2020年9月18日 (金)

17年使ってきたNOLTYカレンダー「C211」が廃止されていた

8月の声を聞くと来年の準備を始める。
毎年買う本、手帖、そして特に重要なのが卓上カレンダー

2004年から使い始めた「C211」は今年で17年め。
毎年2セット買って、仕事場と書斎に1つずつ置いている。

例年8月にはamazonで予約受付が始まる。
「C211 NOLTY 2021」
で「Google先生」にリクエストするとamazonのサイトが出た。
これこれ・・と[カートに入れ]ようと思ったら、2020年版だった。
危ない、危ない・・・
発売元であるNOLTY(日本能率協会)の公式サイドを確認すると、まだ発売されていない様子。今年はちょっと遅いのかな・・

その日からは毎日「C211」チェック
ところが、来る日も来る日も同じ結果だ
おかしい。なにかカレンダー業界が滞る要因があっただろうか。
天皇陛下の生前退位による改元は終わっている。
東京五輪2020(2021年開催)による海の日、スポーツの日の移動は秋の国会を待たなければ決まらない。それから印刷していたら販売機会を逸するだろう。

「C211 NOLTY 2021」
で探し始めて2週間。まだ慌てる時期ではないのだが、違和感が募ってきたのでNOLTYに問い合わせた。

回答はとても迅速かつシンプルだった。
「C211は2020年版をもって廃止となりました」

どっちゃー

本当はどっひゃーと打ちたかったのに、気が動転してミスした
その回答メールには代替商品が案内されていた。
型番は「C255」
三度の飯より「計画」が好きだ。ここで、買わないという選択肢はない。
早速、購入して比較した。

■大きさ
C211はB6変形だったが、C255はB6。タテに5mm、ヨコに2.5cm大きい。
過去16年分をまとめて保管しているので、できれば同サイズがよいが、使用上の支障はない。

■日付の位置
C211は日付枠内の左上、C255は右上
慣れるまで違和感はあると思うが、支障ではないと思われる。

■枠の分割
C211は1日の枠が2分割だが、C255は3分割
これまでは2分割を午前、午後の目安としていた。3分割は使いながら決めていきたい。

気づいた違いはこの3点に留まる。
実用上は支障なしと言える。

C211にはなかった特徴として、C255には年間カレンダーが1枚付いている。
(C211は表裏印刷で6枚組。C255は7枚組)
1年が俯瞰できる超コンパクトな卓上カレンダーはあまり見かけない。遠い月の曜日を見る時に重宝するだろうか。
来年の今頃、感想をお聞かせしよう^^)

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2020年8月16日 (日)

抜絢器とスキンステープラー

最終話

僕がキツネにつままれたような顔をしていたのだろう
「これです」
市川実日子が膿盆に乗っている、たった今まで僕の頭に刺さっていたピンを見せてくれた。
写真いいですか?

というほど映えるものではない。
役割を終えたピンは、それがホッチキスのピンだと言われても誰も疑わないカタチをしている。
ただ、少し妙なのは、どれもが干からびた蟻の足のように先っぽが内向きで、Kappa(カッパ)のロゴマーク(人が2人背中合わせに座っている)のようなM字型をしていたことだ。


帰宅後、この銀色のハサミのような器具を「Google先生」に尋ねた。
先生は「医療従事者ではない君には教えられないなぁ」と何度か渋ったものの、なんとか一般でも閲覧できる情報を引き当てた。

抜絢器は【ばっこうき】と読む。
スキンステープラー(後述)で打ち込んだ針を抜く医療器具。
英語では「ステープルリムーバー」「ステープラーリムーバー」
実勢価格:1,100円(買わないけど)


抜き方は、ホッチキス(ステープラー)の針を抜く要領と似ているが、非なるもの。
ホッチキスのリムーバーの場合、針の一点に力をかけて引き抜く。
抜絢器の場合、上から中央部分を押さえ、そこをてこにして両端の2点を引き抜くので、肌を傷めず、傷みもなく針を抜くことができる。だから、抜いた針がM字型になる。


