある人、ちょっと手を上げてみてください。
あ、誰もいないですね^^)

1981年、ユーミンが堂々と「守ってあげたい」と歌ってしまって以来。
日常では縁が無い言葉だが、ドラマや楽曲では涼しい顔して使われてきた。
それでも、違和感を感じている人がいて、放送中のテレビドラマ「こっち向いてよ向井君」でキーワードとして問題提起されている。

男が言う「君を守りたい」
女が言う「どんなふうに?」
そう問われたら、答えに困る。言う方も言う方だが、それをそっと流して男女関係は成り立っている。

元春は「君の宙」で♪国を守れるほどの力はないよ♪と詠う。
誰かを「守りたい」と上段に構えるのは気が引けたとしても、諍いが絶えない世界に生きる僕らに、この曲は「自分の曲」として突き刺さる。

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2023年9月14日 (木)

ハルナツアキフユ「詩人の恋」は、すべての人のスタンダード

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑧

ここまで他会場で演奏されていた「ポーラスタア」(ZOOEY)が、この日はリストから外れた。

□La Vita e Bella ラ・ヴィータ・エ・ベラ|ZOOEY

この曲はリリース当時、TOYOTA「マークX」のCMソングに使われた。
2013年3月13日(佐野元春57歳の誕生日)リリースのアルバム「ZOOEY」(ゾーイ)はオリジナル15作め、2007年の「COYOTE」以来6年ぶりのアルバムだった。
アルバムタイトルの「ZOOEY」は、今は亡き友人のニックネーム。その由来は、J.D.サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」に並ぶ代表作「フラニーとゾーイー」と思われる。
その後、元春の愛犬「ゾーイ」君がファンの間では知られている。ゾーイ君は「クロエ」でスクリーン投影されたオープンカーのシーンで、元春の助手席でいい子にしていた。

この曲も会場が弾ける。「愛が分母」(ENTERTAINMENT)と共に「COYOTE CLASSIC」となるだろう。そうなるとアルバム「今、何処」からの「COYOTE CLASSIC」候補はどれだろう・・・


□純恋(すみれ)|MANIJU

アルバム「MANIJU」から2曲めのピックアップ

♪恋に落ちればもう誰もが愚かになるよ♪
サビに合わせて歌う声が聞こえている
僕は「誰もが愚かになる」と歌うことを予習段階で把握したが、それまでは「誰もが■△※になるよ」と歌っていた。

「今、何処ツアー2023」を通してアルバム「MANIJU」から唯一演奏されてきたのが「純恋(すみれ)」
これが元春が推す「MANIJU」からの「COYOTE CLASSIC」なのかも知れない。


□詩人の恋|ZOOEY

♪ハルナツアキフユ
スクリーンに流れる歌詞が印象に残る
ちなみにApple Musicではこの曲の歌詞は"流れない"
歌が進んだら、指でフリックして流す必要がある。


ちなみに、今回の予習で確認した「Apple Musicの歌詞対応」は次の通りだった。

▼ZOOEY
La Vita e Bella 流れる
詩人の恋 流れない
▼MANIJU
禅ビート 歌詞が出ない
純恋(すみれ) 流れる
▼ENTERTAINMENT
全曲 流れる
▼今、何処
全曲 流れる


「詩人の恋」は特に多くの聴き手から「自分の曲」として聴かれると想う。
それは「別れ」が誰にも訪れるからだ。
離れて暮らす家族、共に暮らす人との別れを想い哀しくなる。
若い頃の「別れ」のイメージは、切ないけれど、どこか曖昧な自己満足を含んでいるが、人生が進みそれが「死別」と考えた時、脳裏にあるのが愛なのだろう。

「なんでもする」という言葉は、放送中のテレビドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」でキーワードとして使われている。
「なんでもする」は覚悟を伴う。
「なんでもする」をホントにするのが愛なのだろう。

できれば、この曲が元春スタンダードという枠に留まらず、広く日本じゅう、別れへのカウントダウンを生きている人々のスタンダードとして知られて欲しい。

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2023年9月13日 (水)

