2023年12月26日 (火)

生成AIのある時代に生きる しらべるが選ぶ2023年の5大ニュース【1】

しらべるが選ぶ2023年の5大ニュース【1】

【1】生成AIの普及
Microsoft陣営のChatGPT日本版リリースを機にGoogleも対抗して、一般ユーザーが「しらべる」こと、企業活動における成果物*1 作成に、一気に生成AI*2 が普及した。

*1 成果物
納品・提出を前提として、検討結果をまとめた文書
IT技術者用語で、業務を受託した技術者が作るものをこう呼ぶ。
PMBOKでは「要素成果物」と「成果物」という言葉が使われる。
成果物と呼ぶものの例として、プロジェクト活動報告・プログラム仕様書・見積書・納品書・プレゼン発表資料などがある。
議事録・ユーザーから受け取った要求定義書は成果物と呼ばない。
「お金に換える・換わる文書」と考えるとよい。

*2 生成AI
Generative AI
会話形式でAIが要望に応じてくれる仕組み
文章、画像、音声、プログラムなどを生成できる人工知能(AI)


去年の5大ニュースは何を書いたかな?
そう想って「しらべるが選ぶ5大ニュース」でGoogle検索したところ、Googleの生成AIが内容を説明してくれた。
元々Googleで上位表示されているコンテンツについて、生成AIも読み込んでいるということなのだろう。
しらべるの全記事を生成AIが学習したというわけではないと想う。


【生成AI 登場の歴史】
2022年11月
OpenAI(Microsoftが出資)がChatGPT公開

2023年2月6日
Googleが会話型AIチャットサービス「Google Bard」を発表

2023年2月7日
マイクロソフトがChatGPTを搭載した「Bing」(ブラウザー)を発表

2023年3月2日
ChatGPTのAPIが日本で(日本語で)提供開始。ChatGPTブームが起きる

2023年3月14日
Googleが巨大言語モデル「PaLM」をGoogle Cloudに追加すると発表

2023年4月14日
AmazonがAWSのAPIで「Amazon Bedrock」を提供すると発表

2023年4月17日
イーロン・マスクが「トゥルースGPT」の開発を発表

2023年4月19日
Google「Bard」の利用が日本でも(英語で)始まる


2023年は一気に各社の旗色が明らかになった。
生成AI登場の激変期に、企業に属して情報セキュリティの仕事をしていたかったと想う。
相談もなく、勝手に使い始めるユーザーがいて、日々いろいろな課題が生じるだろう。

そこに「待った」をかければ
「あいつらは世の中の進歩に逆行している」
「ただで便利なものを使って何が悪い」
「経費が厳しいんだ。仕事の邪魔をするな」

そう考えたら、やっぱり、企業に属していなくてよかったと想う。
この時代では生成AIに懸念を表明することは大変だと想う。
嫌われ者を買って出ても報われない仕事が、そこにある。

しらべるが選ぶ5大ニュース

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2023年4月 8日 (土)

ChatGPTの誤りと衝撃 ChatGPTと「Google先生」との付き合い方

「5W1Hを几帳面に書かないと、求める答えは出てこない」
最初にChatGPTを使った人が抱く感想はこうなると思う。
望みの回答を引き出すには「文章力」が必要と言うことだ。


「Google先生」では、かなり曖昧に問いかけても

「もしかして・・」
といったカタチで、こちらの言葉足らずを補い、忖度して回答案を提示してくれる
使う側の文章力が問われないのが「Google先生」だ。

だが、その「Google先生」もかつて「敷居が高い」と思われた時代があった。
検索サービスが始まった頃、日本にはYAHOO!があり、そこに「Google先生」が現れた。
「Google先生」を開くと、検索窓以外はほぼ真っ白
使い手がなにか「聞かないと答えてくれない」
YAHOO!を開くと既に、賑やかなコンテンツがある。好奇心が旺盛ではない人、質問をうまく言葉にできない人も、愉しむことができる。
これは、検索サイトとポータルサイトの違いである。

