2020年1月26日 (日)

アドレスを知らず、年賀状のやりとりもないつながり

年が明けてからずっと、一本の電話を待っている。
いつもならば、外線電話を取ったりしないが、先週は率先して取っては、それは隣の人ということが続いた。
待っている相手は岩尾君。年に1度、この時期にやってくる営業担当だ。
なぜ電話かというと、よくわからない。
営業のアポイントは、メールよりも電話という考え方なのだろう。

岩尾君との付き合いは、もう10年以上。
仕事の話しもするけれど、お互いが楽しみにしているのは、この1年の近況報告だ。
共通のテーマはスポーツ。
ただ、特定のスポーツチームを応援していると言った話しはしない。聞いていて面白くないからだ。
もしも、野球チームに入っている岩尾君が「去年のカープは不甲斐なかったです」といった話しをしたら、僕は興ざめする。だから僕もしない。ちょっとするけど^^;)


去年は岩尾君が「motoさん今年はつくば(マラソン)ですよね」とメモを見ながら話しているのに感心した。
雑談の内容を書き留めておく営業は世界中にいるかも知れないが、自分がその営業を受けるのは初めてだったからだ。

だから今回は去年、岩尾君が話したことを復習する。と言っても僕は営業ではないので、営業システム手帳は持っていない。このブログで去年書いた記事を読み返した。

「ソフトボール大会で利き手の指を骨折した」
「リハビリをして、随分曲がるようになった」
去年そう言って、あまり曲がらない指を見せてくれたので、まずは、指の回復状況を気遣うところからだ。
すると、岩尾君は「覚えていてくださったんですか?」と言う。きっと僕は、いや去年の記録を読んで復習してきたんだとネタをばらすだろう。


半年前、パソコンに向かっていると「ちょっと名刺二枚持って、来てくれませんか」と呼ばれた。岩尾君以外に僕にお客さんが来ることはないので、ちょっとドキドキしながら向かうと、そこには岩尾君と同じ会社の社員が2人来ていた。
聞くと、彼らは岩尾君の部下にあたり、岩尾君は部長なのだという。
そういえば、初めて会ってから10年以上、名刺をもらっていない(普通はもらわない)
知らない間に(普通は知らない)岩尾君は偉くなっていたのだった。

「よっ、大部長!」
と冷やかすのも入れなければならない。

暖冬が続いて卵の値段が上がり、中国で新たな伝染病が流行り始めていた頃、外線が鳴った。
電話をとった町田君は「岩尾さんという方ですが・・」と怪訝そうに言う。
ワンルームマンションの売り込みだったら、居ないというつもりのようだ。
あぁ、いいよと言って保留を解除する。

今年は遅かったね
「いやぁ一年が経つのがあっという間ですね。ついこの間会ったような気がするんですけど」
僕は言う。でも三ヶ月に1度くらい会う人で、あまりそう思わない人も居るんだよね。どこがどう違うんだろうね?
「さぁ・・」
新たな課題を僕は見つけ、彼はまた営業システム手帳を持って、やってくる。
互いに個人のアドレスは知らない。年賀状のやりとりもない。そんなつながりが、今はとても大切に思える。いつか名刺がなくなっても、彼は僕と会って話してくれるだろうか。ふと、そんなことを考えた。

 

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2019年12月31日 (火)

大晦日に2019年を想う。2019 は中途半端な1年

大晦日です
皆さんにとって、2019年はどんな年だったでしょうか。

今年はずっと、パソコンに向かって年月日(yyyy/mm/dd)を打ち込む時に違和感を覚えていました。
2 0 1 9
あぁ、2020の前の年なんだな
そこに1足りないんだ
中途半端な年だな
2019年を打つ度、いつも、このように考えていたのです。

2020年が迫ってきて 2 0 2 0 と打ち込む機会が増えて来ました。
いよいよだな
誇らしいな
ワクワク感いっぱいだな
2020年を打つ度、そんな気持ちになります。
デコ(元FCバルセロナ)を応援していた頃から「20」という数字に愛着があり、それが2020と2回並ぶというのもありますが、やはり、ワクワクの中心は東京五輪2020です。