「THE COYOTE BAND時代」のクラシック「愛が分母」に弾ける世代

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑦

□冬の雑踏|今、何処

ここまで6曲はアルバム「今、何処」曲順どおりの演奏。
「SOME DAY」「SWEET16」で行われた「名盤ライブ」のよう。
もしも、アルバムを聴き込めていないうえ、きちんと予習をして来なかったら、ここまでの時間、僕の心臓のBPMは安静時心拍数くらいまで下がっていたかも知れない。

「今、何処ツアー」で「Google先生」に尋ねると、You Tubeにいくつかのライブ動画が見つかる。それらは「佐野元春 - DaisyMusic」が公開しているもの。
ただし「冬の雑踏」は公開されていない。


□エンタテインメント!|ENTERTAINMENT
ここから3曲はTHE COYOTE BAND5枚めのアルバム「ENTERTAINMENT」コーナー。

佐野元春 with THE COYOTE BAND は、ここまで6枚のアルバムを出している。
「今、何処 TOUR 2023」はアルバム「今、何処」リリース後初めてのツアーでありアルバムタイトルを冠して全国15か所15公演を行う。
セットリストの大半はツアータイトルの「今、何処」から演奏。いわゆる元春Classicはアンコールの数曲に留めている。

【 】数字は元春オリジナルアルバムの通し番号

【14】 2007年 「COYOTE」
【15】 2013年 「ZOOEY」
【16】 2015年 「BLOOD MOON」
【17】 2017年 「MANIJU」
【18】 2022年4月 「ENTERTAINMENT!」
【19】 2022年7月 「今、何処」

2019年10月9日リリースの「或る秋の日」はバンドを率いないソロ作品。
佐野元春公式サイトMoto's Web Serverの記載では、このアルバムはオリジナルとしてカウントされていない。

「或る秋の日」
・過去に配信リリースされた4曲、新たに書き下ろされた4曲の合計8曲
私の人生/君がいなくちゃ/最後の手紙/いつもの空/或る秋の日/新しい君へ/永遠の迷宮/みんなの願いかなう日まで
・4種類発売「CD」「アナログ」「MP3」「ストリーミング」


□新天地|ENTERTAINMENT

♪新天地 めざす天使
他の歌詞が頭に入ってこないくらい、冒頭の韻が強烈だ。
「天使」「月」といった元春クラシックワード満載の歌詞を聴きながら、元春もH3ロケットやispaceの月面着陸は興味深くチェックしていたのかなと考えていた


□愛が分母|ENTERTAINMENT

♪愛が分母♪
会場が弾けている。
僕らが初期の元春クラシックに弾け飛ぶように、この曲で弾けている人たちは僕らよりもいくつか下の世代たちだろう。

誤解を恐れずに言えば、この「次の世代」「若い世代」が補充されないことが佐野元春の課題だった。
ライブに来る度に僕らは同じ会話を繰り返した。
「年齢層高いね」
「人のことは言えないけどね」

いつか「THE COYOTE BAND時代」がレガシーになった時「愛が分母」は代表的なCOYOTE CLASSICに位置づけられるかもしれない。


□禅ビート|MANIJU

ここまで他会場の「今、何処ツアー」では、ここで「ポーラスタア」(ZOOEY)が演奏されていたが、それに代わりこの日はこの曲が差し込まれた。
公演終了後に見たセトリボードでも、この行だけ「急遽、差し替えました」という違和感があった。
このツアーでは「MANIJU」からは「純恋(すみれ)」1曲だけが演奏されていたが、この日は2曲となった。

【このお話の目次】Apple Musicでしっかり予習して臨む 佐野元春 今、何処 TOUR 2023
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2023年9月12日 (火)

デジタルも捨てたもんじゃない 歌詞と向き合う新たな音楽の時代が来ている

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑥

アルバム「今、何処」ジャケットのアートワークを投影していたスクリーンはオープニングと同時に巻き上げられ、オリジナル映像が後方スクリーンに投影されている。
こうしたデジタルな装飾は舞台の大道具と違って手離れがいい。
かつて、相当な制作費がかかったであろうオブジェを「このツアー終わったら捨てるのは勿体ない」と想いながら眺めていた。
そのオブジェはアルバムの世界観を表していて、非日常な異空間に身を置いていることを実感させてくれた。
でも今こうしたデジタルで次々に移り変わる映像を見ていて理屈抜きに愉しい。