いつ逆転したかはしらべていないが、しらべるを始めた2000年代初頭、日本ではYAHOO!のシェアが「Google先生」より高かった。

その後、「Google先生」が曖昧に聞いても、単語だけでも、回答を提示する能力が上がり「文章力」がない人にも敷居が下がった。


ChatGPTの特徴として、情報が誤っていても、自信満々に言い切ってくることがある。
「Google先生」ならば、自信が無い(確からしい情報が見つからない)時は、答えが出てこない。

「ネットの情報は本当とは限らない」
これは、2000年代初頭から、論客が言い続けてきたことだ。

校正やチェックが入る放送局、版元が提供する情報とは違い、裏がとれていない、検証されていない情報が多いということだ。

これが、ChatGPTにもそのまま当てはまる。
「ChatGPTの情報は本当とは限らない」
「Google先生」との違いは、それを堂々と言い切るところだ。
そして「朝令暮改」 質問する度に答えが変わっていくのも潔い。


一礼を挙げよう。
以下は「V・ファーレン長崎のクラブマスコット ヴィヴィくん についてに教えて」に対するChatGPTの回答の一部だ。
日を変えて3度質問している。それぞれ回答は異なる。

(以下引用)
【1度め】
青い毛並みを持つフクロウのキャラクターです。長崎には、昔からフクロウを神聖な存在として崇める文化があり、ヴィヴィくんはそれを象徴しています。

【2度め】
Vファーレン長崎の公式キャラクターである「ヴィヴィくん」は、2015年に誕生しました。デザインはちばてつや氏が手がけており、キャラクターイメージは「豊かな自然と海を抱く、人と人とのつながりや、元気で活気あふれるまち」をモチーフにしています。

【3度め】
ヴィヴィくんは、オウムのような形をしたキャラクターで、長崎のシンボルであるグラバー園に住んでいます。名前の「ヴィヴィ」は、V・ファーレン長崎の略称「V・Varen」から取られています。
(引用おわり)

私のしらべが確かならば・・・
ヴィヴィくんは九州シカ、オシドリをモチーフにしたキャラクター
初お目見えは2010年5月5日である
ちばてつや氏というのは「チャーシューメーン」の、あのちばてつやさんだろうか
ちなみに、作者については質問する度に替わっている。
「グラバー園に住んでいる」のは知らなかった・・


こうした「堂々と誤りを返す」(人によっては「嘘を言う」)ところを切り取ると「ChatGPTは怪しい」と揶揄することもできるだろう。
だが、その回答に唸った事例も挙げておこう。

現在、計画を進めている「奥多摩神社巡り」について「奥多摩駅から6時間で、山歩きと神社巡りをするお勧めのコースを教えて」と質問した。

すると、時系列の箇条書きで山歩き、神社巡り、風光明媚な場所のお勧め、交通機関と所要時間までを記したモデルコースが一瞬にして返ってきた。

それまで、旅行誌や山歩きの専門誌でコースを研究していたが、まったく思いつかなかった、なかなかチャレンジングなコースだった。

こうしてChatGPTから得た回答は、そこから「Google先生」や書籍等で事実と照らしていく。
ChatGPTの回答をそのまま鵜呑みにはできないが、新たなる発想を得るきっかけにはなりそうだ。

「君に一生ついていくよ」
とは言わなかったが、サムアップと賛辞の謝辞を返した。ChatGPTがユーザーのコメントを、今後の回答にどう活かして行くのかはわからないが、そこに参加するワクワク感がある。


「V・ファーレン長崎が2023シーズン終了後、J1昇格する確率は?」
といった「未来の予測」はきっぱり、できないと言われた。
だが、ひとつの真実として確定している要因を重ね合わせて出す答えには、目を見張るものがある。

パソコンとスマホ、それぞれ、最も目立つ位置にアイコンを置いた。
これから、仲良くつきあっていきたい。

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2022年6月28日 (火)