受け身でいても、楽しみが向こうからやってくる。そして、それなりに楽しめる。
そう考えていたのですが、先日、あるスポーツ選手の試合後コメントを読んで自戒しました。
「試合に漠然と入ってしまった。具体的なイメージをもって臨めばよかった。そうすれば、結果は違っていたかも知れない」
今の自分に当てはまる言葉でした。その日から、具体的なイメージを描き、足りない能力を獲得するための努力を始めています。その取り組みの経過と結果については、いつか、お話したいと思います。

 

年の瀬が近づくと交わされる大好きな挨拶があります。
「よいお年を!」
同じエレベーターに乗り合わせたり、廊下ですれ違った時に、互いをリスペクトする者どうしがこう声をかけるわけです。
「来年は死んで欲しい」と思っている人に対して、あまり言いません。もちろん、サラリーマンならば、その必要に迫られることもあるわけですが。

今年は年末最後のメールで町田君が、こう結んでいました。
「来年もよいお年をお過ごしください」

僕は思わず、町田君のところまで行って、あれは違うよ。正しくは「お迎えください」だよ。と言いたくなりました。
言わなくていいことを、言わずにいられないのが、僕の悪いクセ。
でも、少し立ち止まりました。もしかして、そういう言い方もありなのではないか?僕が知らないだけでは?
そう思えるようになったのは、2019年、僕の進歩かも知れません。
案の定「Google先生」によると「お過ごしください」でも誤用ではないことがわかりました。「お迎えください」だと元旦までのわずかな期間だけど「お過ごしください」ならば366日あるわけだから、その方が思いやりが深いと考えることもできます。いずれにせよ、年の瀬に町田君に不愉快な思いをさせずに済みました。

 

今年も「しらべる」「しらべるが行く!」を読んでいただきありがとうございました。
2020年も時々読みにきてください。お待ちしています。
よい年をお迎えください! ^^)

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2019年12月30日 (月)

しらべるが選ぶ2019年の5大ニュース(後半)

【3】東日本で台風大雨被害
9月、台風15号により千葉県で大規模停電が発生。
10月12日、台風19号により、土砂崩れなどで死者は90人を超えた。
台風21号に伴う記録的な大雨では、各地で河川氾濫が発生した。

被災した地域、組織がある一方、被害を免れた地域の戦略的な備えが注目された。それにより、地域格差が浮き彫りになった。その結果として、今後の人口動勢に変化が起こると推察する。

 

【4】V・ファーレン長崎 天皇杯ベスト4
J2クラブV・ファーレン長崎(以下V長崎)がクラブ史上初めて準決勝に進出。
12月21日に行われた鹿島との試合は、髙田明社長が「(在任)3年のなかでベストゲーム」という内容だった。
2017年4月に倒産寸前だったV長崎の経営を引き受け、その秋にはJ1昇格を達成。
しかし1年で再びJ2降格。2019年シーズンのリーグ戦(J2)は12位と振るわなかった。一方、カップ戦ではYBCルヴァンカップでチーム初のプレーオフステージ進出(1回戦で敗退)
天皇は準決勝進出。「元旦、オリスタ、決勝」まであと一歩届かなかった。
V長崎の親会社であるジャパネットHDは、JR長崎駅のそばにサッカー専用スタジアム「長崎スタジアムシティ(仮称)」の2023年開場を目指している。大村市には大規模な育成施設も整備する見通し。
「地方の疲弊」が言われて久しい今、高田旭人(ジャパネットHD)社長は、スポーツで地域を元気にすること、スポーツを通して長崎から世界へ平和を発信する取組を進める。
みごとにクラブの経営を立て直した髙田明社長は、その夢を高田春奈新社長に引き継ぐ。


■時系列の記録
11月28日
髙田明社長の退任と髙田春奈社長就任を発表
12月21日
天皇杯準決勝(カシマ開催)鹿島3-2V長崎
2020年元旦
髙田明社長退任
1月2日
髙田春奈社長就任

 

