2022年6月28日 (火)

USBメモリー専門家としての意見

■論評1
今どきUSBで持ち歩くとは驚き。クラウドの活用を考えてはどうか
 ↓↓
私の意見
この論評をした方は、組織において、個人情報がどのように運用されているかという実体験がないのだと想う。
企業や自治体といった大抵の組織は、個人情報をデータベース化している。
少し小難しくなるが、以下はしらべるにおける「データベース」の定義である。

それぞれの件数が多い複数の項目の情報を蓄積しておき、必要な時に検索して利用できるようにした情報群

個人がエクセルファイルでつくるブック(ファイル)は、データ項目がデータベースと同じだったとしても、他のコンピューターと一元的に共用できないのでデータベースとは呼ばない。

個人情報を"格納する"データベースは社内ネットワーク(イントラネット)にあるサーバー(※1)に置くのが基本。その方が安全だからだ。
そこを飛ばして、いきなり、クラウド(インターネット上の社外サーバー)に置くのを検討することはないと想う(例外を*以下に後述)
企業のセキュリティ担当者が聞いたら、USBの代替案が「クラウドの活用」という文脈の不思議さに戸惑うと想う。

企業にとって「個人情報」は機密性の位置づけが高い。
「個人情報漏洩事案」は、メディアとSNSで「叩いてよし!」という共通理解がある日本社会では、その事故は最も効率よく企業価値を下げる手段だからだ。

ただでさえ、一般社員はなんでもクラウドに置きたがる。
しかも、そのクラウドは会社指定のものではなく"タダで使い放題"の「自前クラウド」が多い。

一定のセキュリティ意識がある会社の場合「会社公認クラウド」が用意される。ただし、そこでは(データのダウンロードなどの)行動が会社から捕捉される。

一方「自前クラウド」に置けば、そのデータを個人のパソコンにコピーできる。
その目的はなんなのか?ということだ。

従って、個人情報を社内(イントラネット)に置かずに、いきなりクラウドに置くという発想はないのである。


*ただし「イントラネットにサーバーを立てる」ことが難しい組織もある。
セキュリティに詳しい担当者がいない、または、予算が乏しい、中小企業や自治体では、一足飛びの「クラウド置き」は有りかも知れない。

世の中には「世界最強レベル」のセキュリティを謳うクラウド(※2)があり、その方が一企業のイントラネット内よりも強力ということもあるからだ。

そうした堅牢なクラウドでは、データのダウンロードや編集などの履歴を会社(システム担当者)側が捕捉できて、社員による犯罪防止の抑止力もある。


尼崎市の案件「USBメモリーに個人情報」は、担当者がデータベース等からダウンロードしたコピーをUSBメモリーに入れて、社外に持ち歩いていたということだろう。

なんで、そんなことをするのかというと、恐らく使い勝手がいいからだ。データをUSBメモリーに入れておけば、持ち歩くパソコン、会社事務所のパソコン、自宅のパソコンとあちこちで使える。
データを加工して資料を作る時、元のデータ(全項目)が手元にあった方が便利なのである。


ベネッセ事案のように個人情報を転売する事案が起きると、会社が大打撃を受けるので、良識ある企業は「記憶媒体に営業秘密を入れて社外持出」することを禁止している。

尼崎事案では次のいずれかが考えられる。
(1)持出禁止の規則がなかった
(2)例外許可措置の取り決めがあり、許可を受けて持ち出していた
(3)担当者が規則違反をしていた

※1 組織の規模によりサーバーはパソコンということもある
※2 ここでいうのはネットワークストレージ


■論評2
USBメモリーにかけていたパスワードの桁数を話すのはセキュリティ意識が低い
 ↓↓
私の意見
USBメモリーのパスワード桁数を制御できるシステムはない。

パスワードの桁数、複雑性の設定は、ユーザーの意識にかかっている。
今回、会見で述べられていたパスワードの桁数・複雑性は割と意識が高い方だ。
会見した者は「しっかりとやっています」と言いたかったのだろう。

仮にUSBメモリーを拾った人が「悪者」だったとして、会見でばらしたらパスワードを解読しやすくなるという批判は当たらない。
悪者がパスワード解析ツールを使えば(発表された桁数ならば)数時間で解読できる。