USBメモリー専門家としての意見

■論評1
今どきUSBで持ち歩くとは驚き。クラウドの活用を考えてはどうか
 ↓↓
私の意見
この論評をした方は、組織において、個人情報がどのように運用されているかという実体験がないのだと想う。
企業や自治体といった大抵の組織は、個人情報をデータベース化している。
少し小難しくなるが、以下はしらべるにおける「データベース」の定義である。

それぞれの件数が多い複数の項目の情報を蓄積しておき、必要な時に検索して利用できるようにした情報群

個人がエクセルファイルでつくるブック(ファイル)は、データ項目がデータベースと同じだったとしても、他のコンピューターと一元的に共用できないのでデータベースとは呼ばない。

個人情報を"格納する"データベースは社内ネットワーク(イントラネット)にあるサーバー(※1)に置くのが基本。その方が安全だからだ。
そこを飛ばして、いきなり、クラウド(インターネット上の社外サーバー)に置くのを検討することはないと想う(例外を*以下に後述)
企業のセキュリティ担当者が聞いたら、USBの代替案が「クラウドの活用」という文脈の不思議さに戸惑うと想う。

企業にとって「個人情報」は機密性の位置づけが高い。
「個人情報漏洩事案」は、メディアとSNSで「叩いてよし!」という共通理解がある日本社会では、その事故は最も効率よく企業価値を下げる手段だからだ。

ただでさえ、一般社員はなんでもクラウドに置きたがる。
しかも、そのクラウドは会社指定のものではなく"タダで使い放題"の「自前クラウド」が多い。

一定のセキュリティ意識がある会社の場合「会社公認クラウド」が用意される。ただし、そこでは(データのダウンロードなどの)行動が会社から捕捉される。

一方「自前クラウド」に置けば、そのデータを個人のパソコンにコピーできる。
その目的はなんなのか?ということだ。

従って、個人情報を社内(イントラネット)に置かずに、いきなりクラウドに置くという発想はないのである。


*ただし「イントラネットにサーバーを立てる」ことが難しい組織もある。
セキュリティに詳しい担当者がいない、または、予算が乏しい、中小企業や自治体では、一足飛びの「クラウド置き」は有りかも知れない。

世の中には「世界最強レベル」のセキュリティを謳うクラウド(※2)があり、その方が一企業のイントラネット内よりも強力ということもあるからだ。

そうした堅牢なクラウドでは、データのダウンロードや編集などの履歴を会社(システム担当者)側が捕捉できて、社員による犯罪防止の抑止力もある。


尼崎市の案件「USBメモリーに個人情報」は、担当者がデータベース等からダウンロードしたコピーをUSBメモリーに入れて、社外に持ち歩いていたということだろう。

なんで、そんなことをするのかというと、恐らく使い勝手がいいからだ。データをUSBメモリーに入れておけば、持ち歩くパソコン、会社事務所のパソコン、自宅のパソコンとあちこちで使える。
データを加工して資料を作る時、元のデータ(全項目)が手元にあった方が便利なのである。


ベネッセ事案のように個人情報を転売する事案が起きると、会社が大打撃を受けるので、良識ある企業は「記憶媒体に営業秘密を入れて社外持出」することを禁止している。

尼崎事案では次のいずれかが考えられる。
(1)持出禁止の規則がなかった
(2)例外許可措置の取り決めがあり、許可を受けて持ち出していた
(3)担当者が規則違反をしていた

※1 組織の規模によりサーバーはパソコンということもある
※2 ここでいうのはネットワークストレージ


■論評2
USBメモリーにかけていたパスワードの桁数を話すのはセキュリティ意識が低い
 ↓↓
私の意見
USBメモリーのパスワード桁数を制御できるシステムはない。

パスワードの桁数、複雑性の設定は、ユーザーの意識にかかっている。
今回、会見で述べられていたパスワードの桁数・複雑性は割と意識が高い方だ。
会見した者は「しっかりとやっています」と言いたかったのだろう。