□クロエ|今、何処

スクリーンにはオープンカーをドライブする元春。助手席にゾーイ君が大人しく座っている。

♪時はため息の中に止まる♪

この歌詞に僕の思考が立ち止まる。

スクリーンに歌詞を映す趣向は2015年に行ったサザンオールスターズ「おいしい葡萄の旅」で見ることができた。
連れてってくれた友達は「サザンは最近いつもこうだよ」と教えてくれた。
大きな声では言えないけれど、その時僕はこう返した。
「これはいいね、一緒に歌えるし。ただ佐野さんには無理だな。歌詞を間違えるから」

スクリーンに流れる歌詞を見て、ゼッタイに歌詞を間違えないぞ!と気合いのギアが一段上がったんだなと想像していた。


□植民地の夜|今、何処

♪盲目の声に的を絞った邪悪なプロパガンダ♪
音として聴いていると「プロパガンダ」というワードだけが耳にこびりつくが、歌詞を目で見ていると、違った感情がわく。
元春は「現代の詩人」と評されてきたが、実際にそれがどういうことか、あまり考えたことは無かった。
後方スクリーンに歌詞が投影されていて、歌詞が目に見える。
元春が書き留めた現代を、もっと聞きこんで、考えて、現代の詩人としての意味を考えてみたいと想う。

子どもの頃、ビートルズや井上陽水のレコードを聴く時、ジャケットから歌詞カードを取り出して、一緒に歌った。
大人になって(歳をとって)音楽のベテランになると、滅多にしなくなった。
歌詞が歌詞カードではなくジャケットのブックレットに印字されていることもあり、角を折ったり、手で触って汚したくないと想ったからだ。

それが今、デジタル音楽の時代
こうしてパソコンに向かいながら、Apple MusicをかけているiPADには「今、何処」の歌詞が流れている。
もう「瞬きを繰り返している」を「股抜きを繰り返している」と歌ったりはしない。

ギスギスしたデジタルの音に疲れた一部の人たちが、潤いの音を求めてビニルレコードに回帰している。「音楽カセット」コレクターの僕はその気持ちがよくわかる。
だが、デジタルも捨てたもんじゃないと、このツアー経験を通して想うようになった。


□斜陽|今、何処

♪君の魂 決して無駄にしないでくれ♪

Apple Musicで「今、何処ツアー」に向けた予習を始めた時、最初に好きになったのがこの曲だった。
この歌詞を聴いていて、この歌詞を、いやこれだけでなく「今、何処」アルバムの歌詞を朗読したい。そのためには詩集のように、いつでもすぐに開けるカタチのものが欲しいなと考えた。
今も時々「ハートランドからの手紙」* を取り出して、ぱっと開いたページを朗読している。あんなことができるように。

*「ハートランドからの手紙」佐野元春 スイッチ書籍出版部 1990年11月30日

【このお話の目次】Apple Musicでしっかり予習して臨む 佐野元春 今、何処 TOUR 2023
ど素人!佐野元春講座

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2023年9月 9日 (土)

元春が「今、何処」で「魂」を繰り返し謳う。それを自分の音楽として聴く

佐野元春 今、何処ツアー2023 ⑤

元春の立ち位置にはペルシャ風絨毯が敷かれている。
一見「SWEET16」ジャケットのチェリーパイかと想ったが、双眼鏡で確認したところそうではなかった。

19:03
開園時間に客電が消えて、チキンラーメンができる程の時間をおいてメンバーがステージに姿を現す
最後に元春がゆっくりと姿を表す
かつて「今日は最初からホットにいこう」とスキップ走法で駆けだしてきた元春ではなく、2023年の元春が軽く僕らに手を振る