情報セキュリティ用語集

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2022年6月25日 (土)

USBメモリーを4000個廃棄した

尼崎市民の個人情報が入ったUSBメモリーを紛失したが、翌日見つかったという案件は、NHKニュースを初めとして、広くメディアが報道した。

USBメモリー専門家の出番である。
(なぜ出番なのかは後述)
世の中にUSBメモリーを仕事で使う人、管理している人は大勢いると想うが「企業の全USBメモリーを使用禁止したうえ、4000個のUSBメモリーを回収して廃棄した」経験を持つのは僕だけではないだろうか。

誰もやりたがらない仕事を押しつけられて、任務を全うするまでの日々は長く辛かったが、本題を外れるので、ここでは触れない。


初めに「USBメモリー」という用語について触れておきたい。
「USBメモリー」というのは「パソコンのUSB端子に挿して使う記憶媒体」のことだ。
パソコンにUSB端子が初めて装備されたのは1997年だが、当初はあまり使い途のないインターフェースだった。

USBメモリーが登場したのは2000年。
僕がUSBメモリーを初めて手にしたのは2001年。
得意先の営業マンが社名入りのノベルティをプレゼントしてくれた。
その営業マンは自分用はもらえないそうで、僕に渡した品を羨ましそうに見ていた。
思わず僕が「あげようか」と言ったら、今にも受け取りそうな顔で「いやいや」と苦笑いしていたのを思い出す。


当時、1.25MBのFD(フロッピーディスク)でデータをやりとりしていたサラリーマンに、容量が大きいUSBメモリーは一気に広まった。
後に情報漏洩のメイン・ツールになるとは、誰も想っていなかったので「買い放題」の「使い放題」
中には私品を会社に持ち込んで使う者あれば、恐らくその逆もあっただろう。
世の中に「情報セキュリティ」「法令遵守」の意識が乏しかった時代のことだ。


世の中の人が最初に出会った「USB機器」が「USBメモリー」
当初から大半の人が「USB(ゆーえすびー)」と省略して呼んでいた。
その名残で、ITリテラシーが低い層に今もこれを「USB」と呼ぶ人が多い。

しかし、USB機器(USBデバイス)はメモリーだけではない。
ハードディスクなどの記憶機器、DVDなどの記憶媒体を使うメディアドライブ、マウス、キーボード、イヤホンマイクといった周辺機器。USB給電を利用したデスクライトや扇風機まである。
従ってここでは「USB」と省略せず「USBメモリー」と表記する。


■尼崎USBメモリー事案 時系列の記録

2022年6月23日
尼崎市発表
・46万人余の個人情報が入ったUSBメモリーがなくなった
・業務委託先会社の担当者がUSBメモリーに個人情報データを入れて持ち歩いていて、紛失
・USBメモリー機器はパスワードを入れるタイプである
・パスワードは13桁

2022年6月24日
尼崎市発表
・会社の担当者が改めて探したところ見つかった


冒頭「USBメモリー専門家」の出番としたのは、ウェブ記事、ニュースショーの論評の中で「それは違うのでは?」と想った以下2つの点について述べるためである。

論評1
今どきUSBで持ち歩くとは驚き。クラウドの活用を考えてはどうか

論評2
USBメモリーにかけていたパスワードの桁数を、会見で話したのはセキュリティ意識が低い

つづく

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2020年4月28日 (火)

zoom! zoom!

そうだ、オンライン呑み会、やろう!
そう思い立ってから、board meeting ツールについての情報収集にはいった。
その中でも第一候補はzoom。
これまで、幾多の類似サービスがあったが、どれも、時代の流れを作るには至っていない。
そんな中、コロナ感染問題があったとはいえ、一気にデファクト・スタンダード(事実上の標準)に上り詰めたzoomには、そうなり得た理由があるはずだ。


■zoomに関する記録
2011年
Zoom Video Communications(米国)設立

2013年
「Zoom」提供開始

2019年12月
1日の利用者1000万人

2020年3月
1日の利用者2億人(3か月で20倍に増加)