【5】東京五輪マラソン札幌移転

9月15日
東京の五輪コースで日本国内選考レースMGC男女同日開催
9月27日
世界陸上(ドーハ開催)大会初日開催の女子マラソン(スタート時気温が32.7度、湿度73.3%)で出走した68人中 28人がDNF
10月3日
IOCバッハ会長自身が「(東京大会の)暑さ対策には自信を深めた」とコメント
10月17日
IOCバッハ会長が「マラソンと競歩を札幌に移すことを決めた」と発表
11月1日
開催地の札幌変更を決定
12月28日
札幌市のマラソンコース確定

五輪が始まって以来、メイン会場のある地域以外でマラソンが行われたことはない。史上初の取組。その評価は歴史が下すだろう。現時点で言えることは、豊洲移転騒ぎで顰蹙を買った小池百合子都知事が、この一件でイメージを挽回したということだ。

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2019年12月29日 (日)

しらべるが選ぶ2019年の5大ニュース(前半)

【1】令和改元
平成の天皇陛下が4月30日に退位され、皇太子徳仁なるひと親王殿下が5月1日午前0時、第126代天皇に即位された。
皇位継承に伴い、元号が「令和」に改まった。


■時系列の記録
2017年6月
通常国会で「退位特例法」成立
12月1日
退位の時期を決める皇室会議 退位、即位の日程決定
12月8日
政府の閣議決定により、今上(きんじょう)天皇の退位スケジュールが確定

2018年3月
新元号発表時期を2月24日以降とすることを内定

2019年1月1日
安倍総理大臣が新元号発表を4月1日とすることを発表
1月7日
昭和天皇の死去から30年の式年祭を今上天皇の元で執り行う
2月24日
今上天皇「在位30年記念式典」国立劇場で開催
4月1日
新元号「令和」発表
出典は「万葉集」巻五「梅花の歌三十二首 序文」
時、初春の令月にして、氣淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す
4月30日
平成天皇退位
5月1日
皇太子が新天皇即位
新元号に切替「天皇の即位の日」として限りの祝日となった
10月22日
「即位礼正殿の儀の行われる日」として限りの祝日となった
2020年12月23日
天皇誕生日ではなくなった(2019年には天皇誕生日がない)
2021年2月23日
新しい天皇誕生日

 

【2】五輪スポーツボランティア フィールドキャスト8万人が始動
2020ボランティアのうち、競技を支えるsvである「フィールドキャスト」8万人が指導した。

■時系列の記録
2018年9月
ボランティア募集開始
12月
募集〆およそ20万人が応募

2019年2月
大会ボランティアの愛称が「フィールドキャスト」に決まった
2月~7月
東京を中心に各地で、応募者へのオリエンテーション開催
9月~
およそ8万人に対して共通研修開始。
座学のあとeラーニングで基礎知識の研修が行われている。

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2019年12月 4日 (水)

くじらフライはまだなのか? 2018年の「5大ニュース」を振り返る

12月に入ると、そろそろ「しらべるが選ぶ今年の5大ニュース」を考え始める。

2018年は以下の5つを選んだ。
1.日本IWC脱退
2.ヴェイパーフライ4% 快走つづく
3.V・ファーレン長崎ゼイワンで30点
4.史上初米朝首脳会談
5.AIの停滞


「IWC脱退」により、2019年7月から日本は限定的な商業捕鯨を再開した。
去年の記事では「スーパーの惣菜コーナーに廉価のくじらフライが復活する日が待ち遠しい」と書いたが、1年経ってみて、その希望は叶っていない。
廉価どころか高価なくじらフライもない。
鮮魚売り場では生鯨が散見されるが、僕が欲しいのは買ってすぐご飯のおかずにできる惣菜のくじらフライだ。


「ヴェイパーフライ4%の快走」は続いている。
2019年7月には第三世代「ズームX ヴェイパーフライ NEXT%」が発売された。
9月のMGC、秋冬の駅伝いずれもトップチーム大半の選手が1stカラーの黄緑か2ndカラーのピンクを履いている。
1月にはアシックスが「厚底」の対抗版と言えるメタライドを発売したが、トップランナー向けではないため、エリートレースでは見かけない。
10月12日、エリウド・キプチョゲはこの靴(カスタム仕様と思われる)を履いて非公式に42.195kmで2時間を切った。


