2022年12月12日 (月)

W杯2010「山本昌邦のウルグアイ講座」につづく「モロッコ礼賛」

【R8】12月11日(日)0時
モロッコ - ポルトガル
NHKG ABEMAが放送

<両チーム ベスト16での戦い>
ポルトガル 6-1 スイス
モロッコ 0-0 スペイン(PK3-0)
グループF1位のモロッコ、H1位のポルトガルが勝利した
モロッコはここまでの4試合でわずか1失点(ポルトガルは4失点)
モロッコのF組での得点は4(H組のポルトガルは6得点)

なんでもダービーにしたがる人にかかれば「ジブラルタル海峡ダービー」と呼ばれるであろう隣国スペインとのR16を勝ち上がったモロッコは、つづいてスペインの西隣に位置し、ともに大西洋に接する近隣国ポルトガルとの対戦。これは「大西洋ダービー」か。
アフリカ北部に位置するモロッコには「アフリカ勢初のベスト4進出」がかかっている。

一方のポルトガルには、デコ・ロナルド・フィーゴで臨んだ2006年ドイツ大会以来のベスト4進出がかかる。

W杯2006ポルトガル代表


<スタメン>
GK
コスタ
DF
ルベン・ディアス
ディオゴ・ダロト
ペペ
ラファエル・ゲレイロ
MF
ルベン・ネヴェス
ブルーノ・フェルナンデス
ベルナルド・シウヴァ
オタヴィオ・モンテネイロ
FW
ジョアン・フェリックス
ゴンサロ・ラモス

R16スイス戦から先発変更は1人(MFカルバーリョ→MFネヴェス)
「戦術ロナルド以外」を採用。延長>PK戦を想定した場合、これが妥当な手段だ。


<前半>
僕にとってはこの試合、最大のハイライトが訪れる
21分 観客席で試合を観ているデコが映る 所在なさげなうつろな表情がデコらしい。実況アナウンサーはこの日、カメラが抜いたVIPを誰も紹介しなかった。知らなかったのか、それが矜持なのか・・

2005年にバルセロナでばったりデコと会ったのがきっかけで始めたポルトガル・ファン。
2010年にデコが代表引退してからも続けてきた。今回ロナルドが代表を去ったとしても続けるだろう。
ポルトガル人に共感するのだ。特に2008年以降の選手たちは、皆親しみを覚える。
ポルトガル国歌も好きだ。

ボールをもたせるモロッコ
背後にロングボールを入れてポストプレーを狙うポルトガル
日頃「J2」の忙しい試合に見慣れているので、とても落ち着いて観られる

41分【モロッコ】アタッキングサードで競り合いに勝ったモロッコ 左サイドからクロス ネシリが高い打点からヘッドで先制
GKコスタは飛び出す判断、方向ともにずれていた。その後ビッグセーブを見せるだけに、この一瞬がもったいなかった。
DF陣も様子をみているようで、どフリーでクロスをあげさせた。ワンプレーに全霊を注ぐという点でモロッコに負けていた。
それが、この試合の全てだろう

44分【ポルトガル】ブルーノ・フェルナンデスのクロスのようなシュートがクロスバーを叩く
場内はモロッコ応援一色のため歓声が沸かず、惜しいシーンだったという実感が沸かなかった

「地元(カタール)の人もモロッコを応援すると言っていました」
「スタジアムの雰囲気がモロッコを後押ししている」
「歴史が変わる時はこんなとき」

NHKの解説は山本昌邦。試合を通して繰り返しモロッコ礼賛を述べた。
W杯2010では「ウルグアイびいき」を続けたことが記憶に新しい。
あの時は、勝ち進む間、ウルグアイ戦を担当し偏った解説をつづけた。今回またモロッコの試合でそれをやるのだろうか。

12年前、どのように偏っていたかは・・
山本昌邦のウルグアイ講座(2010年記事)

後半へつづく

W杯2022ポルトガル ベスト8の軌跡

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2022年9月13日 (火)

W杯2022 ポルトガル対日本 初対戦の可能性をしらべる

W杯20222カタールは、W杯としては初めてABEMAが全64試合を無料放送する。
「ABEMAでカタールW杯を見る」については、近いうちにしらべてまとめたいと想う。


■ポルトガルのW杯日程

グループリーグ[H組] *日本時間
【1】11月25日(金)1時
ポルトガル - ガーナ(home)

【2】11月29日(火)4時
ポルトガル - ウルグアイ(home)

【3】12月3日(土)0時
韓国 - ポルトガル(away)