2020年4月1日
Zoomの脆弱性が報道され始める

2020年4月8日
台湾政府が使用禁止を発表


■zoomを禁止している組織
Google
NASA
台湾政府
ドイツ外務省

■セキュリティ上の問題点
・Zoom会議に非招待者が侵入
・パソコン乗っ取り(OSの資格情報が盗まれる)
・パソコンカメラの乗っ取り(盗撮)
・データをFacebookに送信(後に機能削除)
・画面に集中していない人を管理者が把握できる「アテンショントラッキング」機能(4月2日に削除)


「でぃーえっくす」「でぃーえっくす」
とかまびすしい輩が、その旗艦として推進していたのが「slack」と「zoom」
特にコロナ感染拡大により「zoom」圧力は日に日に勢いを増し「zoom推進派」は肩で風を切っていた。3月までは・・
ところが、4月に入って脆弱性が発覚し、政府機関などが使用禁止にした途端「zoom」のズの字も言わなくなった。

zoomに限らず、どのようなクラウドサービスにも、セキュリティの課題はある。ユーザーのセキュリティ意識が低いとさらに危険は増す。
・機器に高機能のセキュリティソフトを入れること
・ID、パスワードなどを慎重に受け渡し、運用すること
これらを守っていれば、安全性は上がる。


さて、実際に「オンライン呑み会」に使ってみて、ツールとしての「zoom」品質は満足のいくものだった。
映像がカクカクすることもないし、音声はクリア。
参加者の誰もが「zoom」そのものに対して「思いの外いい」「***(他社サービス)よりもいい」という評価だった。

つづく

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2020年4月11日 (土)

「個人情報は扱っていないから、僕らセキュリティは関係ないよ」

2000年~2005年頃
「パソコンのことは僕らの仕事じゃない」
という人がいた。
企業において、ようやく一人一台時代が訪れて間もない頃だ。
自分ではパソコンを使っているが、自分の仕事ではないと言い張るのである。

サトウさんが僕にシステムの発注をする。
僕が要求仕様について尋ねる。
するとサトウさんが言う

「パソコンのことは僕の仕事じゃないから任せるよ」

僕は苦笑いして、尋ねる
それじゃ、どのようなものを作ればいいんですか?
するとサトウさん

「僕らが思う通りに動いてくれればいいよ」

つまり、当時のSEはユーザーの脳みそを透視する能力が必要だったのだ。
今思えば懐かしいが、むちゃくちゃな話しだ。
今だから笑えるが、当時の僕は腹を立てていた。


2010年頃には、もうそんな声は聞かれなくなった
ところが・・
2015年以降はこれが「セキュリティ」に遷った。

誰もがパソコンを使っている。
自分のパソコンには大量の業務資料を保管している。
・売り上げ実績
・取引条件
・得意先リスト
・商品企画
・販売企画
・業務手順書

それらは企業としては秘密情報だ。
「秘密情報」というのは、ものごとを真剣に考えていない人が、責任をぼやけさせるために使う言葉で、不正競争防止法には「営業秘密」という定義がある。

クラウドで無料で利用できる便利なサービスを使い、そこに「秘密情報」を置いて会社から、自宅から、いつでも何処でも、好きなだけアクセスできる。ということは盗み放題。

そして、サトウさんが言う
「個人情報は扱っていないから、僕らセキュリティは関係ないよ」

個人情報だけが秘密だと信じて疑わない人が、企業の営業秘密の管理をおろそかにする。
身内からも悪者からも、盗み放題。
これを僕は「個人情報病」と呼ぶ。

システム担当者ならば「わかる、わかる」と言ってくれるはずだ。
しかし、システム担当者以外の人には、この危機感は伝わらない。

恐らく、2030年頃には営業秘密を守ろうという風土が根付くだろう。
そして、それまでに膨大な情報が盗まれるだろう。
そして、それを誰も気づかないだろう。

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2018年7月 3日 (火)

