2020年8月27日 (木)

コーヒースカッシュ(令和初頭)

本当に頼むんですか?

ぎっしりと書かれた数あるメニューの中から選んだコーヒースカッシュを選んだ僕に彼女はいう。
(博多ではずるい人に「こすかぁ」と言うが、以下、長いのでコスカと呼ぶ)
そこで、僕はこの店に来て初めて、彼女との会話に臨むことにした。

moto え?だってメニューに載ってるでしょ
店員 いや、でも頼む人いないですよ

想定していなかった彼女の応戦。一瞬考えたが、もう頭の中にコスカのイメージができていた。ここはひるまずにいこう

moto え?だって載ってるってことは頼めるんですよね?
店員 ちょっと聞いてきます

そういうと彼女はメニューを持って厨房へ帰っていく。まさかコスカの"スカ"の部分が品切れとか、仕込みに3時間かかる・・ということはあるまい。断る理由はないはずだが。
まさか、奥から前掛けをした店主が出てきて「これは常連さんしか頼めないメニューなんです」ということはないだろう。
当時でも「裏メニュー」という概念は存在したが、明確に認知された言葉は無かった。そもそも、メニューに載せている時点で裏じゃないし。

ランチタイムは過ぎているが、店内は7割方埋まっていて、サラリーマンたちが黙々とコミックに目を落としている。
(おまいら、仕事はいいのか?)
と突っ込んでいると彼女が戻ってきた。

店員 できるそうです

そりゃそうだろと思いつつ、にっこり笑って、じゃお願いしますと返す。すると彼女はまだ食い下がる

店員 まずいですよ
(おいおい)
苦笑しながらも、有無を言わせずお願いしますと突っぱねる
彼女は「後悔しても知らないからね」とは言わず、すごすごと引き上げていった。


なぜこんな30年前の昔話を思い出したかというと、2020年夏、コスカにはまったからだ。
近年、炭酸水はブームの頃を過ぎて、我々日本人の生活に定着した。
2005年にバルセロナに行った時、下調べに読んだ旅行ガイドで「スペインではスーパーで売っている水は炭酸入りとそうでないものがある」と知った。
当時、日本では炭酸飲料といえば、甘味のはいった清涼飲料水を指した。
日常的に味けない炭酸水を飲むとは、スペイン人はずいぶん酔狂な人達だなと思ったが「アグアシンガス(炭酸なし)」と「アグアコンガス(炭酸入り)」を単語帳に加えた。

バルセロナに着いた日、エル・コルテ・イングレスで「ドンデエスタアグアシンガス?」とグラディオラみたいなおじさんに尋ねたら「やるな東洋の兄ちゃん」という顔をされたのが誇らしかった。

それから15年。日本でも炭酸水を生活習慣に取り入れる人が増えた。スーパーでは当たり前のように炭酸水と普通の水が並べて売られている。2015年に飲料としての炭酸水を扱った書籍が増えており、この習慣が定着したのは2015年頃と推察する。


2020年4月、コロナの影響で在宅勤務が始まった。
冷蔵庫から冷えているコーヒーを定常的に確保できる環境になると、コーヒーの摂取量が増えた。そこにあると、つい水代わりに飲んでしまう。
「コーヒーは1日3杯まで」と決めている。摂りすぎは良くない。
そんな時に博多のコスカを思い出した。
そうだ!炭酸水で割ってみよう

変な味だった
数年前、体を温めるには生姜がイイと聞いて、ホットコーヒーに生姜を入れていた時期があるが、あの時の生姜コーヒーに似ている。
でも悪くない。むしろイイ。
これならば、がぶがぶ飲んでも(飲まないけど)コーヒーの量を抑えられる。

それ以来、冷蔵庫にはコーヒーと炭酸水を並べて常備するようになった。
炭酸水を飲むという習慣が日本に定着する25年前、博多でコスカをメニューに出していた喫茶店はとても前衛的だったと思う。
その店のコスカはコーヒーが炭酸で割られていて、レモンの輪切りがグラスにはまっていた。サクランボは付いていなかった。

ほら、まずかったでしょ
とレジで450円を払う時、彼女に突っ込まれたかどうかは記憶が無い。

おわり

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2020年8月26日 (水)