■ポルトガルと韓国

ポルトガルと韓国は2002年の日韓共催W杯で対戦している。
ロナルドが「ユーロ2004」で代表デビューする2年前のことだ。
ポルトガルは開催国・韓国と同じD組に入り、3節に決勝トーナメント進出を賭けて対戦

<グループD 3節>
韓国 1-0 ポルトガル
序盤からラフプレーが多く、激しい当たりの応酬
その中で、ポルトガルは2人が退場処分となる
ポルトガルは1勝2敗でグループリーグ敗退
(1位大韓民国、2位米国、3位ポルトガル)


奇しくもカタールW杯では、20年前と同じくグループリーグ3節で対戦。
今回はフェアプレー精神に則った、上質なフットボールを見せてもらいたい。


■ポルトガルと日本

ポルトガルと日本は親善試合を含めて未対戦。
ロナルド最後のW杯となるならば、この大会で初対戦を見たい。


日本の日程
グループリーグ[E組] *日本時間
【1】11月23日(祝)22時
ドイツ - 日本(away)

【2】11月27日(日)19時
日本 - コスタリカ(home)

【3】12月1日(木)4時
日本 - スペイン(home)


日本が入ったE組はスペイン、ドイツ、そしてプレーオフでNZを破ったコスタリカ
いわゆる「死の組」と評されている。
前にも書いたが「難敵ドイツを何処かが負かしてくれる」ことが、ポルトガル優勝のワンピース。
そのドイツが「死の組」に入ったことは、ポルトガルにとっては幸運といえる。


■ポルトガル、日本がそれぞれ勝ち上がった場合の対戦

○ラウンド16
ポルトガルが居るH組の相手はG組
1位→マッチ【56】
2位→マッチ【54】

日本が居るE組の相手はF組
1位→マッチ【53】
2位→マッチ【55】

従って、ラウンド16では当たらない。


○準々決勝
【57】:【49】勝者 - 【50】勝者
【58】:【53】勝者 - 【54】勝者
【59】:【51】勝者 - 【52】勝者
【60】:【55】勝者 - 【56】勝者

ポルトガルがH組1位、日本がE組2位から勝ち上がった場合
12月10日18:00の【60】
ポルトガルがH組2位、日本がE組1位から勝ち上がった場合に
12月9日22:00の【58】
で、それぞれ当たる可能性がある


○準決勝
【61】:【57】勝者 - 【58】勝者
【62】:【59】勝者 - 【60】勝者

準々決勝で当たらなかった場合、準決勝では当たらない。


○決勝
準々決勝で当たらなかった場合、次に当たる可能性があるのは決勝
(または3位決定戦)

ポルトガルがH組1位、日本がE組1位から勝ち上がった場合
ポルトガルがH組2位、日本がE組2位から勝ち上がった場合

つまり、グループリーグにおいて、勝ち抜け順位が同じだった場合、唯一、対戦の可能性があるのは決勝(または3位決定戦)

ポルトガルと日本の初対戦が決勝となれば、夢のようだ。
互いにフェアプレーを身上とするだけに、歴史に残る名勝負が見られるだろう。


カタールW杯まで、あと2ヵ月
平穏な世界情勢と、両チームに故障者が出ないことを祈りたい。

(2ヵ月後につづく)

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2022年9月12日 (月)

W杯6大会連続出場 ポルトガルの歴史(4)ユーロ初優勝

この大会を放送していたWOWOWのユーロ2016テーマ曲が「Waiting for the Moment」
英語詞のハードロックは、てっきり外国バンドの曲だと想っていた。
「MAN WITH A MISSION」の皆さん、夏場は暑いだろうなと今も想う。


2016年7月10日(日本時間11日)
ユーロ2016決勝 フランス戦

組み合わせ位置に従いポルトガルがHOME、開催国のフランスがAWAY扱い。
フランスが開催国のメリットを享受したのは、グループリーグで楽なA組に入っただけ。
ここ2試合は開催国なのにAWAY扱い。
しかもポルトガルよりも1日短い、中2日で決勝を迎えている。

ポルトガル「赤」フランス「青」と、互いに1stユニフォームを着ているため、悪趣味なカラー修正をした写真のような映像になった。

7分、パイエの右脚がロナルドの左脚太ももに食い込む。一発レッドか?というラフプレーだったが警告無し。
ロナルドは左脚を引きずりながらプレーを続けたが、9分後に座り込んでしまった