ちなみに市川実日子が迅速に5針を打ち込んだ器具は「スキンステープラー」
skin stapler 皮膚を縫合する器具

ホッチキス(ステープラー)と同じギミックで、ステンレス製の針を内蔵している。
それを大工さんが鋲を壁に打ち込むように、傷に対して針を直角に打ち込む。
打ち込む針の形状はホッチキスの針と同じ「コ」の字型。
針の幅は 7mm、深さは5mm以内

骨、血管まで 5mm以上の間隔がある傷口の縫合に使われる。
糸と針で縫うのに比べると迅速に施術できる。
およそ1週間後、抜絢器で針を抜く。


糸で縫う場合は「3針縫う」と言うが、スキンステープラーの場合「3針打つ」という表現が相応しい。
この器具名を知った日の夜、テレビドラマ「BG~身辺警護人~」第3話 で、市川実日子扮する整形外科医が手術の仕上げに「スキンステープラー!」と要求するシーンがあった。
我が身に何も起きていなければ、このシーンを気に留めることもなかっただろう。


抜絢後の数日間、髪をかき上げると傷の周辺に残っていたかさぶたに引っ掛かったが、毎日洗髪しているうちにそれもなくなった。
さらに一週間もすると、シャンプーもコンディショナーも、発毛剤も遠慮無く浸けられるようになった。
この傷がいつか禿げになるのかはわからないが、それが額に吸収されぬよう、日々健康の維持に努めたいと思っている。

躓いたのはホットカーペット。頭が切れたのは掃き出し窓に掛けているブラインドと特定された。
今は、またこけるのでは?と歩くのが怖い。家の中では、足下に置いていたものをすべて片付けた。
外を歩く時は、進行方向の導線に障害物がないか?路面にわずかでも凹凸がないか?
日々、ゴルゴ13のような鋭い目で下ばかり見て歩いている。きっと、500円玉を拾う日も近いだろう。


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2020年8月12日 (水)

五針縫ったのに傷みがない

十話

脳外科外来で受付を済ませると、その日の一番目の診察で呼ばれた。
「どうですか?」
待っていたのは市川実日子だった。
少し意外だったが、自分で診た患者は最後まで自分が診るんだなと独りごちた。
だが、考え直してみると、夜間救急に脳外科の医師が居たということである。僕が幸運だったのか、そもそも態勢が厚いのか・・

市川 どうですか?
moto いや、ふつーです^^;)
市川 そうですよね

市川実日子に、僕の応えは織り込み済みだったらしい。
そこに(深夜外来の)宮崎美子ではない看護師がやって来て、机の上に銀のトレーを置く。
そのトレーには銀色に光る道具が入ったビニル袋が乗っている。
そこで僕はフクロの字を読んだ

抜絢器

バツシュンキ?じゃないよな
ここ(診察室)は、スマホを取り出してメモが取れる場所ではない
「いとへんに食べ物の旬」
僕は短期記憶領域に記銘の指示をする
あとで「Google先生」に聞こう

消毒済みであることを判別するために、ビニル袋に入って登場したのであろう抜絢器。
市川実日子は袋からハサミのような形状のそれを取り出し右手に握ると、すっくと立ち上がる。
小学一年時の怪我で抜糸した時も、麻酔や痛み止めの類いは施されなかった。ましてや今回は五針縫う(打つ)時でさえ痛み止めがなかったわけで、抜糸(抜絢)の時にそれがないことは、僕には織り込み済み。
市川実日子からも「痛み止めはしませんから」といった説明はない。

ここで、一般的患者ならば誰もが次の一手は「ピンが刺さっている部分を消毒する」と読むだろう。もちろん、僕もそう読んだ。
ところが、看護師はソラマメのような銀色のトレー(膿盆=のうぼん)を構えて、市川のすぐそばにスタンバイ
いきなりの臨戦態勢に入った!