「ゼイワンで30点」だったV・ファーレン長崎は、2019年シーズンをゼイツーで戦い、12位という平凡な順位に終わった。
だが、シーズンが終わるとすぐ高田明社長の退任、長女高田春菜社長の就任、そして近々には「わくわくする選手」の獲得がリリースされる。
2019年最多の公式戦を消化したV長崎は、リーグ戦が終わった今も天皇杯ベスト4に残っており「元旦、オリスタ、決勝」を目指している。
ヴィヴィくんは5月に初めて関東で「おたんじょうび会」を開催し、長崎県人に留まらない人気を見せつけた。2020年11月に開催される「長崎平和マラソン」のイベントにも駆り出されるなど、今や長崎県を代表するマスコットとして、がんばくん・らんばちゃんの存在を脅かしている^^;)

夢のある話題に事欠かない。
今試しに書き出してみたら、2019年5大ニュースはほとんどが「V・ファーレン長崎」関連になってしまった。どれを削るか悩みどころだ。


去年5位に挙げた「AIの停滞」は会話型ロボットの停滞のことで、AIそのものは量子コンピューターという新たな計算機を得て、急激というより過激な進歩を遂げようとしている。
インターネットによる情報化社会が定着して20年。
「仕事は増えるけど、人は増えない」気ぜわしい現代だが、いずれAIによって、逆に静寂を取り戻すのでは?という予感がしている。

 

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2019年8月10日 (土)

謝罪の国に暮らして

通勤ラッシュの時間帯、たまたま座ることができた僕はスマホで小説を読んでいた。
駅が近づいて電車が軽く制動をかけた時のことだ。
前に立っていた若い女性の日傘の先端が思い切り、スマホの画面に振り下ろされた。

スマホの画面から鈍い音がした。
幸い、画面は割れずに済み、僕は顔を上げそうになったが、相手の顔を見る前に思いとどまった。

しかし、上のほうから「すみません」といった言葉は僕の耳には届かなかった。


ごめんなさい
すみません
を言わない
この時代は
いったい
なんなのだろう


都心の鉄道に限ったことなのか
東京だけに限ったことなのか
あるいは日本だけに限ったことなのか

いや、かつて日本は外国に比べると、率直にお詫びを述べる国だったと記憶している。
それは、この出来事に関連がある。


2001年2月10日(現地時間9日)
ハワイダイヤモンドヘッド沖18kmの地点(米国潜水艦 訓練海域外)で愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」に米国原潜「グリーンビル」が衝突、えひめ丸が沈没した。

この事故でえひめ丸に乗っていた乗組員、実習生合わせて9人が行方不明となった。
原潜グリーンビルは事故の際、民間人2人が操舵席に座りソナー室にも民間人が入っていた。

休暇でゴルフ中だった森喜朗首相が、第一報を受けた後もプレーを続けたことが非難の的となり「30分ルール」という言葉が話題に上った。
約束事のリードタイムを言う時に「*分ルール」という言葉が定着したのもこの事件からである。


それよりも話題になったのは、ワドル艦長が事故後しばらくの間、公の場で謝罪しなかったことだ。
当時「米国は訴訟社会だ。裁判で不利になるため、彼らは非を認めない。むやみに謝罪しないという文化なのである」ということが、メディアのご意見番によって語られたが、そこは文化の違う日本人の反感を買った。

事件からおよそ一ヶ月後の3月8日 ワドル前艦長が査問会議を傍聴していた被害者の家族3人に会場で直接謝罪した。
これは、嫌米に傾いていた日本の世論に配慮したものと思われた。

米国原潜が日本船を沈めたのはこれが2例めで、1981年5月には「ジョージワシントン」が日昇丸に当て逃げして2人が死亡している。

事件から9ヵ月の11月25日、ホノルル沖20キロ 2,000mの深海にえひめ丸は沈められた。最後のお一人の遺体は発見できなかったが、ご両親は了承したうえでこの現場に立ち会った。