「あ~ダメなんですか?これは信じられない」
地球がザラブ星人に征服されることが確定したかのような、アナウンサーの悲痛な叫び
テーピングして一度は戻ったロナルドだが、22分にはベンチに交代のサインを送り、キャプテンマークを地面に叩きつけた

ロナルドが居ない決勝は、ウナギの乗っていない鰻重のようだが、ポルトガルの試合は続く
グリーズマンに「警備員の行進みたいだ」と(試合後に)言われたブロックで守り抜き、スコアレスのまま延長へ

ここで、治療を終えたロナルドが登場。後半にレナト・サンチェスと交代で入っていたFWエデルの元へ行き「試合を決めるゴールを決めるんだ!」とエネルギーを注入する(エデルの談話)

延長4分 フランスのスローイン。だが、誰もボールを受けにいかない。当てずっぽうのロングスローをモウチーニョが拾い、エデルへ縦パス。
エネルギー注入を受けていたエデルは、そのままゴールと平行にドリブル、DFローラン・コシエルニーをかわして、20mのミドルがネットを揺らす

ここからは、世界中を笑わせたポルトガルの「2人監督」
「後ろに残れ!」
ロナルドがテクニカルエリアに出て指示を送る。サントス監督が困った顔をしている。

「おいおい、どうなっているんだ?ロナルドが監督をやっているぞ」
フランスのデシャン監督がUEFAスタッフにアピールしたが、特別な措置はなく試合が終わった


2017年
ロシア コンフェデ杯 3位
ユーロ2016優勝チームとして招待されて、コンフェデ杯初出場
準決勝チリ戦でPK戦の末に敗れ、3位決定戦でメキシコを破った


●2018年 W杯
ロシアW杯 ベスト16
クリスチアーノ・ロナルドは33歳で迎える4度めのW杯
欧州予選グループB 9勝1敗 1位通過
FIFAランキング4位で大会を迎えた
(1位ドイツ 2位ブラジル 3位ベルギー)

グループリーグB組を 1勝2分で通過
ラウンド16 ウルグアイ戦 0-2で敗戦


◆2021年 ユーロ
13都市併催 コロナ禍で1年延期されたユーロ2020

いつものことだが、ハンガリー、ポルトガル、フランス、ドイツと強豪がそろう「死の組」に入る

F組2節で難敵ドイツと対戦
ロナルドのゴールで先制したが、左ポケットが空くのを再三攻められて2-4で敗戦
2大大会での連敗は続く

F組は1勝1分1敗で突破

ラウンド16 ベルギー戦
41分、フリーでトルガン・アザールにみごとなブレ球のシュートを打たれてしまう
後半は4-4-2のブロックで守るベルギーに対して、ポルトガルが攻勢を強めたが、GKクルトワが当たっていて、3点は止められてしまった。
この試合、ベルギー唯一の枠内シュートが決勝点となり、ユーロ連覇の道は絶たれた


●2022年 W杯
カタールW杯
クリスチアーノ・ロナルドは37歳で迎える5度めのW杯

欧州予選グループA 2位となりプレーオフへ回る

2022年3月24日
プレーオフパスC 準決勝 ポルトガル 3-1 トルコ

3月29日
プレーオフパスC 決勝 ポルトガル 2-0 北マケドニア
ブルーノ・フェルナンデスの2ゴール

今大会から欧州予選に導入されたプレーオフパスルール


次回最終話
W杯20222 ポルトガル対日本 初対戦の可能性をしらべる

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2022年9月11日 (日)

W杯6大会連続出場 ポルトガルの歴史(3)

◆2012年 ユーロ
ユーロ2012 ベスト4

ボスニア・ヘルツェゴビナとプレーオフを戦い(2戦合計6-2) ようやく出場権を手に入れたポルトガルは「優勝候補」と呼ばれることなく大会入り

ペペ、ナニ、ロナルドが好調を維持しベスト4まで進んだが、スペインに敗れた(0 <PK4-2> 0)


●2014年 W杯
ブラジルW杯 グループリーグ敗退

パウロ・ベント監督のもと、W杯予選を勝ち抜き、FIFAランキング4位で大会を迎えた
(1位スペイン 2位ドイツ 3位ブラジル)

クリスチアーノ・ロナルドは29歳で迎える3度めのW杯
直近のCL決勝にはレアル・マドリーからクリスチアーノ・ロナルド、ファビオ・コエントランが出場した(ペペは出場しなかった)