仮にUSBメモリーを拾った人が「悪者」だったとして、会見でばらしたらパスワードを解読しやすくなるという批判は当たらない。
悪者がパスワード解析ツールを使えば(発表された桁数ならば)数時間で解読できる。

情報セキュリティ用語集

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2022年6月25日 (土)

USBメモリーを4000個廃棄した

尼崎市民の個人情報が入ったUSBメモリーを紛失したが、翌日見つかったという案件は、NHKニュースを初めとして、広くメディアが報道した。

USBメモリー専門家の出番である。
(なぜ出番なのかは後述)
世の中にUSBメモリーを仕事で使う人、管理している人は大勢いると想うが「企業の全USBメモリーを使用禁止したうえ、4000個のUSBメモリーを回収して廃棄した」経験を持つのは僕だけではないだろうか。

誰もやりたがらない仕事を押しつけられて、任務を全うするまでの日々は長く辛かったが、本題を外れるので、ここでは触れない。


初めに「USBメモリー」という用語について触れておきたい。
「USBメモリー」というのは「パソコンのUSB端子に挿して使う記憶媒体」のことだ。
パソコンにUSB端子が初めて装備されたのは1997年だが、当初はあまり使い途のないインターフェースだった。

USBメモリーが登場したのは2000年。
僕がUSBメモリーを初めて手にしたのは2001年。
得意先の営業マンが社名入りのノベルティをプレゼントしてくれた。
その営業マンは自分用はもらえないそうで、僕に渡した品を羨ましそうに見ていた。
思わず僕が「あげようか」と言ったら、今にも受け取りそうな顔で「いやいや」と苦笑いしていたのを思い出す。


当時、1.25MBのFD(フロッピーディスク)でデータをやりとりしていたサラリーマンに、容量が大きいUSBメモリーは一気に広まった。
後に情報漏洩のメイン・ツールになるとは、誰も想っていなかったので「買い放題」の「使い放題」
中には私品を会社に持ち込んで使う者あれば、恐らくその逆もあっただろう。
世の中に「情報セキュリティ」「法令遵守」の意識が乏しかった時代のことだ。


世の中の人が最初に出会った「USB機器」が「USBメモリー」
当初から大半の人が「USB(ゆーえすびー)」と省略して呼んでいた。
その名残で、ITリテラシーが低い層に今もこれを「USB」と呼ぶ人が多い。

しかし、USB機器(USBデバイス)はメモリーだけではない。
ハードディスクなどの記憶機器、DVDなどの記憶媒体を使うメディアドライブ、マウス、キーボード、イヤホンマイクといった周辺機器。USB給電を利用したデスクライトや扇風機まである。
従ってここでは「USB」と省略せず「USBメモリー」と表記する。


■尼崎USBメモリー事案 時系列の記録

2022年6月23日
尼崎市発表
・46万人余の個人情報が入ったUSBメモリーがなくなった
・業務委託先会社の担当者がUSBメモリーに個人情報データを入れて持ち歩いていて、紛失
・USBメモリー機器はパスワードを入れるタイプである
・パスワードは13桁

2022年6月24日
尼崎市発表
・会社の担当者が改めて探したところ見つかった


冒頭「USBメモリー専門家」の出番としたのは、ウェブ記事、ニュースショーの論評の中で「それは違うのでは?」と想った以下2つの点について述べるためである。

論評1
今どきUSBで持ち歩くとは驚き。クラウドの活用を考えてはどうか

論評2
USBメモリーにかけていたパスワードの桁数を、会見で話したのはセキュリティ意識が低い

つづく

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2020年4月28日 (火)

zoom! zoom!