謝罪しないということは日本人ではないのだろうか。
電車を待つホームで並ばない。車内では大声で盛り上がる。日頃、国民性の違いを見せつけられていると、そんな考えもよぎる。

日常に起こりうる迷惑行為や過失に対して、抗議の声は無力だ。
なんの人間関係も利害関係も社会的な関係もない人の心根を変えることはできない。
たまたま、電車で居合わせただけの人に、僕らはなんの言葉も持たない。
ただただ、自らを律するしかないのである。

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2019年7月29日 (月)

ホリデードライバーに気をつけよう

久しぶりに町田君と会った。
彼とはこうして時々、会っては他愛も無い話しをする。
特になにか同じ趣味があるというわけでもないし、出身地は岩手と長崎と、日本の両端だ。


最近なんか面白い話ある?
いつも、こうして彼に口火を切らせる。
その方がコミュニケーションがうまくいく。

「お盆が近づいてきましたね」

そんな風流な人だったかな・・
お盆??それは何か理由があるの?

「もう随分、長くお盆には帰っていないなと思いまして」

そうか、帰っていないのか。いや、確か彼は去年だったかお父さんが亡くなったと言っていたぞ。

「えぇ去年、父が死んで・・」

だったら、今年は初盆じゃないの?

「そうなんですけど、お盆は里帰りした人たちが運転してるから、もらい事故とか嫌だなと思って。そういうの、なんとかっていうんですよね。なんだったかな」

そう言って彼はスマホでしらべる

「ホリデードライバーでした。長期休暇の時だけ運転する人という意味ですね」

確かにホリデードライバーは運転が下手と言われている。
これは僕もそうなのだが、帰省した故郷で親戚の車を運転する。ただ僕の場合、日頃から運転しているので、その定義には当たらない。

運転から遠ざかっており、勘が鈍っているということもあるが、元々、運転経験が浅い(運転通算距離が短い)ので、咄嗟の時の判断力が低い。
そういう人が慣れていない道、慣れていないクルマを運転するのだから、確かに危ない。


初心者や高齢者ならば「初心者マーク」や「もみじマーク」といった標章があるが「ホリデードライバーマーク」というのはないので、他の車両はそのクルマがホリデードライバーだと気づくことができない。

町田君がいう通り、盆正月の地方都市、観光地を走る時、周囲を走るクルマにそういうクルマが混じっているという想定が必要だ。それは舗道を歩く時にも言える。

ここで、僕は気づいた。
そもそも、町田君自身がホリデードライバーじゃないのか。
「もらい事故」を恐れる側というよりは、周りに恐れられる側だろう。
ということは、いきなり場の雰囲気を壊しそうなので、言わなかった。

始めの話しがいま1つ盛り上がらなかったので、他になにかない?と水を向けると、彼は「そうそう」と目を輝かせた。

「最近、MacBookAirを買ったんです。10年くらい前からずっと憧れていて。MacってUNIXなんでLinuxが使えるんです。自分はwebの人なので、そっちの環境があるといいなと思っていて。それが来週来るんです。SSD、メモリーを増設して20万・・」

10年も憧れていたマシンを手に入れた町田君。
今頃、幸せな一時を過ごしていることだろう。
その1台のマシンから、大きな夢と希望が広がることを祈る。

 

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2019年7月27日 (土)

マリちゃんの自転車 防犯カメラに映っていた意外な映像

「自転車の破損ですが、防犯カメラにしっかり映っていました。
昨日の16:00頃です。自転車が壊れているのを発見された少し前ですね。
あなたの右となりに駐輪しているかた。おじいちゃんなのですが、その方が転倒されたんです。
それであなたの自転車に向けて転倒しまして、それで自転車が・・
おじいちゃんはそのあと、1分ほど立ち上がれませんでした。買い物の荷物も散乱していて・・」

マリちゃんのイメージに、転倒して自転車に乗り上げたおじいさんと転がるリンゴの映像が浮かんだ。リンゴとは誰も言っていないんだけど。。

「大家さんが入っている保険が適用できるかも知れないので、今それがおりるかどうかを確認中です。
ただ、保険がおりるとなった場合も、ご本人が自分がやりましたと認めていただく必要はあるんですよね。
本来ならば、自転車を壊したと自分からご連絡していただければいいのですが・・・
立ち上がった後もよぼよぼとした足取りだったので、もしかすると、ご本人は自分のことで精一杯で、自転車を壊したことも認識されていないという可能性もありますね」