処置の時と同じだ
患者に考えるヒマを与えない
余計な不安を増幅させるヒマがない

僕は一瞬にして身構える
小学一年生の時に感じた、針金が抜けるような鈍い感覚を想起して覚悟する
市川実日子は抜絢器を頭に当てるとテコの原理を応用してピンを抜く
スコンスコン
いや、今度は音がしない
確かにピンが抜けるだけの間がそこにあった
だが、感覚だけが無い
全然痛くない

あれ?こんなもん?

その間にも市川実日子はスコンスコンと5つのピンを抜き終えてしまった。
いったい、どれくらいの深さか知らないが、皮膚に打ち込まれていた金属片が抜けたというのに、この無感覚はどーゆーことっ?


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2020年8月11日 (火)

今しかない頭に刺さったホッチキスを触る日々

九話

頭を縫った夜、いよいよ頭を洗うとなると緊張してきた。
今、傷口はどうなっているのだろう?
頭を洗って、傷口からばっちぃ湯が染みこんだりしないのだろうか?

市川実日子医師は「頭を洗っていい」とは言ったが「シャンプーを使っていい」とは言わなかった。
「シャンプーは使っていいですか」と質問するのは、何も考えてない人みたいで憚られた。
そういう人は、次は「リンスはどうですか?」と畳みかけたところで「はい、お大事に!」といって診察室を追い払われるだろう。

結局、シャンプーは使わず、ぬるま湯で汚れを洗い流すに留める。
怪我をする数時間前、岸本葉子「50代からの疲れをためない小さな習慣」を読んだことで、前夜のシャンプーを1回飛ばしたことを後悔した。
それよりも、その本に書いてあった転倒事故が6時間後、自分を襲うとは・・
読んだ本そのままの展開、びっくりだ


昨晩、病院で会計を待ちながら畏れていたのは「傷口が禿げる」のでは?ということだった。
小学一年生の時に3針縫った怪我でできた線状の傷口からは2度と髪が生えてくることなく、そのまま禿げになった。
大学生の時に交通事故でできた傷口も禿げになり、行きつけの美容院では「円形?」「ここ禿げてるね」とあからさまに言われて憤慨している。
頭に傷を作るのはこれが3度目となる。
これは日本人の平均に照らして、多い方ではないだろうか?

風呂上がり、鏡に映して傷の位置を確認する。
この24時間、これが心配の種だった。
幸い、傷の位置は生え際から離れていた
意識してその当たりを注視してもわからない
手で髪の毛をかき分けると、ホッチキスのピンが光っていて、あぁここなんだと初めて分かる

この日から抜糸(正確な名称は後述)までの6日間。
特にいつもと変わりのない日常が続く。
歯医者の予約を延期したのと、髪を切りに行く予定を伸ばしたくらいで。
それから、指でホッチキスのピンを触るのが日課になった。
この6日間、今しか触れない「非日常」の体験だからだ。

市川実日子が迷い無く打ち込んだ初めの3本は規則的に並んでいる。
だが、そこから少し向きが変わり、間隔が広くなっている。
少し間が空いたのは、傷口がカーブしているせいか
4針だと思っていたが、何度か数えてみるとピンは5本あった。
時々、髪の毛が指に引っ掛かるのは、髪の毛の上からピンが打たれているらしい。
確かに、あのスピードで打てば、髪の毛が噛んでしまっても仕方ない。


翌日からはシャンプーを使って頭を洗う。
それでも、できるだけ傷口の周囲にはシャンプーがかからないようにした。
まだ針があるということは、傷口がくっついていないということであり、そこにシャンプーが入るのはよくない気がしたからだ。
風呂上がりの発毛剤の塗布にも注意した。血流の活性化で発毛を促す医薬品を浸けていいわけがない(と思う)


傷口の消毒もなければ、服薬もない
時折、髪をかき上げようとしてピンに指をひっかけて「やべ」と怪我を思い出す。
鏡を見ても、怪我をしていることはわからない。
自分から言わない限り、誰も怪我には気づかない。
そうして、あっという間に一週間が過ぎて "抜糸"の日がやってきた。