コーヒースカッシュ(昭和晩年)

本当に頼むんですか?
ウェイトレスが言う

バブルが弾けて間もない頃、僕は外回りの営業マンだった。
景気の影響は時間をかけて、じわじわと広がっていく。
バブルが弾けたと言っても、その影響はすべての人へ一斉に及ぶわけではなく、中小企業、アルバイトといった基盤の弱いところから、生活を蝕み始める。当時まだ非正規という概念はない。世の中は悲痛に暮れる人とそうでない人に分かれていた。それはコロナ禍の今に似ている。

博多の繁華街から外れたその喫茶店は、昼食を取り損ねたサラリーマンで溢れている。いや、もしかすると、営業の合間に休憩をとっているのかも知れない。
そこは今でいうならば、いわゆる「漫画喫茶」
壁じゅうに設えた本棚にはぎっしりとコミックスの単行本が並んでいる。
順番に並べると背見出しが絵になっている両さん。サラリーマンのバイブルだった本宮ひろしの「俺の空」皆が好きな漫画はたいてい揃っていた。

喫茶店として当時は当たり前だった、一軒だけの個人経営。いわゆるカフェではない。
小ぶりな古本屋に匹敵する蔵書量もさることながら、店の人気の秘密はそのメニューの豊富さにあった。

組紐で閉じられた木製表紙のメニューを開くと、手書きの紙を厚手のビニルに収めたファイル型のお品書き。
ハンバーグ、ナポリタンやピラフといった食事、ホット、れいこーやクリームソーダといった飲み物が、ページ毎に分類されて整然と並ぶ。

常連客はメニューも見ずに「いつもの」お気に入りを頼む。
いつもならば、アイスコーヒーお願いしますとメニューも開かずに言うところだが、その日、僕は何か新しいことをしたい気分だったのだろう。
ちょっと見せてください。と言ってメニューを受け取る。

ジーパンとTシャツにエプロンをかけているウェイトレスは、腰掛けのアルバイトというよりは本職の店員なのだろう。あちこちで馴染みの客に声をかけられ、厨房に潜んでいる店主とも親しげだ。

彼女はその場に留まり、僕の様子を窺っている。
「早く決めなさいよ、忙しいのよ」というプレッシャーを受けながら、飲み物のページをめくる。僕はそこに見慣れぬ字を読んだ。

他では見たことがない、人生初のメニューだった。
コーヒーとレモンスカッシュを混ぜたようなものだろうか。
味が想像できない。ただ、美味しそうとは思えない。
それでも、いつものことよりも初めての体験を選びたい。
僕はそうやって生きてきたし、それでたくさん失敗もした。だが、喫茶店の飲み物で失敗しても死にはしない。

このコーヒースカッシュってできるんですか?

ウェイトレスは今で言うならば「はぁっ」というリアクションをした後、メニューを受け取り、蔑んだような目でこう続けた。

本当に頼むんですか?

困り果てた目ではない
「人と違うことをするなよ」という軽蔑の目だ
これが僕が常連ならば「いやだぁmotoさん、これはダメよぉ」となるのだろうが、僕はこの店ではまだそこまでの人間関係を築いていない。
結局、博多を離れるまで築かなかったが。
どれくらい通えば人間関係を築けるのかというと、それは以下の2つのパターンに分かれる。

1.対面カウンターの場合 2~3回
2.テーブルの場合 4~5回

とても学会で発表できるレベルではないが。
対面カウンターを設える場合、元々、店主は客との関係を築きたいと思っている。接している時間が長く、互いを知ることができる。
テーブルの場合、接する時間が限られる分、時間がかかるというだけ。いずれにせよ、客の側に「常連客と思われたい」「頻度高く利用したい」という気持ちがあれば、店主が人間嫌いという場合を除き、人間関係を築くことはできる。

つづく

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2020年6月24日 (水)

僕がカップ麺会社の企画部に勤めていたら(3)

次に「ソース」を投入
既に麺が減っていることと、塩分を抑えることを考慮して、3分の1ほどは残す
全体に満遍なくかけるのではなく、できるだけ「ソース地帯」と「非ソース地帯」をまだらにする(東海林さだおかっ)
混ぜるなんてもっての外だ