そうだ、オンライン呑み会、やろう!
そう思い立ってから、board meeting ツールについての情報収集にはいった。
その中でも第一候補はzoom。
これまで、幾多の類似サービスがあったが、どれも、時代の流れを作るには至っていない。
そんな中、コロナ感染問題があったとはいえ、一気にデファクト・スタンダード(事実上の標準)に上り詰めたzoomには、そうなり得た理由があるはずだ。


■zoomに関する記録
2011年
Zoom Video Communications(米国)設立

2013年
「Zoom」提供開始

2019年12月
1日の利用者1000万人

2020年3月
1日の利用者2億人(3か月で20倍に増加)

2020年4月1日
Zoomの脆弱性が報道され始める

2020年4月8日
台湾政府が使用禁止を発表


■zoomを禁止している組織
Google
NASA
台湾政府
ドイツ外務省

■セキュリティ上の問題点
・Zoom会議に非招待者が侵入
・パソコン乗っ取り(OSの資格情報が盗まれる)
・パソコンカメラの乗っ取り(盗撮)
・データをFacebookに送信(後に機能削除)
・画面に集中していない人を管理者が把握できる「アテンショントラッキング」機能(4月2日に削除)


「でぃーえっくす」「でぃーえっくす」
とかまびすしい輩が、その旗艦として推進していたのが「slack」と「zoom」
特にコロナ感染拡大により「zoom」圧力は日に日に勢いを増し「zoom推進派」は肩で風を切っていた。3月までは・・
ところが、4月に入って脆弱性が発覚し、政府機関などが使用禁止にした途端「zoom」のズの字も言わなくなった。

zoomに限らず、どのようなクラウドサービスにも、セキュリティの課題はある。ユーザーのセキュリティ意識が低いとさらに危険は増す。
・機器に高機能のセキュリティソフトを入れること
・ID、パスワードなどを慎重に受け渡し、運用すること
これらを守っていれば、安全性は上がる。


さて、実際に「オンライン呑み会」に使ってみて、ツールとしての「zoom」品質は満足のいくものだった。
映像がカクカクすることもないし、音声はクリア。
参加者の誰もが「zoom」そのものに対して「思いの外いい」「***(他社サービス)よりもいい」という評価だった。

つづく

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2020年4月11日 (土)

「個人情報は扱っていないから、僕らセキュリティは関係ないよ」

2000年~2005年頃
「パソコンのことは僕らの仕事じゃない」
という人がいた。
企業において、ようやく一人一台時代が訪れて間もない頃だ。
自分ではパソコンを使っているが、自分の仕事ではないと言い張るのである。

サトウさんが僕にシステムの発注をする。
僕が要求仕様について尋ねる。
するとサトウさんが言う

「パソコンのことは僕の仕事じゃないから任せるよ」

僕は苦笑いして、尋ねる
それじゃ、どのようなものを作ればいいんですか?
するとサトウさん

「僕らが思う通りに動いてくれればいいよ」

つまり、当時のSEはユーザーの脳みそを透視する能力が必要だったのだ。
今思えば懐かしいが、むちゃくちゃな話しだ。
今だから笑えるが、当時の僕は腹を立てていた。


2010年頃には、もうそんな声は聞かれなくなった
ところが・・
2015年以降はこれが「セキュリティ」に遷った。

誰もがパソコンを使っている。
自分のパソコンには大量の業務資料を保管している。
・売り上げ実績
・取引条件
・得意先リスト
・商品企画
・販売企画
・業務手順書

それらは企業としては秘密情報だ。
「秘密情報」というのは、ものごとを真剣に考えていない人が、責任をぼやけさせるために使う言葉で、不正競争防止法には「営業秘密」という定義がある。

クラウドで無料で利用できる便利なサービスを使い、そこに「秘密情報」を置いて会社から、自宅から、いつでも何処でも、好きなだけアクセスできる。ということは盗み放題。

そして、サトウさんが言う
「個人情報は扱っていないから、僕らセキュリティは関係ないよ」

個人情報だけが秘密だと信じて疑わない人が、企業の営業秘密の管理をおろそかにする。
身内からも悪者からも、盗み放題。
これを僕は「個人情報病」と呼ぶ。

システム担当者ならば「わかる、わかる」と言ってくれるはずだ。
しかし、システム担当者以外の人には、この危機感は伝わらない。

恐らく、2030年頃には営業秘密を守ろうという風土が根付くだろう。
そして、それまでに膨大な情報が盗まれるだろう。
そして、それを誰も気づかないだろう。

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2018年7月 3日 (火)