ひと通り、不動産屋の話しを聞いていたマリちゃんを安堵が包んでいた。
梅雨のどす黒い雲が強風で吹き払われて、一気に晴れ間を見たようなイメージだ。

念のために、こういう場合は警察に被害届けを出しておいた方がいいのかを尋ねてみる。

「被害届けを出すと、警察は防犯カメラの映像確認を求めてくるでしょうね。その場合、自転車置き場の使用者から被疑者が特定されて、逮捕ということもありますね」

被害届けを出したくらいで、TVの「相棒」で見るような本格的捜査をしてくれるのものだろうか?
名探偵マリちゃんは少し懐疑的だったが、担当者の話しを聞いて被害届けのセンは消えた。
そして、マリちゃんは滑舌の良い明るい声で、その意向を語り始める。


悪意のある人が壊したのじゃないと聞いて、心から安心しました。おじいさんが自分で申告されないことですが、私の周りでも似たような話は聞いたことがあります。きっと悪気はないと思います。そして、何より、私の自転車がクッション代わりになって、おじいさんが大けがをしなかったとしたら、よかったと思います。
保険についてはけっこうです。大家さんにはそうお伝えください。
他の住人の方については、掲示板で注意喚起したりせずに、このことは内緒にしてください。
次の週末には壊れた自転車は撤去して、新しい自転車を買ってきます。駐輪場はそのままお借りしますので、よろしくお願いします。
お忙しいなか、映像の確認をしていただいて、ありがとうございました。


おじいさんは雨続きということもあって、しばらく、買い物に出られなかったのだろうな。少しの晴れ間にちょっと多めに買い込んできてムリをしたのかな。でも頭打ったりしなくてよかった、よかった!
私が自転車を置いた日に、雨で私が乗るのを見送って、そこにおじいさんが転倒するなんて、なんて偶然なんだろう。
大事に至らなくて、おじいさん、ラッキーだったのかも。

新しい町、新しいスーパー、新しい家
なんだか、楽しくなりそう
自分の気持ち次第で、降って湧いた災難ですら 味方にもできるんだな
さぁ、牛肉と茄子の夏カレー、いっぱい食べるぞー
ゆで卵も作らなきゃ

おわり

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2019年7月26日 (金)

マリちゃんの自転車 人が人間関係で悩めない時とは

マリちゃんは考えた
「生命の危機に瀕している時に、人は人間関係で悩めない」

相対的な恐怖がある場合、人は恐れるに値しないことを明確にそう判断できる。
だとすれば、平穏な日々を過ごしている時、相対的な恐怖が存在していない時に「たった1つの恐怖」が発生した時はどうすればいいか?
その時は、名探偵コナンで鍛えたイメージ力を使い、過去に訪れたいくつかの恐怖、あるいは未到来の恐怖を思い描きリアリティを感じることで、相対的に目の前の「たった1つの恐怖」が実は恐れるに値しないと切り捨てることができるのではないか。

そう考えていくと「自転車の恐怖」も「同僚の恐怖」も、どれも恐るるに足らぬものと思えてきて、気持ちが軽くなっていくマリちゃんだった。

今日はスーパーでお肉とルウを買って「週末家ごもり用のカレー」でも仕込もうかな・・・

その日も早めに仕事を終え、タイムカードを押した。
会社近くのTSUTAYAで「準新作になったら借りようリスト」に入れておいた映画を2本借りて、電車に乗る。

いくぶん心の平穏を取り戻すと、今度は別のことが気になり始めた。
防犯カメラで「犯人」がわかったとして、それからどうする?というアイデアが自分にはないことに気づいたのだ。
不動産屋への連絡もすべきではなかったか・・
いや、それを言ってももう遅い。
とりあえず今は、防犯カメラ映像を確認した不動産屋からの連絡を待つしかない。