僕は食べ物を混ぜる人を信用しない\^^)オイオイ
自分だけの皿であれば、どれだけ混ぜてもいい
あなたが、美味しく食べられることに、僕はコミットしない
問題なのは、会食において、僕も食べる皿の時だ

自分はずっと混ぜて育ってきた
混ぜたほうがいいに決まっている
混ぜるという作業を皆さんの代わりにやっている

自分は正しい!というその揺らがない信念が僕を戸惑わせる


ソースがかかったところで
・ソース地帯
・非ソース地帯
これにフランクで×2
4パターンの味を楽しむ。
ここまで合計6パターン

最後に「ふりかけ」に行く
ふりかけは75%を「ソース地帯」に投下
そこだけが「企画担当者の意図した味」
なるほど、この味を狙ったんだな
残りは「非ソース地帯」つまり麺とふりかけのみ

こうして、カップ焼そばは1回の食事で8パターンのバリエーションを楽しむ。
この楽しさはコンビニ弁当や、外食のあらゆるメニューでもお目にかかれない。自分だけのものだ。



僕がカップ麺会社の企画部に勤めていたら、こんな焼そばを作る
・麺そのものの味、コシにこだわる
・ソースは量少なめ
・ふりかけはカリカリ食感の材料を使う。青のりは入れない
・フランクなどを自分でトッピングするため麺と蓋の距離を離す

1度は出してみたいのは「麺だけの焼そば」
素うどんならぬ「素焼きそば」
キャベツも要らない
ソース入れなきゃ、今でもできるのだが、具材・ソースにかかるコストをすべて麺に投入して、実売150円以下で勝負してみたい。

いつの間にか、勝負師になってしまったぜ

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2020年6月23日 (火)

もしも、僕がカップ麺会社の企画部に勤めていたら(2)

3分?
5分?
お前もか、評判屋の塩焼そば

「評判屋の塩焼そば」は、まいばすの定番商品
安い!多い!美味い!
だが、君もその他大勢のやきそば達と同じ過ちを犯しているぞ

カップやきそばにお湯を注いだ、まさにこのタイミングで「作り方」や「メーカーの住所」を読む人だどれだけいるのだろうか?
今、この視界にとらえた映像の中で、最も求められている情報は何か?
メーカーの担当者は考えないのだろうか
君たち、日頃、自分で自分の商品、食べてるか?
と言いたい(岸本葉子か)

その情報はとてもささやかに表現されている
僕にはいつも、それを見つけることが難しい



このタイミングで僕の脳内には、こういう映像が浮かんでいる



気持ちが昂ぶりすぎて、横に倒したマクドナルドみたいになってしまったが、僕が欲している情報はこの数字に尽きる。


さて、蓋を剥がしていよいよ食べ始める
(あ、省略しましたがお湯は切ってます。お湯の入ったままラーメンで食べるというオチではないです)

まず、初めにフランクフルトから
いつ、入ったんだ?フランク!
そう。黙っていたけれど、実はお湯を入れる前に買い置きのフランクフルトを3本入れておいた
もちろん3という数字には意味がある

これがお湯に浸かった3分でいい感じに暖まっている

パキッ
フランクを半分かじる
急いで麺をかきこむ
あぁ、美味い
「評判屋の塩焼そば」は麺が美味いが、この瞬間はどの焼そばでも大概美味い

汁物のカップ麺ではこうはいかない。麺がスープに浸かっているため、はじめから味が付いた「ほぼ完成品」を食べなければならない。

「完成品を食べるのがふつーでしょう」
という体制側の意見に僕は一石を投じる

ラーメンに限らない
あらゆる食事は「変化」の中にこそ、楽しさがある
予め完成品が供されたとしても、そこに変化を付けていくことはできる
ただ、ここで取り上げる「カップ焼きそば」は "完全な未完成"の状態から食べ始めることができる


次は麺だけ、かんすいを味わう
ここでは、麺の実力が問われる
まいばすで売っている「エースコックキングダム太麺焼そば」の麺は、太麺ということもあって、この瞬間がたまらない
焼そば界の王者「日清UFO」は、もっちりしてよいのだが、ソースに絡めた後の美味さに比べると、いまひとつだ。

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2020年6月22日 (月)

もしも、僕がカップ麺会社の企画部に勤めていたら

日本には四季がある
古来より日本人は四季の変化と、ある時は戦い、ある時は虐げられ、そしてある時はそれを慈しんできた

そこに外的な要因としての変化があるから、平凡な毎日の中にもささやかな楽しみや幸せを見つけることができる

今日は暑かったね
今度の日曜、晴れるといいね
日食見られた?