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2020年7月25日 (土)

緊張の一瞬 絆創膏が剥がれない

八話

順番待ちではないが、会計だけは少し待った
CT、4針打ちという一連の処置が迅速だったので、そう感じたのかも知れない。

この時点で 当初、想定した最悪の事態から1,2が消えた
1,怪我が及ぼす今後の生活への影響
2,ガラスが割れた場合の経済的損失
3,傷が残ること

それでも3の不安が残っている
僕はそれを詳細に言葉にすることを畏れていた
言葉は言霊
言葉にすれば、それを現実として引き寄せてしまう気がする


掃き出し窓に頭から突っ込んだ90分後には、病院で4針縫い終わって、再び自宅に戻ってきた。

深夜1時半
怪我の処置もしたことだし、歩いて帰るしかないと思っていたら、僕を病院まで運んでくれたタクシーが、病院の玄関で客待ちしていた。
コロナ禍により深夜のタクシー需要は落ち込んでおり、流しの客は望み薄。ならば、救急からの帰宅客(僕を含めて)を待つことにしたのだろう。


絆創膏に塞がれているので、今縫った(打った)ところがどうなっているかわからない。
時折、傷口のほうから「ずきっ」と痛みがやってきて、どうだオレは今けが人なんだぞと主張するが、それは一瞬であり、忘れて居ればいつもと変わらない。
痛みで眠れないということなく、あっさりと眠りについた。


一夜明けると、その痛みも消えていた。
頭に絆創膏を付けたまま会社に行くのも、駅まで歩くのも、客足が戻ってきた電車に乗るのも気が重い。
よし、会社を休もう
いつもならば、そう思うところだが、幸いその日は在宅勤務。
メール越しに「頭を4針縫った(打った)」ことは伝わらない
オンライン会議に呼ばれることもない

時々、いつものクセで髪をかきあげようとして絆創膏に指がひっかかり「あ、怪我してたんだった」と思い出す程度。
いつも通りの仕事を終えた。


夜がきて、その日の入浴時間になった。
小学一年生で頭を3針縫った時は、もっと慎重だったと思う。少なくとも翌日から頭を洗ったりしていない。確か、一週間後に抜糸した日にようやく頭を洗い、髪がぱさぱさ、べたべたになっていた。

恐る恐る絆創膏を外す
ところが、これがなかなか外れない
もしかして傷口にひっついているのか・・
実はこの絆創膏、髪の毛を使って留められていたのだった。
絆創膏の上に周りの髪の束を折り返し、その上からメンディングテープを貼る。
そうすると絆創膏が剥がれない。
剥がれなかったのは、髪がテープにくっついていたせいだ。

髪の毛が抜けないように慎重にテープを剥がしていく
別の意味で緊張した

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2020年7月24日 (金)

カチャン・カチャン・カチャン もひとつ カチャン

七話

月曜日の深夜、地域の救急医療を担う病院は静まりかえっている。
救急患者が運び込まれる処置室には、頭から血を流した僕と医師の市川実日子、看護師の宮崎美子。
待合室にも次の患者は来ておらず、他の当直医はしばしの休息を取っているのだろう。


何処かへ消えていた市川実日子が戻ってきた。
僕は反射的に彼女から目を反らして床に目を落とす。
恐らく、彼女の手には「ホッチキスのようなもの」が握られているだろう。

特に血を見るのが苦手といったことはないが、検診の採血では注射器から目を反らす。
彼女が右手に持っている機械に興味は湧かなかった。

宮崎美子が何をするでもなくヨコに控える。
市川実日子は「では、始めましょう」とも言わず、迅速な動きで僕の頭にそれを当てると、迷いもためらいもなく、一定のリズムで施術を始めた。