「アマチュアの詳しい人とプロは違うんだよ」

現在、僕の座右の銘は「アマチュアはものごを複雑にするプロこそがものごとをシンプルにできる」だが、権田さんからこう言われたのはその数年前。

「アマチュアの詳しい人とプロは違うんだよ」

その日、僕は部屋にこもり権田さんとマンツーマンの研修を受けていた。

当時、長年の「営業経験」にくわえ「コンピューターに明るい」ことを買われて「SE」人生のスタートをしたばかり。
と言えばキレイだが、実際は営業を追われ「パソコンに詳しい」という理由で拾ってもらった。

そんな僕の研修役として宛がわれたのがSEの大ベテラン権田さん。
既に指揮系統を離れ、全体の支援に回っていたが、それでも誰もが一目置く知識と経験がある。

今思えば(今よりという意味で)若かった僕は勉強する姿勢、教わる者の態度に問題があったのだと思う。

教わりながら、知っていることについては「それはやったことがあります」といった「口答え」をしていたのだ。

それは「教える側」の者として、もっとも腹が立ち「これ以上、口もききたくない」と思う態度だ。
現在、歳をとった僕は若い人を教える機会が多い。
生徒の中には「あぁそれは知っています」と、いちいちコメントする者がいる。
その都度「あのねぇ、知っているんだったら習いに来なくていいよ」と言ったりはしないが(冗談ではなく)2秒くらい息が止まる。
権田さんにしてみれば「パソコンに詳しい」という前評判を聞き、現実に僕と接してみて「こいつは勘違いしている」と思ったのだろう。


「アマチュアの詳しい人とプロは違うんだよ」
権田さんの顔が紅潮しているのをみて、はっとした。

君はパソコンには詳しいつもりかも知れないが、プロのSEとはそういうものじゃない。アマチュアでいくら詳しくても、それはプロとは次元が違うんだ。

「これを勉強しなさい」

権田さんはそう言って僕に分厚いテキストを手渡した。
表紙には「MIND-SA」とあった。
これがトランスコスモスとの出会いだ。


【まいんどえすえー】
Method of Information systems Design for System Analysis

複数案件をシステムとしていかに改善するか「解決策指向」で追求する分析・定義・設計の理論

1984年
日本システミックスが開発
これ以降、2001年度まではトランスコスモスが営業活動を行った

2002年4月1日~
システム企画研修(株)が営業をおこなっている


「MIND-SA」は1980年代に基礎を学んだホスト世代のSEでは有名な理論。
大がかりなプロジェクトの時に用いる手法。
同様の理論に「KT法」があるが、そちらは個別案件を対称とし「真の原因追及指向」で問題を追求する理論。
「解決策指向」のMIND-SAとは、出発点が異なっている。

つづく

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2017年3月14日 (火)

スマホの個室トイレさぼりを管理する空きトイレ通知システム

「大丈夫ですか?」
ドアの向こうから声がかかる。
それは総務部長のサカタの声だった。
彼が続ける
「ずいぶん長い時間おられるので心配になって見に来ました」

ここで黙っているのは得策ではない。
自分は逃げ場のない個室に居るのだ。
黙秘を続ければ、やましいことを自ら認めてしまうことになるし、本当に急病と勘違いされてドアの上に空いた隙間から、こちらを覗われるかも知れない。

あぁ大丈夫です。ちょっとお腹が痛くて、すみません
少し鼻にかかった声で応える。
できれば、正体を特定されずにこの場をやり過ごしたいという猿知恵だったが、それはすぐに浅はかなことだとわかる。

「タベイさんですか?大丈夫ならいいんです。あとで私の所に寄ってください」
サカタはかつて、部下としてタベイさんに仕えていた10歳年下の後輩だが、今や立場は逆転している。
それにしても、なぜ総務部長が来るんだ?