メールの枕詞に困った時は、天気の話題から始めれば体裁が整う
そこに遷ろう妙を言下に切って捨てる人はいない


ここにカップ麺がある
美味しい
食べる前からわかっている

だからと言って、いつも食べていると体脂肪率が上がってくる
従来ならば、食べたとしても週末の土日だけだったが、在宅勤務という要素が加わってからは家ランチが増えた。
気がつくとケトルに500mlの線まで水を入れている自分がいる
ご多分に漏れず「コロナ肥り」の傾向が出て来たので「カップ麺は週1回まで」と決めた。


カロリーは汁の分まで麺で摂ろうと、最近はカップ麺=やきそばを指す。
以前はやきそばシーズンである夏場だけだったが、今は年中やきそば一択。
ちなみに「やきそばシーズン」というのはしらべるの造語。
カップやきそばは年中、店頭で売られているが、新製品の市場投入は初夏から夏に集中する。カップやきそばに異常な関心を寄せていなければ気づかないと想う。
かつて、やきそば弁当として持参していた頃、これに気づいた。


お湯はT-falのケトルで湧かす
0.5Lのところに目盛りがついているので、やきそば用の計量が一発でできる。
500mlを沸騰させるのに 2分48秒
この速さに1度慣れると、もう元のガスコンロには戻れない


カップ焼きそばの蓋を開ける
最近は、予め具のキャベツや謎肉が麺の下に敷いてある銘柄が増えた。
カップ麺が世に出始めた頃は、麺をはぐって容器の底に具を入れていた。
そうしないと、お湯を切った後、蓋に大量のキャベツや肉が付着してしまう。

さて、アレクサにタイマーを頼まなきゃ


えっと
えっと

あれ???

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2019年12月 3日 (火)

私には日課があります。

私には日課があります。世界の平和を祈ることです
私には日課があります。5,000歩以上歩くことです
私には日課があります。R-1のラベルを切り取って溜めることです^^;)

ラベルを切る前には当然飲んでいます。
R-1が2009年に発売されて以来続けているので、11年が経過しました。11年×356日飲み続けている(時々飲み忘れる)ので3900本超のR-1が腸内に吸収されたことになります。
きっと、なかなかの腸内環境ができているのではないかと思っているわけです。

飲み終えてラベルを切り取るようになったのは、今年からです。
理由は年に1度ラベルを集めて送るキャンペーンが行われているからです。
去年まではそのまま捨てていたのですが、ネットでキャンペーンが告知される度「しもーたぁ。飲んだ後とっとけばよかったぁ」と博多弁で後悔していたのでした。

キャンペーンの応募コースは「50枚」「14枚」「5枚」
2020年3月〆の「選ぶ、続ける。健康応援キャンペーン」の場合、ロボット掃除機「ルンバ」e5(50枚)やガーミンスマートウォッチvivomove HR Sport(14枚)などが当たります。
年間356本飲むとすれば「50枚」コースが7口も応募できます。もちろん、その分切手代も84×7=588円かかるわけですが。

ミシン目を切りラベルを剥がすと「R-1」「明治プロビオヨーグルト」のロゴ部分を含めて大きめに切ります。
なぜならば、2016年から始まったこのキャンペーン、毎年応募のレギュレーションが変わっていたのです。
ある年は「明治プロビオヨーグルト」部分、ある年は「R-1」部分。だから、どのパターンにも対応できるよう大きめに切っておくわけです。

最初のうちは「50枚」毎にチャック付きビニル袋に入れていましたが、面倒なのでやめて、ダイソーで買った小物入れに放り込むようになりました。
これを来る日も来る日も続けていると、時々、疑念が頭をもたげます。

果たして、僕の価値はこんなものなのだろうか?