カチャン
カチャン
カチャン
(ちょっと間を置いて)もひとつ
カチャン

DIYかっ

最近では素人の工作にも使われれるホッチキスのような機械を「タッカー」という
市川実日子は、まるでプロの大工が木材を固定していくような、確信を持ったリズムで僕の頭に4本のピンを打ち込んだ

その時、僕は神経のスイッチを切り、感覚を消した。
あとでじっくり思い出すならば、それは「ぎしっ」という質感を伴い、まさに誰かからホッチキス(ステープラー)でピンを打ち込まれているような痛みだった。
それもけっこう太いピン
痛かったけれど、涙が出るほどではなかった
市川実日子に「がんばっていきましょう!」と言われていたので、動じないところをみせたかった

その上から宮崎美子が絆創膏で蓋をした

どうやら、これで終わりらしい
さっきから、さほど張り詰めていたわけではないが、さらに部屋の空気が緩んだのを肌で感じる。
市川実日子がCTの結果を見ながら言う。

「骨折や内出血はありません。1週間で傷がくっつきます。来週来てください。明日の夜には絆創膏を外して頭洗っていいです。でも湯船には浸からないで。次の夜からは湯船に浸かって大丈夫です」

その場で、一週間後の予約を入れてもらい、二人にお礼を言って処置室を後にする。
病院に着いてから、30分もかかっていない


それにしても、市川実日子の施術は迅速だった
「さぁて、ぼちぼち、打ちますか~」
と言わんばかりに慎重に事を運ばれたら、人に拠ってはけっこう辛いと思う
やるときは、すばやく、一気に
そういうものなのだろう。
ただ、あれだけ速いと、それが的確さも伴っていたのか心配は残る。
それは、一週間後にはわかるだろう。

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2020年7月23日 (木)

ホッチキスのピンみたいなので留めます

六話

「でも、切れてよかったですね」
タクシーの運転手はそう言って慰めてくれた。
頭を打って中に血が溜まるよりは、切れてよかったという意味である。

本当のところはよくわからない。
そう言われるとそうだと思う。現実に切れているのだから、それが不幸中の幸いだと分析した方が幸せだとは思う。
けれど、鬱血してたんこぶになるのは、何が悪いのかを知らない。
ただ、切れなかった人に対して「切れなくて良かったですね」という人はいないかも知れない。


椅子のシーツが真っ白なので、血が付きはしないかと心配になったが、もう血は止まっているようだ。
これで、病院まで行ける
ほっとすると、キズがズキズキと痛み出した。


救急搬送入口に救急車は停まっていないところをみると、院内は穏やかで平凡な夜を迎えているらしい。
かつて、入院していたこともあるので勝手がわかっている。
救急外来の入口から入り、警備員に「どもっ」と挨拶して夜間外来へ進む。彼も頭から血を流しているけが人に「ちょっと待て」とは言わなかった。

受付を済ませると処置室前の廊下で待機。
少し、落ち着こうとと腰掛けると
「あ、そうそう」
思い出したように看護師がやって来て体温、血圧を測る。
いつもより血圧がかなり高い
この機械が壊れているのか、うちで使っているANDの血圧計がおかしいのか。それとも、興奮している?
そんなことを考えていると看護師に「血圧を下げる薬とか飲んでますか?」と聞かれてしまった。
ほかには「お酒飲んでますか?」「今なにか治療中ですか」「なにか薬のんでいますか」と言ったことを聞かれたと思う。
酒を飲んでいなくてよかったと思う反面、酒も飲んでいないのに転ぶとは・・という残念な気持ちもある。


それから落ち着く間もなく、CT室へ行くように促される。

つい数日前、MRIを撮ったばかりだ
あれに比べれば、CTは拘束もルーズで時間も一瞬。
待ち時間ゼロ
誰も歩いていない照明が減灯された廊下を、すいすいと歩いて処置室へ戻る。

処置室には二人の女性が待っていた。
二人とも淡いピンクがさした上下を着ているので一見して、その役割が判別できない。
恐らく市川実日子に似た方が医師で、宮崎美子に似た方が看護師だろう