G組1節で難敵ドイツに0-4で敗戦
グループリーグは1勝1分1敗で、決勝トーナメントに進めなかった


2014年9月
ユーロ2016予選の開幕戦。ホームでアルバニアに敗れると、パウロ・ベント監督を解任
後を受けた受けたフェルナンド・サントス監督は、予選6連勝で1位確定。全勝でユーロ2016予選を突破した


●2016年 ユーロ
ユーロ2016 ポルトガルに大いなる僥倖が舞い降りる

FIFAランキング8位で大会を迎えたポルトガル
ただ1つ5チームから成るF組は「死の組」と呼ばれたが、ポルトガルがランキング筆頭である


<グループリーグ>

2節オーストリア戦の出場で、ロナルドはポルトガル代表の最多出場新記録を更新(128 前記録保持者はフィーゴ)したが、78分にPKを外してしまう

3節は1位のハンガリーと3位ポルトガルの対戦
他組の状況によりハンガリーは試合前に予選通過が確定している

空中で止まった静止画のようなロナルドのヘッドで3-3に追いついた後、サントス監督がエリゼウに紙切れを渡し、それをピッチ内にいるロナルドの元へ運ぶという珍しい光景があった。
フットボールの試合でメモを渡す「伝令」を初めて見た。

ロナルドは受け取って一瞥
恐らく、同時開催の試合経過を伝え「ムリして点を取りに行くな。引き分けで通過できる」といったメモが書かれていたのだろう

メモが渡った時点で、ポルトガルは2位通過の位置にいたが、他会場の状況が変わり、結局、ポルトガルは薄氷の3位通過
(3戦3引き分け)
しかし、何が吉と出るかはわからない

予選で圧倒的な強さを見せただけに「本番の弱さ」に落胆した。
誰もこの先の僥倖をイメージできなかったと想う。


<決勝トーナメント>

ラウンド16 クロアチア戦
90分スコアレスで迎えた117分、クアレスマ→ロナルド→サンチェス→ナニ→ロナルド→クアレスマとつないだゴールで辛勝

試合後、代表100試合出場となったナニが抱っこしている子どもの「なに?」と言わんばかりの物怖じしない笑顔と、ルカ・モドリッチに交換してもらったユニフォームを嬉しそうに抱えるレナト・サンチェスの姿が忘れられない

この時点で、レナト・サンチェスはロナルドの後継者候補。
ロナルドが代表を去った後、ポルトガル浮沈の鍵を握る選手だと想っていたが、その後は雌伏の時となる


ラウンド8 ポーランド戦
ポーランドに先制されたが、32分にレナト・サンチェスのユーロ初ゴールでポルトガルが追いつく。試合は延長へ。
延長後半3分、観客がロナルドに抱きつこうと乱入したが、あっさりとスタッフに取り押さえられる
120分で決着せず、PK戦はポルトガルが5連続成功で勝ち上がった


準決勝 ウェールズ戦
50分、ゲレイロが上げたクロスを「上空で待機していた」ロナルドがヘッドでゴール
ロナルドはミシェル・プラティニが持つユーロ歴代最多得点記録(9)に並ぶ
(プラティニは1大会出場で9ゴールを挙げた)
その4分後「集中力が切れていた(クリス・コールマン監督)」ウェールズの隙をついて追加点をとり逃げ切った


予選F組の通過が3位となったことで、ノックアウト(トーナメント)では「楽な山」に回った。
その結果、互いに削り合う試合もなく、主力の故障者も、出場停止も出さず、決勝に進める。

一方の「厳しい山」では、準決勝でドイツがフランスに敗れた。
「難敵ドイツを何処かが負かしてくれる」というポルトガル優勝の条件がクリアされて、決勝の相手はフランス。
フランスには、2006年W杯準決勝「アンリの尻もちPK」で敗れた借りがある。


ユーロ決勝の試合が行われる時間帯、日本は月曜日の明け方
試合を生で見て、勝利の余韻に浸るため、月曜日は有給休暇をとった。

CL2006-06決勝 FCバルセロナ - アーセナル戦の時は、有休が功を奏して一日中、勝利の余韻に思う存分浸ることができた。あの日の再現は成るだろうか。

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2022年9月10日 (土)

W杯6大会連続出場 ポルトガルの歴史(2)

2007年
ペペ(レアル・マドリー)がポルトガル市民権を得て代表入り
2003年のデコ以来、2005年のデルレイ、ペペ、2009年のリエジソンといったブラジル人選手がポルトガル代表入りしている