「アマチュアの詳しい人とプロは違うんだよ」

現在、僕の座右の銘は「アマチュアはものごを複雑にするプロこそがものごとをシンプルにできる」だが、権田さんからこう言われたのはその数年前。

「アマチュアの詳しい人とプロは違うんだよ」

その日、僕は部屋にこもり権田さんとマンツーマンの研修を受けていた。

当時、長年の「営業経験」にくわえ「コンピューターに明るい」ことを買われて「SE」人生のスタートをしたばかり。
と言えばキレイだが、実際は営業を追われ「パソコンに詳しい」という理由で拾ってもらった。

そんな僕の研修役として宛がわれたのがSEの大ベテラン権田さん。
既に指揮系統を離れ、全体の支援に回っていたが、それでも誰もが一目置く知識と経験がある。

今思えば(今よりという意味で)若かった僕は勉強する姿勢、教わる者の態度に問題があったのだと思う。

教わりながら、知っていることについては「それはやったことがあります」といった「口答え」をしていたのだ。

それは「教える側」の者として、もっとも腹が立ち「これ以上、口もききたくない」と思う態度だ。
現在、歳をとった僕は若い人を教える機会が多い。
生徒の中には「あぁそれは知っています」と、いちいちコメントする者がいる。
その都度「あのねぇ、知っているんだったら習いに来なくていいよ」と言ったりはしないが(冗談ではなく)2秒くらい息が止まる。
権田さんにしてみれば「パソコンに詳しい」という前評判を聞き、現実に僕と接してみて「こいつは勘違いしている」と思ったのだろう。


「アマチュアの詳しい人とプロは違うんだよ」
権田さんの顔が紅潮しているのをみて、はっとした。

君はパソコンには詳しいつもりかも知れないが、プロのSEとはそういうものじゃない。アマチュアでいくら詳しくても、それはプロとは次元が違うんだ。

「これを勉強しなさい」

権田さんはそう言って僕に分厚いテキストを手渡した。
表紙には「MIND-SA」とあった。
これがトランスコスモスとの出会いだ。


【まいんどえすえー】
Method of Information systems Design for System Analysis

複数案件をシステムとしていかに改善するか「解決策指向」で追求する分析・定義・設計の理論

1984年
日本システミックスが開発
これ以降、2001年度まではトランスコスモスが営業活動を行った

2002年4月1日~
システム企画研修(株)が営業をおこなっている


「MIND-SA」は1980年代に基礎を学んだホスト世代のSEでは有名な理論。
大がかりなプロジェクトの時に用いる手法。
同様の理論に「KT法」があるが、そちらは個別案件を対称とし「真の原因追及指向」で問題を追求する理論。
「解決策指向」のMIND-SAとは、出発点が異なっている。

つづく

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2017年3月14日 (火)

スマホの個室トイレさぼりを管理する空きトイレ通知システム

「大丈夫ですか?」
ドアの向こうから声がかかる。
それは総務部長のサカタの声だった。
彼が続ける
「ずいぶん長い時間おられるので心配になって見に来ました」

ここで黙っているのは得策ではない。
自分は逃げ場のない個室に居るのだ。
黙秘を続ければ、やましいことを自ら認めてしまうことになるし、本当に急病と勘違いされてドアの上に空いた隙間から、こちらを覗われるかも知れない。

あぁ大丈夫です。ちょっとお腹が痛くて、すみません
少し鼻にかかった声で応える。
できれば、正体を特定されずにこの場をやり過ごしたいという猿知恵だったが、それはすぐに浅はかなことだとわかる。

「タベイさんですか?大丈夫ならいいんです。あとで私の所に寄ってください」
サカタはかつて、部下としてタベイさんに仕えていた10歳年下の後輩だが、今や立場は逆転している。
それにしても、なぜ総務部長が来るんだ?