「ちょっと見せて」
市川実日子に促され、血を止めていたハンドタオルを外す。
円形にに血が広がっている部分は、既にずいぶん水分が失われている。
傷を確認して消毒を済ませると、彼女が治療方針を話す。

「痛み止めとかしないでホッチキスのピンみたいなので留めますから頑張っていきましょう!」

滑舌がイイ
頭の回転が速い
ほっとする情報と、新たな不安要素
それでも、事態が思ったよりも速く終息に向かうことがわかってきて、心に安堵の雪が積もり始める

小学校の時、針と糸で縫った時は大きな傷が残った。
ピンならば傷が残らないのでは?一筋の光が差す
合理的だ

ここで、市川実日子が何処かに消えた
恐らく"ホッチキスのピンみたいなの"を取りに行ったのだろう。
その間を利用して宮崎美子が「これで拭いてください」と笑って濡れたタオルを渡してくれた。
タクシーを汚さないよう足に付いた血は拭いてきたが、メガネと右手には乾いた血がこびりついていた。

すいません、写真いいですか
などと、もちろん言ったりしない

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2020年7月22日 (水)

足よりも弱く、石頭より強い網入りガラス

五話

救急病院がすぐに受け容れてくれることになり、少し落ち着く

治療の段取りはついた
さて、病院まで、どうやって行くか?
こんな夜中だから、タクシーが来るまで時間がかかるかも知れない
意識はしっかりしているので、クルマで行くか

だが、衣服が血だらけになっている
血を止めながら片手で運転というのは危なっかしい
それに、急に意識が遠のいたらどうする
やはり、安全策を採ろう

あいにく、iPhoneの電話帳には何も登録していない
Siriに「近くのタクシー会社」を探してもらう
遅い時間にも関わらず、すぐ来てくれることになった


ここで、一息つく
さぁ、何をしよう
そうだ、現状確認だ
ブラインドをめくって掃き出し窓のガラスがどうなっているか見る
割れてない!
髭剃りをしているところを背後から襲われるCMを思い出す
(それは、切れてない)

これで、最悪の事態から1ランク下がった
ワイヤーが入っている網入りガラスは、僕の石頭より強いらしい

もう10年以上前になるが、この網入りガラスを割ったことがある。
理由は忘れたが、ベランダに居てなにかの拍子でガラスを蹴ってしまった。
まさか、割れるとは思わなかったが、怪しげな十文字型に亀裂がはいった。
おいおい、それで割れるのかよ・・・

すぐに近所のガラス屋さんを呼びに行った。
店主のお爺さん曰く
「最近は体も動かなくなってきたので、そろそろ店を閉めようと思っててね」
そのせいなのか、ガラス交換は難航し、僕も手伝ってなんとか交換した。
お爺さんは僕のお蔭で仕事をやり遂げることができたとお礼を言って帰っていき、数ヶ月後には本当に廃業していた。
少しまけてくれたものの、網入りガラスは通常のものより値が張り、痛い出費だった。

 

もしも、割れていたら
怪我がさらに大きくなったかも知れないし、経済的にも痛い
後始末にも時間がかかる
割れなくて助かった

ならば、なぜこんなに血が出ているのか?
それについては、その時は思い至らず、すぐに考えたのは着替えだった。
若い頃、タクシーでゲロを吐いて弁済金を払ったことはある。とっさに財布を出して1万円札を渡したら、運転手さんがすんなり受け取ったので、恐らく相場より多かったのだろう。
だがまだ、血だらけで乗ったことはない。マナーとして室内を汚さないようにしなければ。

しばらく、膝をついて座っていたため、短パンが特に血を浴びていた。
短パンを履き替えて、足に付いた血を拭き取る。
血で染まったメガネの右レンズから血糊をティッシュで拭き取る
持参する保険証や診察券を揃えていると「玄関に着いた」とタクシー運転手から電話が入った。