◆2008年 ユーロ
ユーロ2008 ベスト16

準決勝での対戦と想われていたドイツがB組2位通過となったため、1試合早い準々決勝(ベスト8)で対戦。またしてもドイツの壁を破れず

残念だったのは、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督がこの大会後、ポルトガル→チェルシー監督に転身することが、準々決勝の試合前に報じられたことだ。
これでチームには、今ふうにいえば「モヤモヤ」したムードが出てしまった

スコラーリの後任としてカルロス・ケイロス監督が就任したが、この人事がチームの迷走を招くことになる。


●2010年 W杯
南アフリカW杯 ベスト16
(ラウンド16でスペインに敗戦)

32歳10か月で2度目のW杯を迎えたデコにとって、W杯優勝を経験する最後のチャンスと期した大会だったが、結末は悲しいものだった。

G組1節コートジボワール戦
ケイロス監督は試合途中、デコに体験のない右ウィングを指示
後半16分にはチアゴと交代でベンチに下げられた
デコのプレーに精彩がなく致し方なしという交代だったが、試合後、デコが立ち位置について言及。

つづく2試合、北朝鮮戦、ブラジル戦は負傷欠場を示す「i」マーク扱い。
デコ・ファンが夢見ていた、ブラジルとの祖国対決が実現したというのに、そこにデコの姿はなかった
ラウンド16のスペイン戦ではベンチ入りしたが、出場なし
ハーフタイムに映し出された、ビブスをつけて体を動かすデコの寂しげな姿が忘れられない。


スペインとの試合後、デコは代表引退を発表した。

(Brasil Midia Digitalより引用)
「今日は私の最後のゲームでした。私は幸せです。私は多くの友人を作りました」
「最初のゲーム(コートジボワール戦)はプレーしました。そして、私はこの障害を抱えていました。プレーすることは難しかった。これはトレーナーの決定です」
(引用おわり)

「私は幸せです。私は多くの友人を作りました」
という抑制したコメントに、彼の苦悩が窺えた。
それが、どのような苦悩だったのかは、本人に聞いてみなければわからない。


日本のサッカー月刊誌に「辛口デコのランサメント」という連載記事を持っていたデコは、辛辣な物言いをする選手だと想われていた。

だが、それは意味も無く毒舌なのではなく、誰よりも本質をとらえ、チームやサッカー界のために物言う役を買って出ていたからだ。

結果的にその言葉が災いし、W杯2010では活躍の場を失ったようにみえた。
サッカー選手の全盛期は長くない。その大切な機会を棒に振ったことが、ファンとして辛かった。
デコが出した「大人のコメント」に、彼の懐の深さをみた。

デコは大会後、チェルシーから母国ブラジルのフルミネンセに移籍。
途中からだが、その年のカンペオナート・ブラジレイロ優勝に一役買った。

2013年8月、誕生日の前日に35歳で引退を発表した。


司令塔のデコが去ったが、アタッカーのロナルドが居るうちは、ポルトガルの応援を続けようと想っていた。


2010年8月
W杯の翌月、ケイロス監督はポルトガル・サッカー協会から 1か月ベンチ入り禁止処分を受け※ 9月には解任された。
後任はパウロ・ベント

※5月のキャンプ中、反ドーピング機関が抜き打ち検査にはいった際、医師団を侮辱したことによる

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2022年9月 9日 (金)

W杯6大会連続出場 ポルトガルの歴史(1)

デコの代表入りと機を同じくして代表入りしたクリスチアーノ・ロナルドが、今回のW杯を最後に代表引退を表明するかも知れない。

ブラジル人のデコがポルトガル代表入りしたのが2004年。
デコを誘った当時のポルトガル代表監督はルイス・フェリペ・スコラーリ。
ブラジル代表監督としては2002W杯(優勝)、2014W杯(4位)を指揮。
現在はカンペオナート・ブラジレイロ・セリエA(ブラジル国内リーグ1部)アトレチコ・パラナエンセの監督を務めており、直前に解任された前任者がファビオ・カリーレ、現V・ファーレン長崎監督である。


デコの加入から、ポルトガル代表を追いかけて、はや18年。
そのデコは既に2010年、悲運のW杯を最後に代表を引退している。
(その後、2014年に現役引退)
デコ・ファンクラブ仲間の間では「引退後は指導者としてJリーグに来て欲しいね」と話していたが、本人は指導者に興味がないらしい。