後にタベイさんが知ることになるそのカラクリはこうだ。
会社は数日前に「空きトイレ通知システム」を導入していた。
ドアに取り付けられていた銀色の物体が、そのセンサー。
ワイヤレス機器なので、配線は不要である。

「空きトイレ通知システム」とは、トイレとネットをIoTでつなぎ、トイレの空き情報が確認できるシステム。

IoTは「モノをインターネットにつなぐこと」
モノから収集したビッグデータを、モノ、サービスづくりに役立てるのが目的だ。
2014年8月時点で、IDC Japanは2018年に21兆円市場になるという見通しを発表していた。

当初は鉄道、自動車、社会基盤からビッグデータを得ることが主概念だったが、今や家電、そしてトイレのドアといった身近なモノをITで管理する概念になりつつある。
お出かけ先からエアコンのスイッチを入れたりする遠隔操作の宣伝文句に「IoT」が濫用されている始末だ。


空きトイレ通知システムは、富士通、伊藤忠商事などが提供を始めている。
本来は、忙しいビジネスマンがデスクのパソコンやスマホからトイレの空き状況を確認できるためのもの。
ただ、それだけではない。
個室に誰かが長時間滞在すると、管理者にメールを飛ばす機能もある。
つまり、誰かがトイレの個室で長時間休憩すると、管理者に連絡が行くシステムということになる。


内勤サラリーマンの3大さぼり要因は「ネット」「ゲーム」「たばこ」
パソコンはログ管理される時代になり、たばこは分煙による入退室管理が導入された。
すると新たな抜け道として「スマホ」による「トイレ個室」さぼりが生まれた。

どんな時代も真面目が最強ということは揺るがない。

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2017年3月12日 (日)

うんこは家でしてこい!

トイレのドアにはバネが仕込まれていて、空室の場合、個室の内側に向けて開かれている。
ドアが閉まっている場合、そこが「使用中」であることが一目瞭然だ。
昔のように、コンコンとノックして「入っていますか?」と聞くことはない。


5つある個室の4つはドアが閉まっている。
タベイさんは、足早に残り1室を確保した。
時には5つとも塞がっていることもある。
切羽詰まって、駆け込んだトイレがすべて塞がっていると、誰もが途方に暮れる。
それでも他の階へ行けばなんとかなるが、多忙な人にとっては時間が惜しい。

トイレが満室になるのは、朝一番やお昼過ぎといった人々の排便が集中する時間とは限らない。
この日も15時を回っているというのに、80%の稼働率だ。

かつてタベイさんは、朝礼が終わると競ってトイレに駆け込む若手に向かって「うんこは家でしてこい!」と活を入れたこともあった。
それは「あと10分早く起きて、ゆとりを持って1日を始める習慣を身につけろ」という意味を込めた助言だったが、その真意を汲んだ若者は皆無だった。

それが今や、トイレはタベイさんの安住の地となっている。


タベイさんはズボンを下ろして便座に腰掛けるや、スマホを取り出してゲームアプリをタップ。
お昼休みの続きに取りかかる。


ぷ~~
右となりの個室から放屁の音。
下品だな・・彼は苦虫をかみつぶすが、ここは本来、そういう場所であって、スマホを操作する場所ではない。

数分後、左となりの個室から水が流れる音がして、ドアが開く音がした。
みんな、こんな時間に本当にうんこしてるのか・・
そう独りごちるタベイさんはといえば、静かなもの。
ただ、トイレを出る時には、トイレットペーパーをカラカラと大きな音を立てて引き出し、ダミーで水を流す。
排便目的でここに居たように装うためだ。