数時間後、マリちゃんは台所に立ち、悩みがある時に必ず食べることにしている牛肉と、思いのほか安かった茄子を煮立てていた。
TVのニュースで「長梅雨で野菜が高騰しているなか、今年は茄子が安くて美味しい」と言っていた。
がっつりの牛肉とさっぱりの茄子でつくる夏カレー

「言うことなす!」
昔、理研のCMでみた突っ込みを入れ、さぁそろそろルウを投入するかなと思っていた時、マリちゃんのスマホが鳴った。


一旦、火を弱くして「応答」をスワイプ
電話の相手は不動産屋の担当者だった。
まるで、隣りで話しているようなクリアな声に一瞬どきりとするくらい、彼のスマホの音質はく、現代科学はここまで進んでいるのかと一瞬、イメージの世界に遊びに行きそうになったが、気を取り直して通話に集中する。

「自転車の件のご報告です」
不動産屋の担当者は静かによどみなく話し始める。
深刻な事態を告げる時の沈痛さはない。
そして、彼が映像で見たものは、マリちゃんのイメージ力を持ってしても、想定を超えていた。

つづく

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2019年7月25日 (木)

マリちゃんの自転車 トラブルに気持ちが塞がない訳

自転車を壊せば「器物損壊」
それは刑事罰であり、被疑者と断定されれば逮捕されることもある。
そうなった場合、学生であれば「就活に響く」ということは容易にわかるし、社会人であれば査定に響くだけでなく、その後の人事に暗雲が垂れ込める。もちろん会社にばれた場合だが。

それに、私が民事訴訟を起こせば、自転車の弁償、慰謝料の支払いといった費用も発生する。
いずれにせよ「むしゃくしゃした」程度の気持ちで行うにはあまりに代償が大きい。
大の大人がやることとは思えない・・


マリちゃんは、ここでイメージの世界から一旦離れて、現実路線に立ち戻る。
できれば、穏便に済ませたい。
それを第一義に考えよう。

自転車は廃棄するしかない。
買ってから7~8年が過ぎ、かなりくたびれており、何らかの保険が下りたとしても「評価額は千円です」とか言われそうな代物だ。
今回は勉強代を払ったと受け止め、これをいい機会と捉えて、憧れの電動自転車でも買うか。

被疑者が特定されて一定の補償が得られたとしても、近隣住民との間にしこりは残る。
もしも、問題がこじれるようなことになり怨恨が生まれるようならば、報復に怯えなければならない。そんなことでは、ここに長くはいられなくなる。
せっかく、気に入って移り住んだばかりのこの町をすぐに出て行くのは回避したい。


一生のうちに「自転車を盗まれる」という経験をする人は多いが「壊された自転車が目の前に残っている」という経験をする人は少ない。
従って、こういう時、警察に被害届けを出していいものか、出すべきなのか、それずらもわからない。
ただ、何もしないでスルーというのも気味が悪い。


その晩、マリちゃんは不動産屋に一通のメールを送り、できるだけ穏便に済ませたいことと、客観的な状況だけを伝えた。
不動産屋からはその日遅く、返信が届いていた。

「明日、防犯カメラの映像を確認して、またご連絡します」


翌日、会社でもちょっとしたトラブルがあった。
マリちゃんが提出したはずの報告書が先方の部署に届いておらず、先方から「怠慢ではないか」と上司に抗議が入り、仄聞した同僚からは「仕事の品質が低すぎる」という非難の声が上がったのだ。
一体何が起きているのかわからなかった。
ただ、不安の雪が屋根まで積もるといった追い詰められた感情もない。
いつもなら憂鬱なこともサンバのリズムにきこえる・・
悠長な状況ではないにも関わらず、マリちゃんの気持ちは不思議と重たくはならなかった。


どうしてだろう?
いつもならば、言われなき非難には心を痛めるし、気持ちが塞ぐというのに。
そして、すぐに名探偵マリちゃんは気づく。
あ、そうか。
得たいの知れない相手に自転車を壊されたという恐怖感が、相対的に「その他の恐怖」を押しのけているのだ。
さらに分析する。
待てよ?だとすれば、恐怖も場合によってはウェルカムということか。

つづく

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