はやっ

ホットカーペットに落ちた30滴の血の始末は後回し
しかし、血だらけのカーペット、住人は不在、鍵は閉まっているとなると、まるで刑事ドラマの現場だな・・

つづく

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2020年7月10日 (金)

#7119に5W1Hで怪我の状況を伝える

四話

後日、確認したら、しらべるで 2011年2月に「#7119」の記事を作っていた。

消防庁救急相談の電話番号
救急車を呼ぶか、自分で病院に行くか迷った時の相談窓口
■東京都全域、大阪府大阪市のみ
■携帯電話からでもかけられる
■24時間対応

2011年当時は東京、大阪だけだったが、現在は10都道府県に広がっている。
かけた時は気が動転していたので当然と思っていたが、24時間対応なのはありがたかった。
ちなみに「110番」版は#9110
犯罪被害の未然防止など、生活の安全を守るための警察総合相談電話番号
■全国共通
■携帯電話からでもかけられる
■110番と違い、24時間対応ではない


「#7119」につながる
自分がいまどうなっているかを話す

・0:20頃
・家の中で
・私が
・何かにつまずいて転び
・窓ガラスで頭を打ちました
・血が30滴くらい落ちています
・タオルで押さえて止血しています

5W1Hに沿って、まずまず冷静に話せていると思う
どうしたいですか?と問われたので

・このまま様子見という雰囲気ではない
・何らかの処置はしてもらいたい
・最寄りの救急病院まで自力で行きたい
と希望を伝える

救急病院に受け容れの打診をしてもらいOKが出た。
つづいて、救急外来に直接電話する。

「今から何分後に来れますか?」
「当院の受診歴は?」
「来る時はマスクだけはしてきてください」
と病院の当直担当者。

相手にも都合があるだろう。
少し多めに見積もって時間を伝える(実際にはかなり早く着いた)
以前、入院していたこともある病院。診察券は"滅多に使わない"カードの束に移っていたが、捨てないでよかった。

つづく

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2020年7月 9日 (木)

よし、血を止めよう

三話

目の前で僕の血が30滴おちている

昔をを懐かしんでいる場合ではない
さぁ、どうしよう
そうだ、血を止めよう
このまま死ぬのか、いやいや、それはないな
まず、その選択肢は消した
ただ、流血は止めなければならない
数時間前にテレビの刑事ドラマで見た血は、視聴者のショックを和らげるためか、少しオレンジがかっていたが、目の前に落ちた血は本物の色をしていた。本物だから・・

明確な言葉が思い浮かんだ。
「大変なことになった」

何が大変なのかというと、
1,怪我が及ぼす今後の生活への影響
2,ガラスが割れた場合の経済的損失
3,傷が残ること
この3つを同時に想定したからだ。

ガラスが割れたのであれば、傷口に刺さってはいるかも知れない
ブラインドが遮っているため、窓の状態が見えない
床にガラスを探す
ざっと見たところ、ガラスは見つからない
よし、血を止めよう

幸い、コロナ禍が始まって以来、いつでもハンドタオルをポケットに忍ばせている。
右のメガネレンズに血が流れ落ちて、視界が悪くなってきているところをみると、どうやら傷は右上らしい
タオルでこの当たりが傷口だろうと推定してそっと押さえる
ガラスが刺さっているような感覚はない


さて、どうしようか
むやみに歩き回るのは危ない
それに、あとで血の始末をする範囲が広がる

右手にはタオル越しにじゅっくりと血の感触が伝わってきた
これは、唾付けて治るとか、消毒と絆創膏の世界じゃないな

よし、相談しよう
確か#7119だったと思う
以前、新聞で「119番にかけて救急車をタクシー代わりに呼ぶ人がいて、喫緊の救助が遅れている」という記事を読んだことがある
幸い、自分の足で歩いて行けそうだ
まずは救急の専門家の意見を聞こう。


スマホの画面に書いてある数字が頼りない
プッシュホンで育った世代なので、ボタンの凹凸がないと押している実感が沸かない
試しに#7119とタッチしてみる
番号は合っていた

つづく

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