僕らから見て「元春絨毯」の左手に設えた電子ピアノの前に座り、いきなりピアノマン元春
1曲めから元春がピアノの前に座ったのは初めてではないか?
いや、1996年「フルーツツアー」のオープニングが「サンチャイルドは僕の友達」だった時にピアノだったか・・・記憶が無い

【凡例】
□曲目|収録アルバム

□さよならメランコリア|今、何処
神奈川県民ホール3階の赤い手すりは、最前列の席で深く腰掛けてもぎりぎり元春とは被らない。けれど、あと10cmくらい低くしてくれてもいい。
手すりから手を出したり身を乗り出すと周囲の方が見づらくなる。そして場内係員を不安にさせるから控えているので、一階席アリーナが今どんな状況なのかはわからない。拍手と歓声から察するに既に総立ちなのだろう。
三階最前列でも一部の観客が立ち上がったが、しばらくして係員が来て座るように言われた。立ちたい気持ちはわかるが、この列には「立ち見禁止」ルールがある。迅速にルールを説明に来た係員のお陰でさざ波が納まる。

♪ぶちあげろ魂 君の魂♪

元春はこれまで「魂」という言葉をよく使ってきた。
「確かに、子どものほうが自由な魂をもってるよね」
*妻夫木聡との対談(「大人エレベーター」より)

かつて「天使」という言葉を多用したように、このアルバム「今、何処」では「魂」の使用頻度が高い。
もしかすると、このアルバムについてのメディア・インタビューを探せば「魂」リリックの頻出について何か語っているのかも知れない・・・
一瞬だけそう想ったが、やはり、元春はそうしたことを語らないと想う(僕の予想が正しければ)
だから記事を探さなかった。

彼が「魂」に託す意味を言い当てる必要はない。
僕らが受け取った楽曲は、僕らが「僕の曲」として聴き、僕の解釈をする。

受け手たちは、広辞苑に載っている「魂」ということばの意味を答えられる人ばかりではないし、答えを言えたとして、それぞれの人が「魂」に託す意味は違う。

僕には僕の「魂」の定義がある。それは信頼している親友から教えられたもの。試しに、その定義を元春の歌詞に乗せてみたが(僕の魂は)元春が謳うようにぶちあがらないし、暮れなずまない。
そこは、元春が今作で「魂」に託す意味と僕の定義の違いであって、どちらかが正しいとか間違いということではない。

元春が謳う「魂」が使われた歌詞については、広辞苑第七版において「魂」の②に書かれている「精神。気力。思慮分別。」を当てはめるとわかりやすかった。


□銀の月|今、何処
♪人を貶めるうちに暮れなずんでゆく魂♪

人が生きていく日々・時々の葛藤は、僕が過ごしてきたサラリーマン人生に、いくつもあった。

"私たちは仲間の人達とつながる 。他の人達を自分の敵とみなす人は 、勇気に欠けていて 、集団の中で望む結果を得るには困難な時があるだろう"
「アドラー心理学」でお馴染みのアルフレッド・アドラーはそう強調している。
佐野元春「銀の月」は、人間関係に悩む人すべてへの強力な応援歌だと想う

後方スクリーンには、宇宙船で宇宙飛行士がギターを弾く映像
僕は少しだけ笑った

【このお話の目次】Apple Musicでしっかり予習して臨む 佐野元春 今、何処 TOUR 2023
ど素人!佐野元春講座

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2023年9月 8日 (金)

元春の横浜ホームに乗り込む幸せ

佐野元春 今、何処ツアー2023 ④

2023年9月5日
チケットを買ってから6日め、ライブ当日の朝目覚めると、昨夜の「愉しみだな」という穏やかな気持ちが、うっすらとした緊張感に変わっていた。

2021年に「ヤァ!40年目の武道館」に参戦した時は、長年支持している先輩ロッカーのライブに行くような気分だったのが、今日は憧れのロックスターと同じ空気を共有できるという高揚感へ。それは、かつて元春に抱いていた感情だ。