きっと、孫正義ならばR-1は飲んでもラベルは切らないと思います。

仮にルンバe5(実勢価格5万円)が当たったとしても、この作業にかけた時間は1回あたり1分として356分。応募の手間も含めればおよそ6時間。
5万円÷6=時給8,300円

そして、そもそも僕はルンバが欲しいと思ったことがない。部屋の掃除はダイソーで買ってくるコロコロで事足りています。

それでも1度始めた日課を止められないのが僕の悪いクセ。
悪くはないか・・
とりあえず、今年一年だけは続けよう。早く応募の時期が来ないかなと思って「Google先生」に尋ねてみたら、既に11月から受付が始まっていました。

早速、今年のレギュレーションを確認。
提出するのはラベルのうち「R-1」部分だけでした。
溜めてあるラベルは大きめに切ってあるので、ここでトリミング作業が発生します。
始めは一枚ずつ丁寧に切っていたのですが、数枚重ねて切っても大丈夫とすぐに気づきました。
20枚ほど切ったところで、今度は「そもそもこの作業要らなくね?」という疑念がわきます。

キャンペーン事務局の方は
「このラベルは大きすぎる。明治プロビオヨーグルト部分まで付いているから失格!」
なんてチェックマしているでしょうか。してないような気がします。

まさか、7口応募して何も当たらないということはないと思いますが、この「日課」にはちょっとしたストレスを感じているので、今回限りにしようと思います。

やっぱり「14枚」コースの美顔ローラーにしようかな・・

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2019年8月27日 (火)

僕がトマトを克服したのは「西鉄味のタウン」だった

味のタウンとは、福岡市中央区天神、西鉄「福岡」駅のそばにあった飲食店街の愛称である。
幼少の頃、当時住んでいた山口の家から佐世保の親戚へ遊びに行く途中、家族でここに立ち寄るのが楽しみだった。


私の記憶が確かならば・・
当時は10店舗ほどが並ぶ飲食店街。
家族で外食をする時は洋食と相場が決まっていたが、一度だけ、ここで「ナイルカレー」に入った記憶がある。
博多は山口と佐世保のほぼ中間点に位置しており、休憩がてら天神の駐車場に停めて、ここを訪れていた。

食事を終えて202号線を走り始めるとすぐに平和台球場の横を通る。
試合がない日は、次節の日程が書かれた看板を見て、どきどきした。
西鉄のナイターをやっている日は、照明が煌々と点り「向こう側の世界」にわくわくした。


NPBの球団がない田舎町に住んでいる僕にとって「プロ野球」というのは、テレビと新聞の中で行われている「向こう側の世界」
その世界にほんの少しでも触れることは、UFOにさらわれて他の惑星に行くくらい、非日常の出来事に感じられた。
味のタウンから平和台球場。僕にとって博多は夢の町だった。

 

その日、僕は両親と3人でその町に来ていた。
春からひとり暮らしを始める博多の町に家探しに来ていたのだ。
父が運転する車に乗って、大学の近くを回り、家探しを終えた頃には夜になった。
「どこかで、飯でも食って行くか」
父が言った。
もう、家族との外食に胸をときめかせる歳ではなかったが、だったら味のタウンがいいと僕は希望した。
味のタウンがある天神は、これから帰る佐世保とは逆方向なのだが、当時の僕はまだ、その位置的関係を把握していなかった。

 

父、母と入った店の名前は覚えていない。ただ、そこが定食を出す店だったことは確かだ。
なぜならば、僕が注文した皿には、付け添えでトマトが乗っていた。

僕は子どもの頃からトマトが食べられなかった。
口に含んだ時の独特の酸っぱさ、噛んだ時にゅるっと出てくる種と緑の汁が気持ち悪くて、どうしても飲み込むことができなかった。
いつもならば「これ、食べて」と言って誰かに押しつけるのだが、その日は違っていた。
もしかしたら、食べられるようになっているんじゃないか?
ふと、そう思ったのだ。
これから始まる、生涯初めてのひとり暮らし、親元を離れて獲得する自由、これまでに住んだどの町よりも都会の博多。
そんな希望に溢れた心持ちが、何か違うこともできる気にさせたのだろう。


試しに口に放り込む。あの気持ち悪い食感を味合わずに済むよう、ほとんど噛まずに、急いで飲み込んでみる。
特別な味はしなかった。いつものように「おえっ」ともならなかった。
あれ?食べれた・・

つづく

 

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2019年7月 3日 (水)

日本の商業捕鯨 新たなる船出 スーパーでくじらフライを買いたい!