ユーロでは2016年に優勝したポルトガルだが、W杯は初出場(1966年)時の3位が最高位。
優勝に絡むには、稀代の名選手ロナルドが居る今大会が大きな節目となる。
ロナルドがここに居るうちに、ポルトガルの初優勝を祈る。
これから数回に分けて、11月に開催されるW杯2022カタール大会に出場するポルトガル代表の主な歴史をご紹介していきたい。


ポルトガル代表のエンブレムはポルトガル国章に由来している。
十字架はカトリック教徒。中央にあるさいころ5の目のマークは盾。
初代国王がイスラムとの戦いで5つの盾を割られながらも勝利した故事に因む

 
2006 2nd ユニフォーム

■ポルトガル代表の歴史(1966年以降)

●1966年 W杯
W杯予選初参加から32年を要してW杯初出場 3位
グループリーグでは、ブラジルを破った


●1986年 W杯
20年を要してW杯2度めの出場 グループリーグで敗退


◆2000年 ユーロ
ユーロ2000 3位 23歳のヌーノ・ゴメスが中心選手だった


●2002年 W杯
16年を要してW杯3度めの出場 グループリーグで敗退
韓国開催のグループDで敗れ(後述)日本でポルトガル代表を観ることはできなかった


2003年
1月、2002年W杯ブラジル優勝監督ルイス・フェリペ・スコラーリ(ブラジル人)が監督就任
3月、スコラーリの誘いで、当時FCポルトに在籍していたデコ(ブラジル人)が初代表入り
デコの代表デビューとなったブラジルとの親善試合では、デコのFK直接ゴールが決勝点となり2-1で勝利

ブラジル人のデコがポルトガル国籍を取得してポルトガル代表入りすることに対して、フィーゴを初めとする数人の選手がメディアを通して批判していた
デコは祖国相手に決勝点を決め、ポルトガルにとって 1966年W杯以来37年ぶりの対ブラジル戦 勝利をもたらすという結果を出し、批判を一気に封印した


◆2004年 ユーロ
ロナルドとデコが揃って2大大会(W杯・ユーロ)にデビューしたのが2004年

「ユーロ2004」をポルトガルで自国開催
クリスチアーノ・ロナルド(19歳)、デコがユーロ初出場
4-2-3-1 のトップ下がデコ。右ウィングにロナルド
決勝でギリシアに 0-1 で敗れ準優勝


2004-05
フィーゴ、ルイ・コスタ、フェルナンドポートが代表引退
MF20デコ(FCバルセロナ)、18マニシェ(FCポルト)、FW17クリスチアーノ・ロナルド(マンチェスター・ユナイテッド)、DF16リカルド・カルバーリョ(チェルシー)らが中心となる
W杯予選で苦戦して フィーゴ(レアル・マドリー)が代表復帰


●2006年 W杯
ドイツW杯 4位
ロナルドとデコがW杯初出場

3位決定戦で、ポルトガルが苦手とするドイツに敗れた
その試合は上川徹主審、広嶋禎数副審が担当
W杯3位決定戦を日本の審判が担当するのは初めてだった。
試合後、上川主審への感想を聞かれたスコラーリ監督は、こう述べた
「とてもよかった。多くの人が日本の審判がこれほどのレベルだとは想っていなかったはずだ」


この大会では現地入りしたデコ・ファンクラブ仲間のNACさんが、現地からレポートを送ってくれた。
その内容を以下に掲載している。

デコファンクラブメンバーによるドイツレポート

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2021年7月 3日 (土)

ロナルド5度めのユーロが終わった

ユーロ2020
ラウンド16
ベルギー-ポルトガル

<前半>
5分
【POR】レナト・サンチェスの巧い体の入れ替えでカウンターから、ジョタがシュートするが右へ引っかけてしまう
23分
ベルギーがペナルティエリア前でハンドの反則
【POR】FKはロナルド
あのルーチンでのっしのっしと後ずさり 枠内に飛ぶ クルトワがナイスセーブ
クーリングタイム無しで試合はつづく
26分
【POR】ペナルティエリア前で攻め続ける ベルギーはゾーンで守っている
40分
【POR】初CK ベルギーのゾーンに対してショートコーナー シュートはブロックされる
41分
【BEL】フリーでトルガン・アザールにみごとなブレ球のシュートを打たれてしまう
ベルギー先制

<後半>
2分
【BEL】デ・ブライネが故障で交替
5分
【POR】突破を後ろから手で止めたダロにイエロー
12分
【POR】ロナルドのラストパスからジョタのシュートは枠の上
15分
【POR】ジョアン・フェリックスのヘッドは枠に飛ぶがGKクルトワがダイビングキャッチ
4-4-2のブロックで手堅く守るベルギー
攻撃機会をつくるが自由にはやらせてもらえない