13:27
出かける準備をしていると、いつになく部屋が激しく揺れた。
Weather Newsの地震速報には、神奈川県藤沢市に[3]が表示されている。
13:33
さっきよりは短い横揺れ。続くとなると、ちょっと穏やかじゃいられない。
2011年「ALL FLOWERS IN TIME」の延期を想いだしたファンもいたことだろう。
ちょっと心配になり、神奈川県民ホールのウェブサイトを確認。
6月8日に掲載された「施設老朽化に伴う休館について」が最新のままで、新たな情報はない。


「日本大通り」の駅に降り立ち「4」出口へ向かう。
てっきり日本大学の最寄り駅かと想っていたが、読みは「にほんおおどおり」だった。

神奈川県民ホールは、海のそばにあって山下公園に近い。
僕は1度「横浜マラソン」のボランティアで来たことがあるだけの「山下公園」
その言葉がもつネームバリューほどには、感情が言葉にのらない。

□神奈川県民ホールの歴史
1975年
開館
2023年6月7日
神奈川県が(老朽化に拠る)休館を発表
2025年4月1日
休館(期間未定)

神奈川県民ホールは神奈川県営の複合文化施設の本館にある音楽ホール。大ホールの収容人数は 2,493人。福岡サンパレス、名古屋センチュリーホールよりちょっと多い。
人は誰でも郷土に愛着があるが「横浜」はその想いが特に表に出る希有な街だと想う。
横浜っ子たちがどれだけ地元が好きかを感じていて、横浜という街にちょっとしたAWAY感を感じている僕は、神奈川県民ホールに参戦するのはまだこれが2度目。
それでも、元春がデビューを飾り「赤い靴」があった街でのライブ参加は特別なものだ。
横浜DeNAベイスターズや横浜Fマリノスとの試合にAWAYで乗り込むのとは違う。元春の「横浜ホーム」に乗り込むAWAYの場合 "幸せのお裾分けを受けにいく" という表現があてはまる。


平日の17時過ぎということもあり、人影はまばら。ホール入り口の左側ドアを開けてグッズ先行販売が行われており、買い物を先に済ませる。

「今、何処 TOUR 2023」オリジナルグッズ
■パンフレット
■マグカップ
■Tシャツ(Tシャツ付チケットのモノとは別デザイン)
■マフラータオル
■トートバッグ
■アクリルブロックオブジェ
■キーホルダー

予めMWSでラインアップを確認して、目を付けていたキーホルダーを無事確保。これから毎日使う鍵につけたいと想う。


3階席は階段の段差が不均一で、初めて降りる時はちょっと怖い。
(あとで注意喚起の札に気づいた)
3階の最前列である4列は想った以上にステージに近かった。
恐らく1階席の22列の真上に当たるのだと想う。前から22列めの上空から見るといったところだ。

大ホールの仕様
・劇場型多目的ホール
・1~3階席に分かれる
・「30」「31」番座席が中央

「1列めは立ち見禁止」の注意喚起が一定間隔で貼られている。この着席ブロックルールは日本青年館と同じだ。
ルールで禁止されれば、誰かが立ち上がって、立たない人が見づらくなるということがない。


洋楽の場内BGMに、僕の開演前セトリに入っている曲はなかった。
終わり掛けに「東京スカイライン」がかかる。

開演に先立っての注意喚起放送に耳を傾ける。「声出し」についての言及を確認するためだ。

新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行に伴い、2023年5月8日に「神奈川県民ホールにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」は廃止されている。
(引用ここから)
ご来場者、ご利用者の館内でのマスク着用は個人の判断となります。混雑時や継続的な発声を伴う公演等、必要に応じて着用をご検討ください。
(引用ここまで)

公演主催者のウェブページには「ライブ中の声出しはできるだけ控える」ことが要請されていた。
そして、会場では「声出し」についての言及はなし。
これらを総合して「歌う時はマスクをするのだ」と判断して、開演時間の19時にマスクを取り出して着用した。

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2023年9月 6日 (水)

佐野元春ライブ開演前の曲を集めたプレイリスト

佐野元春 今、何処ツアー2023 ③

ローソンで発券したチケットの座席を神奈川県民ホールのサイトでしらべると驚きの発見があった。
「3階 4列 *番」
4列が3階席の最前列だった。

できれば、コンサートはゆっくり座って見たい。
元々踊ったりしない(できない)ので、立つ必要がないからだ。
歳をとったからというのもあるが、この考えは初ライブの頃から変わらない。