2019年7月1日
日本の商業捕鯨が再開された
このニュースを聞く日を待ち焦がれてはいたが、正直なところ、その日が来るとは思っていなかった。

僕にとって鯨を食べた最後の記憶は、今から30年以上前、大学のアパートのそばにあったユニードの鯨フライだ。
ユニードというのは地場のスーパーマーケットチェーンで、その後、中内功のダイエーに吸収された。

1日の食費500円という予算でやりくりするために、僕はいつもユニードで安い野菜や玉子を買っていた。そして、いつも必ず惣菜コーナーに立ち寄り、あぁ今日も鯨フライあるなぁ、食べたいなぁでも今度にしよう・・といった日々を過ごしていた。
たまにアルバイト代が入って懐が温かい時は、迷わず惣菜コーナーに直行して鯨フライをゲットした。
1個50円、記憶が確かならば、1辺7cmの正方形。衣をかじると中から出てくるのは鯨のミンチ肉。
特に下味が付けてあるわけではないが、鯨がもつ独特の塩気がいい塩梅になり、ご飯が進んだ。

それから後の人生でも、鯨を食べなかったわけではない。
三重県の太地町に行けば、レストランで鯨のフライを食べたし、三重県津市や東京都大田区にある鯨専門料理店にも足を運んだ。
ただ、それらは「調査捕鯨時代」下、値の張る鯨、高級な鯨だ。


【商業捕鯨停止から再開までの37年】
1982年7月23日
IWCで商業捕鯨一時停止を決議。事実上、国際的に商業捕鯨が禁止された。日本は異議申し立てを行い、これに従わない方針を示した

1985年
日本は、アメリカ200海里内漁業からの締め出しを通告されたため、仕方なく異議申し立てを取り下げ(結局1988年には締め出しを食うのだが)

1986年
商業捕鯨終了

1987年
調査捕鯨を開始

1992年
IWC総会における捕鯨推進国は5か国

2006年
IWC総会における捕鯨推進国は70か国中36か国
ただし、捕鯨再開にはRMSの策定が前提で、それには加盟国の4分の3の賛成が必要となる。
日本の外交努力により「推進国」を増やしてきたものの、道のりは遙か遠い

2018年12月
IWCに脱退を通告

2019年6月30日
IWC脱退

2019年7月1日
商業捕鯨再開


自国の食文化の復活に向け舵を切った農水相の英断に大きな拍手を送りたい。
そして、鯨が水揚げされて市場に並んだら、消費してそれに応えたい。
できれば、スーパーの惣菜コーナーにくじらフライを並べて欲しい。全国のスーパーの皆さん、よろしくお願いします!

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2019年5月28日 (火)

回らない寿司の定義

「回らない寿司」を食べ始めて30分ほど過ぎた時、自分が「回らない寿司」に来ている気がしていないことに気づく。
考えてみれば、時々食べている「スーパーの寿司」だって「回らない寿司」だ。
俗に高級寿司という意味で俗的に言われている「回らない寿司」とは、板前が目の前で握るのを「カウンター」に陣取り「お好み」で食べる寿司のことなのだ。
個室は他の客を気にしないで済むのはありがたいが、これは「レーン」の代わりに「店員」が運んでくるだけではないか。

食べ始めて一時間ほどすると、中村君はサイドメニューに特化し始めた
「A5和牛カレー」は大盛、普通、小の3サイズだが「普通」を注文。食べ放題に来ているのに・・
「玉子焼き」「チキン南蛮」のお代わりと次々に注文していく

僕はまずはまだ頼んでいない寿司を伝票に書いていく
数量はすべて「1」
はじめは大きな皿で運ばれてきたが、だんだんと皿が小さくなっていく
そういえば、寿司「一貫」は寿司「一個」なのか、それとも「二個」なのだろうか
Google先生によると「諸説ある」ということであり「日本では古来より一貫して一貫は二個のことを指す」と食品管理法で定義されているわけではないようだ(笑)
「どっちでもいい」ということである。
そこで、僕は一貫して「一貫」=「一個」と考えることにした