24分
【POR】ジョタに替えてアンドレ・シルヴァ
27分
ヴェルマーレンにイエロー 好位置でFK
【POR】ロナルドが仁王立ち 枠の左端に飛んだがDFに当たってしまう
31分
ルカクが倒れている間もプレーを続けたポルトガルをベルギーがラフプレーで奪い、報復で倒したペペだけにイエロー

33分
ポルトガルは5枚の交代枠を使い切る
パリーニャに替えてダニーロ
レナト・サンチェスに替えてオリベーラ
ゲームが荒れてくる

36分
アルデルフェヴェイレルトにイエロー
36分
【POR】CK 4ドンピシャのヘッドはGKクルトワの正面
37分
【POR】ロナルドが競ったこぼれ球に詰めたラファエル・ゲレイロのシュートはなんと右ポスト
立て続けに決定機を作るが、ツキに見放されている

+4
【POR】カウンターのピンチを凌いだ直後のカウンター、フェリックスのシュートは枠の左に外す
キャプテンマークを叩きつけて悔しがるロナルド

後半はほとんどの時間を相手コートで進めたのはポルトガル。
先制した後はベルギーがブロックを組んだこともあり、決定機の大半がポルトガル。しかしクルトワに3点は止められてしまった。
先制して4-4-2のブロックで守るチームが、いかに強力かを思い知らされた。

シュート数 ベルギー6(1)-24(5)ポルトガル
ベルギーの枠内シュート1が、決勝点となった。

ポルトガルはベスト16で敗退。
ユーロ出場で初めてベスト8に進めなかった。
試合後、とても悲しそうにインタビューを受けるサントス監督。ポルトガル語はわからないが、彼が心底落ち込んでいるのが伝わり、切なかった。

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2021年7月 2日 (金)

ベルギーがFIFAランキング1位なんて、聞いてない

フェルナンド・サントスは2014年9月、ユーロ2016の予選中、パウロ・ベント監督解任の後を受けてポルトガル代表監督就任。全勝で予選を突破した。
そしてユーロ2016でポルトガルを初優勝に導く。
2018W杯はベスト16でウルグアイに敗れた。
2016年にはユーロ2020の終了まで契約を延長している。

その手腕は確かであり、この先もずっと見ていたいが、ジョゼ・モウリーニョ(ポルトガル人)も以前「いつか代表を率いたい」と語っており、そろそろ見たい気もする。


2021年6月24日
F組3節 ポルトガル 2-2 フランス

<前半>
26分
【POR】FK飛び込んだダニーロにGKロリスがまさにパンチング
PKをロナルドが中央やや左に決めて先制
44分
【FRA】エンベパの進路をネルセンセメードが手で止めてPK
ベンゼマが決めて同点

<後半>1分
【FRA】ロングボールで裏をとったベンゼマがゴール
オフサイドフラッグ上がったがVARでゴールが認められる
13分
【POR】エリアに入ってロナウドがクロス、これがDFのハンドでPK
ロナルド再び左へ決めて同点

最後は互いに引分けで勝ち抜けとなるため、慎重に自陣でボールを回しあう

同時開催のドイツーハンガリーは常にハンガリーが先手をとる
ドイツは敗れれば敗退だったが、追いついて引分け(グループ2位通過)
ポルトガルは「死の組」を薄氷の3位で勝ち抜けた。
ポルトガルにとって、薄氷を踏むのはいつものこと。
むしろ、この先に期待が高まるくらいだ


ユーロ2020
ラウンド16
ベルギー(B組1位)-ポルトガル(F組3位)
セビージャ開催

ベルギーがFIFAランキング1位なんて聞いていない^^;)
ただポルトガルは前回優勝チーム。臆することはなにもない。
これが「優勝」という実績が紡ぐ伝統というものなのだろう。

ベルギーは4-4-2
ポルトガルは4-3-2-1
両チームは国際試合では初対戦
ベルギーがホーム扱いで1stユニフォームの赤
ポルトガルがアウェイ扱いで2ndの白

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2021年7月 1日 (木)

ポルトガル国歌「ア・ポルトゲーザ」が流れる瞬間は特別なもの

ユーロ2020はWOWOWが全試合独占放送。今回は地上波放送はない。

WOWOWは数年前からストリーミング配信を始めており、パソコンで見ることができる。
ストリーミングのいいところは「生」で観られるのはもちろんだが「後から」観るのが容易というところだ。
大半の試合が日本時間の 1:00、4:00に行われるので、これは助かる。