1980年10月「Welcome to the Heartland tour」都久志会館公演
オープニングから誰も立ち上がることはなかった。
最前列の男性が立ち上がり激しく踊り始めると、係員が来て座るように言われた。
ライブの終盤になって自然発生的に誰もが立ち上がり元春に声援を送った。
前の人が立っていなくても(視界は確保できていても)それでも立ちたくなる。そんな感情は尊い。そんなライブにこれから幾度立ち会えるだろう。

日頃「日本人は座りすぎ」と言われているせいか、誰もがここぞとばかりにライブでは立ち上がる。
2列め以降の座席では、前の人が立つから仕方なく立つことになる。
立たずに済むのは最前列。だが、1階最前列をとるのは至難の業。ファンクラブに入っていても回ってこない。
そういう時に好適なのが「2階最前列」
ここならば、前に人が立たないから座ってみられる。ステージからは遠くなるが、高さがある分ホールを俯瞰できて見やすいし、ステージと観客の一体感を感じる。
座席が選べる場合は、まず「2階最前列」が空いていないかをチェックしている。

神奈川県民ホール大ホールの3階席は両端を除き、4列が最前列だった。
ちょっと端っこに近いので、内側の人が立ってしまった場合、視界を遮られる可能性はあるが、それでも"前に人が立たない"というのは大きな行幸だ。


「このまま聴き続けていると、飽きるんじゃないか」
Apple Musicに作った【今何処ツアー】プレイリストでセトリ予習を開始して5日めの朝、そんな感覚があった。
人は必ず飽きる。だが、嫌いにならなければ、いつか戻ってくる。
1980年に「Back to the street」を聞き込んでいた人が、43年ずっと聴き続けているということはない。
時が経つと(飽きて)聞かなくなる。だが、ふとした時に聞きたくなり舞い戻ってくる。
日本では「飽きる」という言葉はネガティブな印象を持っていて、子どもの教材を売りに来た販売員には「すぐ飽きるから」と便利に使うのだが、誰もが自分が何かに「飽きた」ことは認めたがらない。

僕は自分がライブ当日に満腹感を感じないよう^^)
Apple Musicにもう1つのプレイリストを作った。
「佐野元春」とベタに名付けた、そのプレイリストには次のような曲が並ぶ。

・コンサート会場で開演前に流れている曲
・演奏で曲間に挿入された曲
・HEARTLAND縁りの曲


【佐野元春】プレイリスト

You're Only Lonely J.D.サウザー
Midnight At the Oasis マリア・マルダー
Moondance ヴァン・モリソン
Brown Eyed Girl ヴァン・モリソン
Jackie Wilson Said ヴァン・モリソン
Goin' Back ザ・バーズ
It's Too Late キャロル・キング
Purple Haze ザ・ジミ・ヘンドリックス
We'll Meet Again ザ・バーズ
Theme From the Last Waltz ザ・バンド
ロック・アラウンド・ザ・クロック ビル・ヘイリー&ザ・コメッツ
アイム・ルージング・ユー ロッド・スチュワート
愛こそはすべて ビートルズ
グリーン・オニオン Booker T. & The M.G.'s

これら全ては、THE HEARTLAND最後のツアーとなった「The Circleツアー」をロードゴーイングで書き留めた「ワン・フォー・ザ・ロード 佐野元春 with THE HEARTLAND」山本智志著 に掲載されていたものだ。
同書は1993年10月の「教会の脇、パーキングエリアで待つ。MOTO」から1994年9月の「LAND HO!」までツアーに帯同して記録している。
僕にとって、佐野元春関連書籍15冊(後述)の中で一番の愛読書だ。


【佐野元春】【今何処ツアー】
2つのプレイリストを交互に聴いて、ライブ当日までには「元春脳」が着実に育っていく。
前日にはもう、血液が逆流して踊り出しそうだった(踊らないけど)

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