15:20
彼のゲームは佳境に入っていた。
いつもならば、15分程度で職場に戻る。
そろそろ切り上げ時だが、いいところだからあと少し・・
そう思った時だ。

こつこつ
それはドアが反響しないよう、触れる程度のノックだ。

タベイさんは、口から心臓が飛び出しそうになる。
昔のトイレとは違い、空室を確かめるためにノックする人はいない。
そのノックは「入っていますか?」という疑問符によるものではない。
彼が経験したことのない、全く新しい事態が起きていることを瞬時に察した。


どうしたらいい?
タベイさんは、ここ数年経験のない速さで頭を回転させ「沈黙を守る」という結論を出した。
相手の出方を待った方がいい。
ヘタに声を出せば、ここに居るのがタベイだとわかってしまう。


わずか数センチのドアの向こうから、次なるアクションはない。
気配で察するに、相手は1人のようだ。
時間が過ぎる。
相手もだんまり作戦なのか?
しかし、このままでは職場に戻れない。

膠着した時間は、実際には5秒~10秒程度だったのだろうが、タベイさんにはその10倍にも感じられた。

こんっこんっ

今度はドアの板が反響した。いよいよ相手が意を決したのだ。

3月14日につづく

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2017年3月11日 (土)

スマホゲームをするために個室トイレに通うおじさん

タベイさんは定年間近のサラリーマン。
その会社での余生を閑職で過ごしている。
昔でいうならば「窓際族」だ。
だが、時は流れ今や陽の当たる窓際に閑職者を置く企業はない。
そこは、まさに日の当たる人材、役職者の場所。
彼の居場所はというと、日当たりの悪い部屋の隅っこ。


かつて、彼はその場所がお気に入りだった。
ゲームをして遊んでいても、周りにばれないからだ。
昔は現場の第一線で指揮を執り、意気揚々としていた彼だが、今や9時から5時までが埋まるだけの仕事がない。

要するに、暇で暇でしかたない。
たばこ休憩をとり、雑談を多めにして、ゆっくり仕事を進める。
それでも3時頃には、まったくすることがなくなってしまう。

そこで彼はWindowsパソコンにプレインストールされているゲームを立ち上げる。
トランプのカードをめくるだけのごくシンプルなものだが、幼少から大人になるまでコンピューターやスマホのない時代に育った彼にとっては、それでも十分にハイテクなギミックに映る。


古き良き時代ならば、彼の安住は打ち破られなかった。
ところが時代は新しく悪しき時代に変わった。
効率が極限まで追い求められ、非効率なものは「見える化」という気味悪い言葉で、白日の下にさらされる。

可視化と言えばいいものを、わざわざ「見える」という幼稚な言葉で表現することで、その強圧を包み隠している。タベイさんは鼻持ちならないと感じていた。


勤務時間中のコンピューターの挙動はすべて、監視システムで一元管理され、やがてタベイさんのコンピューターでは就業中の30%以上が、ゲームに充てられていることが「見える化」された。


その日以来、彼は主戦場をパソコンからスマホへと移した。
元々、ガラケーしか持っていなかったのだが「オレもそろそろ始めようかな」と告げたところ、アナログな亭主の珍しい申し出に、タベイさんの奥さんは即座に賛同したという。


公用のスマホはMDMという技術で、その挙動がすべて会社から監視されている。
だが私用スマホならば、その限りではない。

いつものように、今日も暇になり、彼はスマホをポケットに偲ばせ、いつもの場所に向かった。
その行く先は個室トイレだ。

いくら私用スマホが監視されていないとはいえ、デスクでゲームをやっていれば、再び咎められることは火を見るよりも明らか。
トイレの個室に逃げ込めば、さすがに監視カメラはない。

15:00
5つあるトイレの個室は4つが塞がっている。
タベイさんは誰かにとられてはならじと、慌てて部屋にカラダを滑り込ませて、ドアをロックした。

ドアには数日前から銀色の物体が取り付けられていた。

つづく

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