後にタベイさんが知ることになるそのカラクリはこうだ。
会社は数日前に「空きトイレ通知システム」を導入していた。
ドアに取り付けられていた銀色の物体が、そのセンサー。
ワイヤレス機器なので、配線は不要である。

「空きトイレ通知システム」とは、トイレとネットをIoTでつなぎ、トイレの空き情報が確認できるシステム。

IoTは「モノをインターネットにつなぐこと」
モノから収集したビッグデータを、モノ、サービスづくりに役立てるのが目的だ。
2014年8月時点で、IDC Japanは2018年に21兆円市場になるという見通しを発表していた。

当初は鉄道、自動車、社会基盤からビッグデータを得ることが主概念だったが、今や家電、そしてトイレのドアといった身近なモノをITで管理する概念になりつつある。
お出かけ先からエアコンのスイッチを入れたりする遠隔操作の宣伝文句に「IoT」が濫用されている始末だ。


空きトイレ通知システムは、富士通、伊藤忠商事などが提供を始めている。
本来は、忙しいビジネスマンがデスクのパソコンやスマホからトイレの空き状況を確認できるためのもの。
ただ、それだけではない。
個室に誰かが長時間滞在すると、管理者にメールを飛ばす機能もある。
つまり、誰かがトイレの個室で長時間休憩すると、管理者に連絡が行くシステムということになる。


内勤サラリーマンの3大さぼり要因は「ネット」「ゲーム」「たばこ」
パソコンはログ管理される時代になり、たばこは分煙による入退室管理が導入された。
すると新たな抜け道として「スマホ」による「トイレ個室」さぼりが生まれた。

どんな時代も真面目が最強ということは揺るがない。

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2017年3月12日 (日)

うんこは家でしてこい!

トイレのドアにはバネが仕込まれていて、空室の場合、個室の内側に向けて開かれている。
ドアが閉まっている場合、そこが「使用中」であることが一目瞭然だ。
昔のように、コンコンとノックして「入っていますか?」と聞くことはない。


5つある個室の4つはドアが閉まっている。
タベイさんは、足早に残り1室を確保した。
時には5つとも塞がっていることもある。
切羽詰まって、駆け込んだトイレがすべて塞がっていると、誰もが途方に暮れる。
それでも他の階へ行けばなんとかなるが、多忙な人にとっては時間が惜しい。

トイレが満室になるのは、朝一番やお昼過ぎといった人々の排便が集中する時間とは限らない。
この日も15時を回っているというのに、80%の稼働率だ。

かつてタベイさんは、朝礼が終わると競ってトイレに駆け込む若手に向かって「うんこは家でしてこい!」と活を入れたこともあった。
それは「あと10分早く起きて、ゆとりを持って1日を始める習慣を身につけろ」という意味を込めた助言だったが、その真意を汲んだ若者は皆無だった。

それが今や、トイレはタベイさんの安住の地となっている。


タベイさんはズボンを下ろして便座に腰掛けるや、スマホを取り出してゲームアプリをタップ。
お昼休みの続きに取りかかる。


ぷ~~
右となりの個室から放屁の音。
下品だな・・彼は苦虫をかみつぶすが、ここは本来、そういう場所であって、スマホを操作する場所ではない。

数分後、左となりの個室から水が流れる音がして、ドアが開く音がした。
みんな、こんな時間に本当にうんこしてるのか・・
そう独りごちるタベイさんはといえば、静かなもの。
ただ、トイレを出る時には、トイレットペーパーをカラカラと大きな音を立てて引き出し、ダミーで水を流す。
排便目的でここに居たように装うためだ。


15:20
彼のゲームは佳境に入っていた。
いつもならば、15分程度で職場に戻る。
そろそろ切り上げ時だが、いいところだからあと少し・・
そう思った時だ。

こつこつ
それはドアが反響しないよう、触れる程度のノックだ。

タベイさんは、口から心臓が飛び出しそうになる。
昔のトイレとは違い、空室を確かめるためにノックする人はいない。
そのノックは「入っていますか?」という疑問符によるものではない。
彼が経験したことのない、全く新しい事態が起きていることを瞬時に察した。


どうしたらいい?
タベイさんは、ここ数年経験のない速さで頭を回転させ「沈黙を守る」という結論を出した。
相手の出方を待った方がいい。
ヘタに声を出せば、ここに居るのがタベイだとわかってしまう。


わずか数センチのドアの向こうから、次なるアクションはない。
気配で察するに、相手は1人のようだ。
時間が過ぎる。
相手もだんまり作戦なのか?
しかし、このままでは職場に戻れない。

膠着した時間は、実際には5秒~10秒程度だったのだろうが、タベイさんにはその10倍にも感じられた。

こんっこんっ

今度はドアの板が反響した。いよいよ相手が意を決したのだ。

3月14日につづく

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2017年3月11日 (土)