無料トライアルで初月は無料。6月に見始めた場合、課金されるのは7月からとなる。(6月中に退会すると無料)


【ポルトガルのユーロ記録】

2004年(自国開催)
準優勝
決勝でギリシアに敗れた
ロナルド、デコが初出場

2008年
ベスト8
準々決勝でドイツに敗れた
デコ最後のユーロ

2012年
ベスト4
準決勝でスペインにPK戦の末敗れた

2016年
優勝
フェルナンド・サントス監督

2021年
ロナルド5大会連続出場

 

ユーロ2020
2021年6月16日
F組1節
ハンガリー 0-3 ポルトガル○

「死の組」初戦は4チームの中では「強豪」と呼ばれていないハンガリー
スコアだけをみると楽勝に見えるが、先制点は後半37分
PKをロナルドが決めて先制


2021年6月20日
F組2節
●ポルトガル 2-4 ドイツ

ポルトガルが「借りて来たネコ」になってしまうのがドイツ
W杯、ユーロでは一方的な負け試合が多い
左サイドへのサイドチェンジから失点を重ねて大敗


2021年6月24日
F組3節 ポルトガル-フランス

引分けで勝ち点4とすればグループ3位で勝ち抜け。
負けると敗退の可能性がある試合
フランスはFIFAランキング2位、ポルトガルは5位

会場のプシュカーシュアレナ(ブダペスト)は、今大会唯一100%収容が認められている。
大観衆と大歓声が懐かしい

ポルトガルの1stユニフォームは襟付き
ポルトガルのユニフォームに襟が付いたのは初めて見た。

ポルトガル国歌「ア・ポルトゲーザ」が流れる瞬間は特別なもの。
かつてデコが「唄っていない」と責められて、微妙な表情でこの場面を過ごしていたのが懐かしい。

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2021年6月26日 (土)

「死の組」という言葉を教えてくれたのもデコ仲間だった

ユーロ2020 時系列の記録

2013年1月
13都市開催を決定

2018年9月
予選開幕

2019年12月
組合せ抽選会

2020年6月12日
開幕予定だったが新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期

2021年6月11日
グループリーグ開幕

2021年6月26日
ラウンド16開始

2021年7月11日(日)
決勝 ロンドンウェンブリー・スタジアム


「死の組」という言葉を教えてくれたのもデコ仲間だった。
W杯とユーロというサッカーの「2大メジャー大会」において、抽選の結果できてしまう強豪がひしめくグループのことをこう呼ぶ。
「しのくみ」なんて、縁起が悪くてあまり書きたくない。

だからと言って「成長が見込める組」「勝ち上がった時、喜びが2倍になる組」では長すぎるし、大抵の人は言霊にあまりこだわらないので「死の組」はこの2大メジャーでは伝統的に年長者から若者へと伝承されている。

■ユーロ2020グループリーグ組合せ

【A】トルコ、イタリア、ウェールズ、スイス
【B】デンマーク、フィンランド、ベルギー、ロシア
【C】オランダ、ウクライナ、オーストリア、北マケドニア
【D】イングランド、クロアチア、スコットランド、チェコ
【E】スペイン、スウェーデン、ポーランド、スロバキア
【F】ハンガリー、ポルトガル、フランス、ドイツ

いったいどういうポッド作りをしたら、これほど偏るのかというくらい、F組に競合が集まっている。しかも、ポルトガルの天敵ドイツも同組だ。


■過去2大会のポルトガルの組合せ

ユーロ2016
【F】ポルトガル、アイスランド(初出場)オーストリア、ハンガリー

ユーロ2012
【B】ドイツ、オランダ、ポルトガル、デンマーク

2012年大会ではポルトガルの居る【B】が「死の組」と言われた。
参加チームが「16」→「24」に増えた2016年大会では、初出場が5チームあったこともあり「死の組」はできなかった。

そして、2020年大会では再び【F】が強烈な「死の組」ができている。
2016年と同じ枠組みでやっているのに、これだけ偏るというのはおかしい。
UEFAが大会を盛り上げようとして仕組んだのでは?と勘ぐってしまう。


ちなみに「死の組」だった2012年大会は、グループを勝ち抜けて最終的にベスト4。
準決勝で惜しくもスペインに敗れた。
スペイン 0(PK4-2)0 ポルトガル

「ふつうの組」に入った前回の2016年大会は、ユーロ初優勝を飾っている

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