「ラストオーダーのお時間です」
吉岡聖恵がやってきて、そう告げる
もうそんな時間か
ここで、1人1つ付くデザートを選択
中村君はここで〆に「家系ラーメン」(サイズはワンサイズ)
僕は満腹中枢が麻痺していたが、気力を振り絞り「A5和牛カレー」サイズ小

もう、このあたりでは味どころではなかった
後でまた食べよう思っていた寿司のリピートもムリ
残すとペナルティがあるかもと思い、必死にカレーを平らげたところで完全に動けなくなった

二時間が経過してテーブル精算
シワが一本も入っていない二千円札を二枚と千円札を出す
「珍しいですね!二枚も!」と二千円札に反応する吉岡聖恵が微笑ましかった

結論からいうと日頃から周囲に「小食」で通っている僕が、寿司に限らず「食べ放題」に来るべきではなかったのだ。
とても、いい勉強になった
これからは、これまで通り「美味しいものを少しだけ」食べる暮らしに戻ろうと思う

 

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2019年5月27日 (月)

回らない寿司in秋葉原

回らない寿司を明日に控え、気持ちが沈んでいる
そこで、僕はこんなことを考えた
事実をよくしらべて把握すれば、気分は変わるかも知れない。
そこで「Google先生」に教わったのは次のようなことだった

2時間3,980円(税込4,298円)
+1,000円出すとプレミアムコース食べ放題となり、大トロ、黒毛和牛、鮑などが食べられる
「ワンドリンク制」だが飲み放題あり。
ソフトドリンク 500円、アルコール1,500円
(飲み物の出費は500円で済みそう)

注文は1グループ 1回1枚の注文票に「6種類30貫」注文できる
1貫が1個を指すのか、2個を指すのかは不明
サイドメニューも食べ放題。カキフライ、カレー、ラーメン、ハンバーガーなどがある
デザートを1つ選ぶ
「赤酢のシャリ」で1個の寿司はそれほど大きくはない
そして、食べ放題のお約束「食べ残しペナルティ」は1品につき100円とあった

概容が見えてくると、気分が変わってきた
相方が高い日本酒を遠慮なく呑んで「割り勘負け」するという悲劇はなさそうだし、バカでかいシャリで腹一杯ということもない
ヒラメ、真鯛といった「回る寿司」ではあまり頼まない白身魚や、いくら・うにも食べ放題となれば、それほど悪くない
沈んだ気持ちは消え「お腹を空かせていくぞ」と前向きな気持ちが芽生えた

金曜日の夜、秋葉原の街はそこそこに混雑していた。
東京に来た頃はまだ空き地だった駅前にも、たくさんのビルや商業施設が建ち並んでいる
この街は長く「電気街」として有名だが、20年前ほどからは「ホビー」の街としても栄え、2000年代半ばに「メイドカフェ」が流行ってからは「オタク」のメッカとしても親しまれている。

めざす店は秋葉原のビルの一角
予約の名前を告げて、通されたのは個室
「回らない寿司」のステータスである「カウンター」ではない

吉岡聖恵(いきものがかり)に似た店員さんが注文を受けに来る
飲み放題(アルコール、ソフトドリンクいずれか)を付ける場合、グループ全員が同じものを付けなければならないとのこと
ここは、酒が呑みたかった中村君に譲ってもらい、ソフトドリンク飲み放題を付けて、アルコール単品注文にしてもらった

特に「お通し」のようなものは出ない
早速、メニューを見て注文票に記入
注文票は6行書き込めるようになっている。数量は「1」より
ということは最大6×5=30だが、ひと種類を5貫食べるようなことはしない。
鯖、いくら、うに、中トロ・・
中村君は早くも「玉子焼き」「チキン南蛮」「かにクリームコロッケ」とサイドメニューも注文
「チキン南蛮」は美味しかったらしくリピート注文していた。

漁師でも魚屋でも、ましてや魚料理専門家でもない僕にとって、大半の寿司は「ほかとひと味違う」かどうかはわからなかったが「中トロ」「あなご」「チーズサーモン」は「美味い!あとでまた頼もう」と思えた

つづく

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