スマホゲームをするために個室トイレに通うおじさん

タベイさんは定年間近のサラリーマン。
その会社での余生を閑職で過ごしている。
昔でいうならば「窓際族」だ。
だが、時は流れ今や陽の当たる窓際に閑職者を置く企業はない。
そこは、まさに日の当たる人材、役職者の場所。
彼の居場所はというと、日当たりの悪い部屋の隅っこ。


かつて、彼はその場所がお気に入りだった。
ゲームをして遊んでいても、周りにばれないからだ。
昔は現場の第一線で指揮を執り、意気揚々としていた彼だが、今や9時から5時までが埋まるだけの仕事がない。

要するに、暇で暇でしかたない。
たばこ休憩をとり、雑談を多めにして、ゆっくり仕事を進める。
それでも3時頃には、まったくすることがなくなってしまう。

そこで彼はWindowsパソコンにプレインストールされているゲームを立ち上げる。
トランプのカードをめくるだけのごくシンプルなものだが、幼少から大人になるまでコンピューターやスマホのない時代に育った彼にとっては、それでも十分にハイテクなギミックに映る。


古き良き時代ならば、彼の安住は打ち破られなかった。
ところが時代は新しく悪しき時代に変わった。
効率が極限まで追い求められ、非効率なものは「見える化」という気味悪い言葉で、白日の下にさらされる。

可視化と言えばいいものを、わざわざ「見える」という幼稚な言葉で表現することで、その強圧を包み隠している。タベイさんは鼻持ちならないと感じていた。


勤務時間中のコンピューターの挙動はすべて、監視システムで一元管理され、やがてタベイさんのコンピューターでは就業中の30%以上が、ゲームに充てられていることが「見える化」された。


その日以来、彼は主戦場をパソコンからスマホへと移した。
元々、ガラケーしか持っていなかったのだが「オレもそろそろ始めようかな」と告げたところ、アナログな亭主の珍しい申し出に、タベイさんの奥さんは即座に賛同したという。


公用のスマホはMDMという技術で、その挙動がすべて会社から監視されている。
だが私用スマホならば、その限りではない。

いつものように、今日も暇になり、彼はスマホをポケットに偲ばせ、いつもの場所に向かった。
その行く先は個室トイレだ。

いくら私用スマホが監視されていないとはいえ、デスクでゲームをやっていれば、再び咎められることは火を見るよりも明らか。
トイレの個室に逃げ込めば、さすがに監視カメラはない。

15:00
5つあるトイレの個室は4つが塞がっている。
タベイさんは誰かにとられてはならじと、慌てて部屋にカラダを滑り込ませて、ドアをロックした。

ドアには数日前から銀色の物体が取り付けられていた。

つづく

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2016年3月21日 (月)

3分でわかる「ビッグデータ」

ビッグデータという言葉が、ずいぶん前からいる居候みたいな顔をして、社会に根付いています。
本物の居候ならば、主の意に反した行動は控えるくらいのデリカシーを備えています。
しかし、こちらの居候は、主がネット絡みでおこなうこと全てを、よそで言いふらして回る厄介なものです。

今日はこの言葉について、検証します。

しらべるでは「ビッグデータ」をこう定義しています。
「位置、購買、閲覧などの膨大な情報」


企業はビッグデータを販促に活かしています。
勝手に収集してはいけませんが、あなたが承諾していれば、反則ではありません。



位置情報はGPSを搭載しているスマホ、パソコンなどで収集されます。
位置情報をどこかに送るアプリは、はじめに「位置情報を提供しますか?」と聞いてきます。
「はい」「いいえ」で選ぶならばわかりやすいですが「設定」「OK」の選択肢だったりして、分かりづらいです。

日本政府は「プレファランス(承諾)に置ける選択肢のガイドライン」を提示していませんので、分かりづらくし放題です。

撮影した写真をtwitterなどのSNSに上げる時は注意が必要です。
鎌倉の大仏を撮影してアップ。
そこに位置情報が付いていても問題ありません。
誰もが場所を知っているからです。

しかし「期間限定スイーツ」をコンビニで買ってきて自宅で写真を撮ってアップしているあなた。
注意が必要です。
どのような設定をしていようが、自宅で撮った写真をSNSに上げるのは慎重を期すところです。



購買情報はネットでモノとサービスを購入したデータ。
購入時に「同意しますか?」と言われ、面倒くさいので(というより同意しないと買わせてもらえないので)同意した覚え書きに、その承諾が含まれていることがあります。

ネットでモノを買った。音楽をダウンロードした。
それだけなのに、直後から定期的にメルマガが届くようになった。
そんな経験はないでしょうか。
その場合、覚え書きに承諾が含まれていたのです。



閲覧情報は、ブラウザーで閲覧したページ。
それぞれのWebページには、そのウェブサイトが提示する「プライバシーポリシー」のリンクがあります。
(ないWebページも多いです)
そのポリシーを読むと、閲覧情報の利用条件が謳われています。
利用を許諾しない場合、そこに説明されている方法で拒否する必要があります。

ついさっきショッピングサイトで「ノートパソコン」を探した。
すると、直後から他のウェブサイトでも「ノートパソコン」の広告だらけになる。
といった経験はないでしょうか。
その場合、プライバシーポリシーにそのことが書かれています。

ビッグデータにより、わかることは「興味と関心」だけではありません。
その他の様々なデータと紐づけて「学歴」「収入」「年齢」「性別」なども、個人を特定しないデータとして取り扱われています。


このような基礎知識をおさえたうえで、インターネットを慎重に使う分には不利益を被ることはありません。

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2014年11月25日 (火)

siriの進化 ニフティの会話君

シリが進化したと言っている。
iPhoneを使っていない人は、尻?
と思うかも知れないが、シリ(siri)はiPhoneに搭載されている音声認識の名前。
米国の人が下品な言葉として「あすほーる」という言葉を忌むように、日本人としては、この名前が常用する仕組みに命名されていることへの違和感が消えない。

こんどのシリスゴイね!

などと、往来で言おうものなら、眉をひそめられること必至だ。

iOS8では、シリが進化した。
ずいぶんと認識精度があがり、かなりの長文を一気に喋っても、しっかり正確に着いてくる。

そのシリが会話形式で相談にのってくれるという。
かつて、パソコン通信当時のニフティに「会話君」という仮想会話サービスがあった。
今は「会話がどんどんつづく君」というサービスがあるが、話題に困らないためのネタ集であり「会話君」とはまったく違う。

キーボード入力して話しかけると「会話君」がデータベースの中から、より意向に沿った文章を返してくれた。
その素っ頓狂な返事に笑った。
「会話君」がこんな答えをした。
ということを、僕らパソコン通信仲間はネタにして笑った。
それほど、仮想の仕組みが珍しかったのだ。

さて、シリの出來はどうか。
約束に則って、合い言葉で声をかける。

ヘイシリ!
「ハロー、motoさん」
(100点^^;)

最近、人生について考えるんだ。
「木崎人生についてのweb検索結果がみつかりました」
(0点)

最近、人生について考えるんだ。(再)
「よくわかりません」
(0点)

最近、人生について考えるんだ。(再さらにゆっくり)
「よくわかりません」
(0点)

人生については、自分で本を読むしかない。
つづいて、設問のハードルを下げる。

僕の悩みを聞いてくれる?
「私は質問に答える方がすきです」
(0点)

うまいこと、はぐらかされた。
女性接客のお店で、メールアドレス教えてと言ったら
「私からメールするからあなたのを教えて」
と言われて、またそれか・・
と思った時のようなものだ。

どんな質問をすればいいの?
この返事は女性の声ではなく、画面表示

以下のように指示できます:
(アプリアイコンが並んでいて"康則君に電話"といった例文が添えられている。)
(50点)

晩ご飯なにたべようかな?
「お店がたくさん見つかりました・・」
近隣の飲食店が表示される。
(50点)

そういうサービスではないと分かっていたが
やはり、話し相手になってもらうことはできなかった。

ドラえもんロボットが発売されるのが待ち遠しい。
発売目標だった2010年は、もう過ぎているぞ。

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